7ー2 青森野盗 惨殺事件
「君達の事情は分かった。なら次は私達の話を聞いてもらえるかな!?」
「またあの話ですか!?アレッツを手放せって…」
「その話はひとまず良い。…旧青森市街地の野盗が殺されてたんだ。それも、かなり惨たらしい手口で…」
周りに誰もいないにも関わらず、声をひそめるエイジ。
「SWD以降、私も人死には何度も見てきたが、あれは…なんと言うか、食糧や物資の奪い合い等による物では無いと思った。もっとこう、純然とした殺意と言うか、悪意に満ちた様な…とにかく、あれをやった誰かを放置しておく訳にはいかない。そう思ったのだ。」
「まさか僕がやったとでも思ってるんですか!?言っときますが…」
「分かっている。君達じゃない。アレッツの科学捜査アプリによると、被害者達の死因は素手で殴られた事による撲殺、犯人の推定身長は最低でも180cmだそうだ。」
「あたし達には無理ね。背も足りないし…」
「なら僕らに何の用ですか!?」
「何か知らないかと思ってね。あの頃、君らもあの辺にいたのだろう!?」
「僕が青森に着いた時、野盗は既にいなくなってたんです。誰かに殺されてた事自体、初めて知りました。」
「あたしはあの頃、怪我の治療でアユムとは別行動だったんです。接骨院の先生が証人です。」
その際カオリは気になる事を聞いていたが…関係があるとは言いきれない。
「被害者の野盗は全員、ブリスターバッグを持っていなかったんだが…」
「殺した犯人が取ったんでしょうね。」
「津軽半島の追い剥ぎを倒したのは、君だね!?」
「はい…」
「あいつらとんだ臆病者っス。暴力の手段を失ったら、心細くなってアーシ等に保護を求めて来たっス。青森の野盗がいなくなった一週間後に…」
「君らは北海道から渡ってきたんだったな。青森の後に津軽半島じゃ、順番が逆だ。それに、君はアレッツは倒せどパイロットは殺していない。盛岡では私達とは戦えないとまで言い出した。とても野盗虐殺なんて出来ない。」
「なら僕の疑惑は完全に晴れたんですね!?」
「それもまた問題なのだか…」
「は!?」
「何でもない。ところで、弘前城で君らと一緒にいた、紫のアレッツのパイロットは!?」
しばしの間を置いて、
「…あの人の事はよく知らないんです。」
「そうか…」
「もういいですか!?」
「あ…ああ。変な話をして悪かったな。」
「ではもう行きますね。お二人はごゆっくり。」
そう言い残してスクーターで山道を降りて行く二人。途中、山頂から死角になっている場所でアユムはスクーターを停め、カオリもそれに並ぶ。アユムはヘルメットのまま、カオリに告げる。
「このまま街を出ましょう。荷物は全部ブリスターバッグに入ってます。」
「そうね…でもアユム…」
なにか言いたそうなカオリに、アユムは、
「そんなはず無いでしょう…信じましょう。」




