5ー10 来年の桜 奪還作戦1
「ブリスターバッグ、オープン!!」
現れたのは深い青の所々に金色を散りばめた、アユムのアレッツ(第二部バージョン、セミキューブ汎用型 R)。右手には銃にも剣にもなる武器「アンブレラウェポン」、左手には長銃身リボルバーを思わせる特殊兵装と小型盾。強化バージョンアップによるジェネレータ、コンバータの出力アップと積載量の増加によって、同時装備が可能になったのだ。そして…
「カオリさん、レーダーで周囲の様子を確認して、異常が発生したら僕に報告して。あと、細かな設定の変更も。」
「分かった。」
コクピットの中はもう1人では無い。前下方と後ろ上方にシートが1つずつ、前がパイロットのアユム、後ろがオペレータのカオリ。
「アユム…あたし達スターゲイザーでしょ!?夜襲をしかけちゃだめなの!?今夜も天候はいいみたいだし…」
「ここは重文(重要文化財)です。錯乱した敵が飛び道具を乱射する危険性があります。」
「分かった。なら、アンブレラウェポンのガンモードは、単射にしておくわね。」
「ああ…」
※ ※ ※
外堀から1ブロック離れた交差点に身を隠すアユム機。向こうの外堀には橋がかけられており、その向こうの門…東門と呼ばれている…には、見張りのアレッツが立っている。
「ガンモード、3、2、1…」
「ゼロ!!」
アユム機は建物の影から飛び出し、見張りアレッツの右肩と両太腿を撃ち抜く。
「敵機、沈黙。」
「今だ!!」
アユム機は素早く1ブロックと外堀の橋を滑り抜ける。
「外堀、クリア。」
「今のうちにドローンを射出して!!」
「了解!!」
アユム機の背中に停まっていた偵察用ドローンが、上方へ射出される。
「アユム、一時と二時と十時に敵、3。汎用型スフィアC。装備、パーティクルキャノン。一番近いのは一時、こいつだけパーティクルブレード。」
「分かった。特殊兵装、スタン。」
「了解。」
「あと…念の為、天守閣にも注意してて。」
「え…わ、分かったわ。一時、来るわよ!」
アユム機の左右色違いのカメラアイが、ギン!と、輝く。アンブレラウェポンがブレードモードになり、近づいてきた敵機を左肩から斬り下ろす!同時に十時の敵機に左手の特殊兵装を射出!弾が命中した敵機はバチバチと火花の様なものを飛ばして動きを止める。あの弾に殺傷能力は無い。ただアレッツの一切の動きを短時間止めるだけ。だが…パイロットを殺さずにアレッツを倒すには丁度良い。
「どぉぉぉりゃぁぁぁぁっ!!」
アユム機はさっき斬り捨てた敵機を右足で蹴飛ばし、パーティクルキャノンで撃ってくる二時の敵機の盾にする。そのまま左前方へ進み、スタン弾で固まっている十時の敵をガンモードで撃破、更にアンブレラウェポンを右に伸ばして、二時の敵も撃破。
「アユム、天守閣に機影。これは…スナイパー!?」
高さ14mとされる天守閣の屋根の上に現れたのは、スフィアUCの狙撃型アレッツ。ロングバレルのパーティクルキャノンを装備している。
「やっぱり…思ったんです。僕だったら、あそこから狙撃するって…」
「よけてーーーっ!!」
前へステップを踏むアユム機。さっきまで立っていた位置に、スナイパーの弾が窪みを作る。
「更に前方に敵3!!」
「右手の橋は迂回して、北から中堀を越えよう。」
南から追いかけてきた3機から逃げる形で、北へまわろうとするアユム機。その間もスナイパーの弾は追って来る。周囲に植えられている桜の木に弾がかすって、着火。
「いけない!!」
カオリは両側のトラックボールを操作すると、両肩の尖った物体が動き、先端から水が噴出され、枝の火が消える。だが、そんなアユム機を嘲笑うかの様に、敵機はパーティクルキャノンを雨のように射出する。
「また火が…水を…機影5…」
カオリの負担が更に増した。
「うぉぉぉぉ!!」
アユム機は敵機の弾幕をシールドで防ぎ、
「たぁぁぁぁ!!」
接近した1機をブレードモードで斬る。
「ウォーターならさっきから撒いてるわよ!!」
「カオリさん落ち着いて〜〜〜」
周囲警戒の上に消火で、初心者オペレータに余裕が無くなってきた。さらに、
「ほ…北東の櫓の上にも敵!」
「しまった!追い込まれた!!」
回り込んだつもりだった先にも敵が待ち構えていた。
「せめてスナイパーを何とか…」
「撃てば天守閣に当たります!!」
「じゃあどうすれば…」
万事、窮す…




