5ー2 寄り道 すれ違い
「あ、あんた何考えてんの!?これは物見遊山の旅じゃないの、あんた自身が一番分かってるでしょ!?それなのにお、温泉!?」
「で…でもカオリさん、あなた…」
(く…臭い!?)そりゃこんな世の中の上、ずっと旅をしている。住んでた村でもお風呂と言ってもタライのお湯とタオルで身体を拭くだけだった。体臭が臭わない、とは言い切れない。ましてやあたしは女だ…
「……おい、それ以上言うな!!」氷点下の視線でアユムを刺す。
「う………ぐ………」それ以上、何も言えなくなるアユム。
「分かったわよ、行けばいいんでしょ、温泉!!」
カオリは側に停めた自分のスクーターのハンドルを握る。
「………」何か言いたそうなアユムだったが、
「何………!?」ギロリ!睨まれ、
「………行きましょう…」
自身もスクーターに跨る。
その後…津軽半島の海岸沿いをスクーターで走る2人。だが、2人の間に会話は無かった。時速30kmでの移動なのもあるが、2人の間に気まずい雰囲気が流れ、カオリも当てつけの様に、アユムが分かれ道で停車する時、カオリが道を行き過ぎて戻る事がしばしばあった…
※ ※ ※
そして着いたとある温泉…
カポーーーーーーン!!
「ふーーーーーーー………」
崩壊を逃れた露天風呂に浸かるカオリ。疲労と汚れが溶けて流れていく様だ…
だが…
(気が晴れない…)
この村に着いた途端、アユムは『カオリさんは温泉にでも入ってて下さい。僕はする事がありますから』と言って、どこかへ行ってしまった。
(全く…あの子、何を考えてんのよ!?)
「お嬢ちゃん…」
一緒に入ってた中年女性が声をかけて来た。
「お嬢ちゃん、この辺の子じゃないでしょう!?」
「え…あ、はい…あの…余所者は入っちゃいけなかったでしょうか!?」
「え!?ああ、いいんだよ…」
そう言いながらも彼女はカオリをじろじろと見てくる。
あ、そうだ…カオリはアユムの事を思い出した。
「あの…おばさん…」
「ん!?」
「あなたのお家は、バグダッド電池が壊れてませんか!?」
※ ※ ※
「そういう事の出来る人がいるなら」と、中年女性は二つ返事でカオリの話に乗ってくれた。
風呂上がり、村を歩き回る2人。
「で…その修理屋さん、どこにいるの…!?」
「すみません、あたしもあの子がどこ行ったのか…あ!!」
いた。誰かの家の側で、何やらバグダッド電池の室外機をカチャカチャいじっている。
「ちょっと…修理屋って、あの子!?まだ子供じゃない…」
「う…腕は確かですから…あ、アユムーーーっ!!」
カオリの声にアユムはユラリとこっちを向く。
「………何ですか!?」
「あのねアユム、この人、あなたにお家を見てもらいたいって…」
「………後にして下さい…」
そう言ってまた、機材に向かってカチャカチャ…
「…またこの次お願いね…」中年女性は去って行った。アユムは構わず機材をカチャカチャ…
「………」あたし、何やってんだろう…
「あぁ…もういい!!」
カオリは、行ってしまった。
※ ※ ※
同時刻、村から少し離れた山間…
「へぇ…硫黄の匂いがするじゃナイ!?」
大柄な男性が、立つその隣には、魚型飛行アレッツ…
「ま、私もそろそろ頃合いか…」
彼は自機をブリスターバッグに収納し、山を降り、村へ向かう…




