8ー2 つはものどもが 夢のあと
翌日…
とある街で修理屋の仕事をするアユムが出会ったのは、一人の木工職人の男性。
「ああ…俺は南の…山形の方から流れてきたんだ…」
SWDの後、この村で木片から食器等を作って暮らしているらしい。
「まぁ…本業に戻りたいとは思うけど…こんな世の中じゃあな…日用品の方が望まれてるのさ…」
アユムに仕事を頼みたいのは山々だが、先立つ物がないそうだ。
アユムとカオリは顔を見合わせ、小さく頷く。
「あのー、おじさん…お代は相場の半額で結構です。」
「本当か!?」
「その代わり…」
アユムはとある条件を出す。
「俺はいいけど…本当にそれでいいのか!?」
「ええ…でもこの事は、絶対誰にも言わないで下さいね。」
「ああ。俺もどんな形でも本業に関わっていたいからな。やらせてもらうぜ。」
数時間後…仕事場のろくろを回すバグダッド電池一式の工事を終えたアユムに、男性は、「こっちも出来たぜ。」と言って、『あるもの』を渡してくれた。
アユムとカオリの手には、男性が作ってくれた、将棋の駒の頭に紐を着けた、スクーターの鍵のためのキーホルダー。
アユムのは、『歩兵』、カオリのは、『香車』…
「おじさん…ありがとうございます。」
「おう!俺も2人の旅の無事を祈ってるぜ!」
さあ、行こう…
※ ※ ※
それからもアユムとカオリは南下を続け、
たどり着いたのは岩手県の南部、宮城県との県境付近…
道の先に一人の大柄な男性が立ってる。こっちを見留めると手を振ってきた。
「アユムクーーン!!よく来てくれたワネ!!」
「ソラさん…お待たせしました。」「こ…この間ぶりです…」
アユムとカオリはスクーターを停め、ヘルメットを脱ぐ。
「改めてこの間はアリガトウ。ワタシを軍隊から助けてくれテ…」
「い…いえ…」
「そして…来てくれてアリガトウ。」
真面目な口調になるソラ。
「いえ…それこそ、僕らの旅にも関係ある事ですから…」
アユムも真面目な口調になる。
「あのさアユム…こないだもソラさんが言ってたけど…
『ホワイトドワーフ』って、何!?」
第六話 ホワイトドワーフ
「アレッツと似た姿をした、アレッツよりはるかに強いロボット…ネットのアレッツ改造サイトで得た情報ですけど。」
「概ね正解ヨ、アユムクン。」
「それが…この先にいるんですよね!?」
「ええ…この先に落ちている宇宙船付近を縄張りにしてるみたいデ、付近を通る者は、誰彼構わず攻撃しているノ。一般人もアレッツの野盗も、空を飛んでいてもネ…」
そう言ってソラは自身の『ブリスターバッグ』で動画を見せる。
「ワタシのアレッツの偵察ドローンで録った物ヨ。」
映っているのは一面の空、遙か遠方に、辛うじて人型に見える黒い影。その影がピカっと光ったかと思うと、次の瞬間、画面は砂の嵐になる。
「これ…空を飛んで超長距離で狙撃して…強いって聞いてましたけど…最上さんのより強いんじゃないんですか!?」
「最上サンには悪いケド、『ホワイトドワーフ』の強さは、アノ人の比ジャないワ。」
「ちょっとアユム…こんなのがいるなんて聞いてないわよ。」
「何故か北海道にはいないんです。それも北海道がアレッツ後進地域だと言われる所以なんです。」
「本州じゃそんなのがあちこちにいるって言うの!?」
「アチコチにって言う程でもないケド、少なくともこの辺の人は、コイツのせいで、通行が出来なくて迷惑してるらしいノ。」
「僕も…この先に目指す仙台がありますからね…」
「ね…ねぇアユム…」
カオリが口を挟む。
「ソラさんや、この辺の人たちには悪いんだけど、もう一度奥羽山脈を越えて、山形から仙台入りしちゃいけないの!?」
「アイツは空を飛べるカラ、行動範囲が広いのヨ。山形の方も縄張りになってテ、復興村が襲われたらしいノ。」
「僕らもここへ来る途中、『山形の方から流れてきた』人に会いました。」
「そう…なら、倒すしかないのね…」
「ワタシの機体は戦闘向きジャないカラ、アユムクンに倒してもらいたいのヨ。」
「僕も、この旅を続ける以上、どこかであれと戦う可能性を想定して、北海道からずっとアレッツを強化して来ました。」
「ワタシもわずかながら手を貸すワ。それで、アユムクン…」
「ええ…」
「早速、試してみましょうカ…」




