表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/263

7ー4 そして僕は ソラさんをかばった

「………一応、聞こうか。何故、その男が犯人じゃないと言える…!?」


「し…身長180cm以上で強そうな人ってだけで、ソラさんを疑うのは乱暴でしょう!?」


「確かにそうだが、依然、その男が疑わしいのも事実だ。」


「陸奥湾の魚型アレッツだって、目撃情報は『空を飛んでいた』とは一言も言ってないでしょう!?」


「それでも、その男の機体ではないという証拠にならない。」


「ど…動機がありません。殺す動機も、アレッツを盗む動機も。この人はこんなにすごい機体を持ってるんですよ…」

叫びながらアユムは紫色の可変飛行アレッツを指し示す。


「移動特化の可変機は攻撃力が弱いんだろう!?アレッツ戦用のが欲しかったのでは!?」


「………っ!!」

アユムの片足が、カタカタと震えていた。さっきから、ずっと。


「渡会君、何でそこまでその男を庇うんだね!?君が言った通り、その男の事は『ほとんど知らない』んだろう!?

君がそんな事をするなんて意外だよ。まあ、相手が犯罪容疑者でさえなければむしろ好ましくもあるが…」

しかもこの子、恐いのをずっと我慢してまで…


アユムはきっ、とエイジを睨み、


「ソラさんは悪い人じゃありません!!」


その声が、峠の静寂にこだました。


「ソラさんは僕たちが海で遭難しかけてたのを助けてくれました。カオリさんと仲違いしかけた時も間を取り持ってくれました。だから…」


アユムは人付き合いが苦手。他人と一緒にいるくらいなら、一人の方が気が楽だと今でも思っている。誰かに好意を覚える事も、まだ出来るとは思えない。だが…


「だから、ソラさんはそんな事をする人じゃありません!!」


アユムは、ソラを信じた。


しかし、それが通用する相手なはずが無い。エイジは、はぁー、とわざとらしくため息をつき、


「いい人が人を殺す事だってあるんだよ。」


「アユムクン、もういいワ。庇ってくれてアリガトウ。後はワタシが自分で潔白を証明するワ…」

エイジ隊の方へ行こうとするソラに、


「ソラさん…も、最上さん、だ、大体あなた達にどんな権限があって、ソラさんを捕まえようとするんですか!?」


「それを蒸し返すなら、子供がロボット兵器に乗っている事の方がよっぽど問題だと思うがねぇ…」


「ふゎ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ 〜 〜 〜 〜 〜…」

押し問答に割り込むかの様なわざとらしい欠伸の声。シノブがふらふらと3人の間に割って入る。


「あー、こりゃすんません。あまりにも退屈だったんで…」


「久野君!不真面目だぞ!!」



「ですからすんません…でもねぇタイチョー、こーいう場合、少年マンガとかだったら、戦って決着を着けるんじゃねぇっスかねーー!?」



「な…っ!?」「まぁ…」「ら…乱暴だぞ、久野君!!」


「タイチョー、それからショーネンも…戦争、ケンカってのは乱暴で野蛮でサイテーの、やってはいけない事っス。それでも人類が戦争をやめなかったのは、戦争が問題の解決にある程度有効だからっス。まぁ、人的、物的消耗が激しいのと、戦争の後、相手と友好的な関係を築く必要が生じたとき、それが困難になる事が難点っスけどね…」


「問題発言だぞ!!」


だがシノブは止まらない。上司を含めた男三人を次々と斬っていく。


「タイチョー、そこのショーネンの言う通り、アーシ等には犯罪者を取り締まる力も権限もありません。でも誰かがそれをやらなきゃならねーのも事実っスが、それがアーシ等である必要もありません。」


「ぐっ…!!」


「そこのオカマッチョは確かに青森の野盗惨殺犯である決定的な証拠はありゃーせんけど、犯人の人物像に限りなく近いのも事実っス。」


「誰がオカマッチョよ…」


「そしてショーネン、『あなたはいい人だから撃てません』なんて甘っちょろい事言ってたら、この堅物タイチョーはどこまでもつきまとって、アータからアレッツを取り上げようとするっスよ。」


「でも………」



「分かったっスかぁ!?話し合い、逃避、非暴力、そう言った平和的解決策はただの問題の先延ばしっス。ここはもう、戦って負けた方が勝った方に従うぐらいしか無いんス!!」


そして訪れた長い、長い沈黙の末、



「渡会君…アレッツを出して私と戦いたまえ。」

エイジはブリスターバッグを取り出す。

「確かにこれは、戦いでもしないと決着が着きそうにないな…」


「最上さん…」


アユムの脳裏に浮かぶ、歴代のクラスメート(いじめっ子)達。僕がみんなより背が低くて力が弱いから、いじめの標的にしてきた、この世で最も醜い、アユムの最も嫌いな者たち。


アユムは、頭を垂れる。


これまでアレッツで戦ってきた相手は、みんな野盗の類だった。


だが…


「………僕は…あなたとは戦えません………」


あいつらと同じ(いじめる側)には、なりたくない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ