7ー6 カスタマイズ Episode 6
アユムのブリスターバッグから出て来たのは、群青色に金色に差し色が入ったアレッツ。まるで彼がいつも首から下げているお守り袋の中に入っている、ラピスラズリの様な…ただし、左右のカメラアイの色が違う。左目は緑色だが、右目は金色。
「前から気になっていたが、あの目は中二病という奴かね!?」
「プロトアレッツの時からああで、カラーエディットでも変えれなかったんです!!」
「何だそれは、聞いたことが無いぞ…まぁいいそれより…」
手に持っている武器は、銃にも剣にもなる武器、『アンブレラ・ウェポン』。ただし銃身・刀身がこれまでよりも長い。新しく作った物らしく、これまで右手に持っていた、やや銃身の短い『アンブレラ・ウェポン』は左手に持っており、スタンやスモークに使う特殊兵装は背部に収納されている。
(出力を上げたか…!?ジェネレータとコンバータをSRに……)
盛岡で『どうぞ僕を撃って下さい』などと言いながら、この戦いが避けられない事を予感して準備していたのか!?
そしてアユムとカオリは腹部の立方体と球体が組み合わさった様なパーツに手を触れると、二人はコクピットへと消えていった。
(カオリ君をオペレータにした複座型か…色々と面白い運用法を思いつくな…)
対するエイジ機はグリーンの迷彩塗装で、いかにもプロの軍人という出で立ちだ。しかも構成する全パーツがSR。アユム機はもちろん、近隣の野盗のアレッツよりはるかに強い。武器は、右手にミドルバレルのパーティクルキャノン。そして、背中には…
「アンブレラ・ウェポン!?」
「君のを参考に作らせてもらったよ。ふざけた形をと思ったが、予備武装としては丁度いいね。」
エイジ機の『アンブレラ・ウェポン』は刀身・銃身も短く、グリップも真っ直ぐ。これまでアユム機が用いていた物が普通の傘だとすると、エイジ機の物は折りたたみ傘に見える。本人が公言している通り、メインウェポンを失った時のサブウェポンらしい。アユム機との戦闘・共闘時のデータと、アレッツ改造サイトを参考に、足りない部分は類推して開発した。
「ま、この辺は誰も通らないでしょうから、遠慮なく暴れていいっス。」
「それでは…久野君、戦闘開始の合図を何か出してくれ。」
「え…!?(えーっと…こういう時は、何か投げて地面に落ちたら開始とかっスか!?でも、投げる物なんて何も…)」
「早くしたまえ、久野君!」
戦闘前で気が立っているエイジに、
「そ…それじゃあ…これが地面に落ちたら戦闘開始っス!!」
シノブは自分の牛乳瓶メガネを外し…
女神モードになった。
「お願いです二人とも!!決闘なんて野蛮な事はやめて下さい!!」
「あなたがやれと言ったんでしょーーーっ!!」「ややこしい事するなーーーーっ!!」
※ ※ ※
改めてメガネをつけ直したシノブが、右手を上げて、
「それじゃあ用意…始め!!」
右手を振り下ろし、戦闘に巻き込まれてはたまらんと、シノブは慌てて副長機の中に入る。
合図があっても武器を構えたまましばらく睨み合う2機。
ならこっちから行くぞ!エイジ機がパーティクルキャノンを射出する。タタタ…!!アユム機がそれを右に避けながら、アンブレラ・ウェポンを射出する。エイジ機も右に避ける。
(すごいタイチョー…あのショーネンも…)
まるでダンスだった。アユム機とエイジ機は、見えない動く点を中心に、右に左にくるくると周りながら、互いのキャノンを撃ち合った。これまで戦ってきた何十体もの野盗機とは次元の違う戦闘を、たかが高校生の少年がプロの軍人と繰り広げていた。撃ち合いながらアユム機は、エイジ機との距離を詰めて行く。そして…




