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6ー3 再びの城攻め 再びの邂逅

さて…


青森県から秋田県の北東端を抜け、岩手県に入ったアユムとカオリは、とある大きな街の側に出来た復興村に着いた。


前田さんからの紹介で現地に住む人達から歓迎され、あちこちのバグダッド電池を修理して周り、アユム達は皆から感謝された。「わんこそばをごちそう出来ないのが残念だ」とまで言われたが、食料事情を考えると仕方が無い。


この街は山に囲まれ、三叉に分かれる川があり、石垣だけしか残っていない様だが、城跡もある様だ。そして、例によって城跡は野盗の住処になっていた。


城に巣食う野盗退治はリハーサル済みだ。城を何日もかけて遠巻きに観察し、アレッツの配置の様子等を調べ、攻略の手順を考え、いざ城攻め、その当日…


     ※     ※     ※


城跡の中は、十数機のアレッツが取り巻く中、6体のアレッツが対峙していた。


「…なんであなた達がここにいるんですか!?」

1体はもちろんアユム機。カオリも一緒に乗っている。


「それはこっちの台詞だ。弘前城ではよくも事後処理を丸投げしてくれたな!!」

残り5体は、あの時最後に出て来た、『軍隊』のグリーン迷彩色アレッツ。うち隊長機と思しき1機はアユム機より強いSR(スーパーレア)


「きれいごとかもしれませんが、誰も傷つけたくありませんからね…」


「捕えた野盗の扱いで地元と揉めて、この遅参となってしまったよ。」


アユムと彼らはまたもやほぼ同時に城を攻略し始め、野盗機をそれぞれ何機か倒した末に、こうしてまだ大勢残っている野盗に取り囲まれる中、睨み合っていたのだ。


「だから言ったのに…途中からでも引き返そうって…」

後ろからそう言うカオリに、アユムは、

「あいつらに気づいた時にはもう引き返せない状況だったでしょう!?」

するとグリーン迷彩の隊長機が、

「ん!?今、君の方から女の声が聞こえなかったか!?」


「おうおう手前ら、俺達のねぐらにおしかけといて何やってんだ!?」


1機の野盗機が肩で風を切る様に歩み出る。が…


「ここはお前らの物じゃない!!」 タァーーーン!!

「不法占拠は許さん!!」 タタタ…!!


アユム機のアンブレラウェポンとグリーン迷彩の隊長機のパーティクルキャノンで撃ち抜かれて返り討ちになる。


「ああっ!!サブ!!」「てめぇらやりやがったな!!」「おいお前らやっちまえ!!」


「ああもうゴチャゴチャする…」

「君には後で言いたい事がある。まずは…こいつらを倒そう!!」


迫り来る野盗アレッツに突進する6機。混戦の最中、城への被害が最小限に抑えられたのは奇跡だった。こうして城は、唐突に陥落させられた。


遠巻きに眺めていた復興村の村人達が歓声をあげて喜んでいるのが、望遠(テレスコープ)ビューでも見える。


「さて、次は君の番だ。」

隊長機がアユム機にそう言ったが、


「これ、人畜無害なんですよね…!?」

アユム機は左手の特殊兵装を足元に向け、


スモーク弾を射出!!


たちまち立ちこめる煙。


「む…!?」

レーダー、ブラックアウト。周囲から「くそっ!どこだ!?」「撃つな!味方に当たる!!」部下機の声がする。


ようやく煙が晴れた時、もうあの蒼いアレッツはいなくなっていた。


     ※     ※     ※


翌日…


アユムとカオリは、広場の一角に露店を出していた。『よろず修理承ります』という、手書きの看板を出し、サンプルとしてバグダッド電池の風車と太陽光パネル、室外機を並べ、LEDランプやら冷蔵庫やらを並べていた。『子供に見えますがちゃんと修理出来ます』という証拠として。そこに復興村の村長さんが来ていたのだ。


「私達は幸運だよ。君らが来てくれた上に、お城まで開放されたんだから…」


村長さんはそう言ってくれたが…


「その…この間はすみませんでした!」


頭を下げるアユムとカオリ。


「…あれは君らのせいじゃないよ…」


数日前、この村へやって来たアユムとカオリは、村人達から歓待され、その夜はささやかな宴会が催された。そしてこの様な各地間の往来が困難な状況ではよくある事だが、皆はこれまでアユム達が訪れた場所の土産話を求められ…『各地でも農業や漁業による自給自足が行われてました。』という話をしたところ、村人達の雰囲気が気まずくなった。翌日見た村の畑の作物は、半分が立ち枯れて、とても村人全員の口に糊出来るとは思えなかった。昨夜の土産話で話した、これまで訪れた村よりも状況は悪かった。


「わしらはみんな元々鍬なんか持った事なんて無かったんだし…ただでさえああいう物はお天道様任せだ。だから…あんたらや、あの人達みたいな人達は大歓迎だ。」


アユム達が露天を構える広場の反対側には大きな天幕があり、そこには村人達が長い列をなしていた。


まあ、気長にやるさ。じゃ、ワシも向こうに並ばんと…そう言って村長さんは去って行った。


「青森の城下町に現れたグリーン迷彩のアレッツ乗り…また出くわすなんて…」


青森の城下町の城跡を単機で攻略しようとした時、彼らは反対側から攻め込み、城の半分を攻め落とした。その後は落とした城を占領せず、市民に開放し、去って行った。


今回も、住民たちにも気づかれずに街に入り、短時間で城の様子を調べ尽くしたらしい。


そして今、アユム達が露天を構える広場の反対側で、彼らは天幕を張り、食料や物資の配給をしていた。村の食料事情を考えたら、彼らは神様に見えるだろう。


「あたし達も旅から旅だもんね…欲しい物資はいくらでもある。けど…」


「なんとなく、近寄りがたいですね…」


もし万が一、『蒼いアレッツ』のパイロットが、自分たちだと彼らに知られてしまったら…


『あいつらは多分、プロの軍隊ヨ。』

ソラさんはそう言っていた。


そう言えば…ソラさんからメールが来ていた。


まず、『夏草や 兵どもが 夢のあと』という俳句が寄せられ、『ワタシは今、岩手県の南の方にいます』という内容が綴られていた。可変飛行アレッツの移動力はすさまじい。彼は既に、この北上盆地のはるか南の端まで到達しているらしい。そして…


『次に会うときまででいいから、また1つ、バグダッド電池をレストアして渡して欲しい。報酬はちゃんと払う』とも…


相変わらず何を考えてるのか分からない人。だが…アユム達には危害を加えるどころか戦闘・人間関係含めて危ない所を何度も助けてもらっている。『これは一つ貸しにしとくワ。』ソラさんはそうも言った。


「…廃墟で使えそうな資材探そ…」


損な性分である。

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