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7ー11 いじめでは無い これは戦いだ

ヒュンヒュンヒュンヒュン!!


ブレードモードにしたアンブレラ・ウェポンを振るアユム機の両腕は、誰にも見えなかった。


それから、幾筋もの幾筋もの光の線が走り、その度にダイダ機の肩が、つま先が、徐々に徐々に削れていった。


「グェアァァァァァ〜〜〜〜〜っ!!!!!」


ダイダの悲鳴が、峠にこだました。叫べど当然誰も助けない。


「バカなのォ!?あんた…さっきまでのアユムと軍人との戦いを、どう見てたのカシラ!?」

ソラが呆れて言うがその間にダイダ機は左肘を、右肩口を、両太腿を斬られていく。


(い…痛ぇ…!?)

斬られているのはダイダ自身の手足や身体ではない、全長7mの人形(・・)のそれだ。なのに…この不愉快さは何だ!?


「や…やめるるぉ渡会(わたるるぁい)!!た…たかが子供のいじめだるるぉう!?」

気持ち悪いくらいに穏やかな、いや、猫なで声で、命乞いする様に言うダイダ。


「ダイダ…お前にとってこれはいじめなんだろう。でも…これはもう、僕にとっては戦いだ!!!!!」


(アユム…)

後部座席に座るカオリには、アユムの表情は見えなかった。この惨劇の斬撃を繰り出している、アユムの表情は…


「お…お前るるぁ…頼む、助けてくるるぇ…こいつ…やりすぎだぁぁぁ…」

ダイダ機が手首から先が無くなった右腕を、傍で見ていたエイジ機とソラ機に伸ばす。が、次の瞬間、右腕は肘から斬り落とされた。「グェッ!!」


「そうは言われても…『弱肉強食の世の中だから、強い奴は何をしてもいい』んだろう!?」

「『弱い奴は何をされても文句を言えない』とも言ったワヨネ…」

「ま、アータみたいな奴は、そのショーネンにナマスに斬られるくらいしか価値がネーっスけど…」


「そ…そんな…グァ!!」

お前も昔アユムをいじめてて『やめて』と言われてもやめなかったろう。


アユムの機体は濃紺に金の差し色が入っている。しかも各部のボルトに見える装飾にも金色が使われている。ダイダにはそれが、夜空に輝く星に見えた。そして…それを背景に幾つもの光の筋…


まるで…あの夜の様な…


「星がぁ…星が降って来るるるるぅぅぅぅぅ〜〜〜…」


SWDのトラウマをほじくり出されて悲鳴を上げるダイダ。


「ダイダ…全くお前は、僕の星座好きをバカにしたり、星が降ってくると悲鳴を上げたり…お前もしかしたら、きれいな物を見たら死んじゃう呪いでもかかってるんじゃないのか!?…ああそうだ、


夜になったら空を見てみるといい。星はいつでもそこにあるぞ。

季節ごと、時間ごとに違う星がな!」


それは、スターゲイザーであり、目的のために旅を続けてきたアユムにとっては希望の言葉。だが、ダイダにとっては…


「ほしがぁぁぁぁぁ…星がいつでも…おるるぇの頭の上に…降って来るぅぅぅぅぅ…

季節ごと、時間ごとに違う星がぁぁぁぁぁ…おるるぇを潰しに…お、おるるぇを燃やしにぃぃぃぃぃ………」


ダイダの顔は、もう涙やらよだれやら鼻水やらでグチャグチャになっていた。その滲んだ視界が余計に、アユム機とその剣筋をあの夜、降って来た星の雨に見せていた。


ヒュンヒュンヒュンヒュン!!!


両太腿を斬られた事でエネルギーの供給は途絶え、もうダイダには抵抗出来ないのに、アユム機の両手は止まらなかった。


「ギィィィィィヤァァァァァ!!!!!」


「ダイダ!! 虐げられし者の恨み、思い知れ!!!!!」




やがて、アユム機の手が止まる。


グリーン迷彩機のコクピットで、一部始終を見ていたシノブとエイジは、

「タイチョー…やっぱりあのショーネンに、アレッツを持たせるのはヤバいんじゃねーっスか!?」

「いや…これなら彼にアレッツを預けても大丈夫だろう。」


アユム機の前に転がっているのは、かつてダイダ機だったアレッツの、もうどれが何だか分からない多くのパーツと、その中にごろんと転がる、


傷一つ着いていないコクピット。


「グェア!!」

そこからダイダが這い出てくる。それを見たエイジが、


「最上エイジ隊各員に告ぐ!!青森の野盗惨殺の犯人を捕縛せよ!!」


「「「了解!!」」」


ひぃぃぃぃぃ〜〜〜っ!!、という悲鳴を上げて逃げ出すダイダを追いかけ、山中に入っていく、エイジ隊の4機のアレッツ。「山中では邪魔だ。降りて徒歩で行け!」


「渡会君…」

エイジ機がアユム機に向き直り、そして、


「私達はこれで失礼する。君達の旅の安全を祈る!!」


敬礼する。


「最上さん………あなたも…この旅の果てに、あなたの理想が叶いますように!!」


「バイバーイ」、シノブの言葉を残してエイジ機も山中に消えていった。


「認めてもらえた…みたいね、あたし達の事…」

「そう………ですね。」

「それでさ…あの…アユム……あたしも…」


それにしても…アユムは思った。

(あのいじめのせいで高校に行けなかった、か…加害者はいじめの事なんか全部忘れてのほほんと生きてる物だと思ってたけど…ちゃんと罰は受けてたんだなぁ…)


「………あんたの事認めて…」

「…え!?何ですってカオリさん!?」

「………何でもなーーーい!」

…何むくれてんだろうカオリさん…


「ありがとう、アユムクン!!おかげでワタシの疑いも晴れたワ!!」

一部始終を見ていたソラ機が、アユム機に近寄ってくる。

「やっぱりアナタが一番!アナタしかいないワ!」


「ソラさん…!?」


「アナタに頼みたい事があるノ。」


「頼みって…バグダッド電池のご注文ですか!?」


「ああ、それもあるけど…別口のお願いナノ。…アナタ達の旅とも関係ある事ナノ…」


それからソラは、声を潜めて、


「『ホワイトドワーフ』…名前くらいは聞いた事あるデショ!?」

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