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5ー8 カスタマイズ Episode 3&4

旧青森市街から南西の城下町へ行こうと山中をスクーターで走る2人。


その途中休憩の際、とある話をしていた時、


「ねぇ、アユム…あたしもあんたのアレッツに乗れないかなぁ…」


不意にカオリが、そう言ったのだ。


「…アレッツでの長距離移動はエネルギーを食う上、目立ちます。」

わざとはぐらかそうとするアユムに、


「…ごまかさないで。」


…分かっていた。さっきまでの話の流れからすると、『戦闘中のアレッツに一緒に乗る』という意味だ。


「………危険ですよ。撃墜されたら多分命はありません。」

ダイダにアレッツを撃墜された手下のハゲとケチ。ダイダはどうなったか言ってなかったが、死んだと考えたほうが妥当だろう。


「あんたが戦ってる最中、そこいらにいたほうがよっぽど危ないわよ。」


「でも…」


「あんたのアレッツのコクピットの中がどこよりも安全。そうだと言って。」


アユムは面食らった。この世は僕が見ていたリアルロボットアニメとは違う。いくら強力なロボット兵器を手に入れても、何でもできる訳ではない。なのに…


ロボットで戦いに赴く男と一緒に戦ってくれる女は、この世に実在するらしい。まぁ、アユムの思い描く主人公とヒロイン像とは程遠いが…


     ※     ※     ※


5分後…山中に立て膝を着いて佇むアユム機。多分、周りは誰も見ていない。


そのコクピットの中は、津軽海峡を渡った時の様に、前下方の操縦席と後ろ上方のサブシートの複座型になっていた。ただし、カオリの座るサブシートの周りには、いくつものスクリーンが、増設されていた。


「うわぁぁぁ〜〜〜…」


「オペレーター、お願い出来ますか!?レーダーで周囲を監視して何かあったら報告して…」

後ろを振り向きながらアユムが言った。


「ねぇ、これ、席を逆に出来ないの!?」


「パイロットが後ろで、オペレーターが前、ですか!?」


一旦二人で外に出て、タブレットの改造アプリを操作し、


「変えてみましたよ。じゃあ、入ってみますね。」


「うん…」


二人でコクピットに入り直す。今度はカオリが前方下、アユムが後方上。


「おお~~~っ、視界爽快~~~!!」

下で両手を上げてシートに背をもたれかかるカオリに、


「何ですかカオリさん、視界爽快って…」

アユムが下にいるカオリを見下ろし…


今朝、暑いと言って開けた首元のボタン、その奥の深い胸の谷間が目に入り…


次の瞬間、二人はコクピットの外にいた。


「ちょ…アユム、いきなりどうしたのよ!?」


アユムは無言で改造アプリの設定を元に戻す。耳の裏まで真っ赤になって、


「僕が前、カオリさんが後ろ。これは決定事項です!!パイロット権限、所有者権限です!!」


「え~~~~~…」


確かに視界は爽快だ。眩しすぎるくらいに。


     ※     ※     ※


スクーターで山を越え、たどり着いた大きな街の廃墟、その端に出来た復興村に入るなり、


「おっ……!?」


1人の、中年男性と、目が合った。


「『スクーターに乗った若い男女』…まさか、本当に来るなんて…!?」


「おじさん…僕等の事を知ってるんですか!?」


「今朝方、津軽に住んでる古い友人から、SWD後1年振りにメールが届いた。『自分達は元気だ。北海道から来た流しの修理屋で、若いが腕は確かだから、力になってくれ』って…」


「接骨院の先生…まさか、あなたが前田さん!?」別れ際の言葉は、こういう意味だったのか…あの村のネット環境は…例によってアユムが直した。


「既に村の連中には話をしてあるんだ。もういくつか仕事も用意してある。」

彼…前田はそう言って、右手を伸ばして来た。人は誠意を持って接すれば信頼を返してくれる事を、ようやく学んだアユムであった。


「頼りにしてるよ。渡会アユム…」


アユムは前田に右手を伸ばし…


「…さん(・・)。いやぁー、館平のスケベオヤジが妙に推して来ると思ったらこういう事かぁ〜〜〜」


…前田はカオリ(・・・)の手を握った。手を伸ばしたまま固まるアユムと、そんな彼を見て気まずい想いをするカオリ…


「いやぁ〜、すまんすまん。まさかこっちの男の子だったとはねぇ…」

「いいんですアユムって名前で男って変ですよねぇいいんですいいんです…」

「何か色々、ごめん…」


     ※     ※     ※


「ところでおじさん…」


仕事の段取りを決めている最中に、アユムはここへ来たもう一つの理由について聞いた。


「この街のお城に入れませんか!?」

「え!?」


途端に前田の表情が曇る。


「あー、恥ずかしい事なんだけど…アレッズ!?いや、アレッツっていうの!?あれの野盗に占領されちまっててなぁ…」

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