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もしもの落星機兵ALLETS・4

『天使』のパイロットになって以降、他人の情報が見えるのが当たり前だったため、久しぶりだった。相手が何者なのか、何を考えてこの様な事をしているのか、分からないのは…


『ハンズは宇宙人』『だが同族の宇宙人を、地球人に攻撃させようとしている。』


だから…


「分かりました。宇宙船は私が預かりましょう…」「おお!お願い致します!!」


ハンスがエイジに握手を求めようとしたその時、


「…と、その前に、会わせたい人物がいるのだが…」


     ※     ※     ※


エイジとハンスの下に、手錠をかけられて左右を屈強な男に固められた人物が連れて来られた。


「君に聞きたい事が…」エイジが言いかけると、手錠の男は、

「俺は落合、しがない動画投稿者だ。」

と言った次の瞬間、ハンスと男…落合の目と目が合う。

「………っ!?」ハンスは反射的に目を反らし、

「…っ!!」落合も一瞬言葉が詰まる。


「ほう…彼は私が何を聞いてもこれしか答えてくれなかったのだが…」

「お、俺は落合、しがない動画投稿者だぁ!!」

再び遮る様に叫ぶ落合。こいつの個人情報は『天使』の機能でも見る事が出来なかった。ハンスと同様に。


「『ウォッチャー』と言うハンドルネームを聞いたことがあるかね!?」

エイジが意味ありげに聞くとハンスは、

「ええ、ええ…『天使』アレッツの活躍を動画にしてアップしてた人ですよね!?そ、それを見て私もあなたの下を訪ねたんですから…」

「勝手に宣伝してくれるのは有り難かったし、居場所は分かっていたのでずっと泳がせておいたのだがね、あまりにも熱心すぎたので、我々が地下室に『保護』したのだよ。」

その地下室には鉄格子が着いているのだと、ハンスは確信した。


「失礼、君には関係無い事だったね…」

「い、いえ…」


エイジが顎で示すと『ウォッチャー』は再び牢獄に連れて行かれた。

(この男、俺の事をどこまで…!?)

ハンスの背筋が寒くなった。

(やはり『ウォッチャー』とハンスは関係者か…)

エイジは思った。そして今度はエイジがハンスに右手を伸ばす。


「改めて、宇宙船は我々が有効利用させてもらおう…」

「は、はい…」

ハンス恐る恐るエイジの手を取った…


     ※     ※     ※


翌日、旧宮城県仙台市青葉区、台原森林公園…


「あのー、これは一体…」

公園を拓いて一面の畑に作り変えられた場所に、麦わら帽子に草刈り鎌を持たされて呆然と立ちすくむハンス。昨日のやり取りから、煮て食われるか焼いて食われるかと危惧していたが…


「今日も暑くなる。熱中症にだけは気をつけて、こまめに水を摂るんだぞ。」

同じ様な格好をしたエイジが言うと、彼は畑の雑草を刈り始めた。


「最上さん…あなたは最強のアレッツ乗りですよね…!?しかも東日本最大勢力の部隊を束ねる…」


「それは私自身自覚が無いが、その通りなのかも知れない…」


「宇宙人への復讐は…」


「SWDへの宇宙人への対処も、別途ちゃんとやってる…」

実際、エイジは仙台(ミレニアム)は勿論、山形や福島、果ては郡山(アイスバーグ)の氷山レオや宇都宮(ユニバレス)の自警団長、群馬(ジョシュア)の舞鶴アカネ等にも幅広く声をかけ、宇宙船の乗組員を選抜していた。ハンス自身も、エイジに宇宙船を任せた自分の目に狂いは無かったと思っていた。これだけの精鋭を集めれば、もしかしたら、と、思えるくらいに…


「いいんですか!?私に刃物を持たせても…」

「おーい最上さーん!!いつもすまねぇな〜〜〜!!」

向こうから高校生くらいの青年がやって来る。


「黒部君…君も精が出るな…」

エイジが挨拶すると、青年…黒部ユウタが答えた。


「そりゃもう、何せこれが…」

そう言ってユウタは自分の小指を立て、次に、

「これなもんで…」

両手のひらで自身の両胸を丸くなぞる。


「…それは違うだろう…」

呆れて言うエイジに、ユウタは、


「はっはっは、こっちだった。」

胸ではなく腹を丸くなぞる。

「ま、俺はカナコとベイビーの3人分の食い扶持を稼がなきゃならねぇんだ。じゃあな!!」

そう言ってユウタは向こうの畑で草刈りを始めた。


「妊娠している奥さんがいるのか!?あんなに若いのに…」

ハンスが尋ねると、エイジは、

「SWDのせいで、両親を亡くして、奥さんは両足まで無くしたがな。それでも2人で力を合わせて生きて行ってるんだ…」

「………っ!!」言葉を失うハンスに、エイジは、

「さ、仕事を始めるぞ…」そう言って、草刈りを始める。


     ※     ※     ※


エイジはハンスと行動を共にした。自警団としての執務や、宇宙船の運営の傍ら、村の仕事をこなす日々を共に過ごした。


昨日は畑仕事、今日は廃墟の資材集め、井戸掘りに、バグダッド電池の設営、産気づいたユウタの奥さんを医師の許に連れて行くために担架を一緒に担いだりもした…


相手は宇宙人、だが目的が分からない。だから、現在の地球と、自分自身のありのままを見せ、ハンスに寄り添うしか無かった…


     ※     ※     ※


「お話したい事が、あります…」

『アルゴ』と名付けられた宇宙船の出航準備が佳境に入ったある日、仙台湾の遥か沖合いに浮かべられた『アルゴ』の側に停泊する船の上で、ハンスはエイジに言った。

「私の正体は、宇宙人………『アミキソープ人』です…」


「そうか…」

エイジはそれだけ言った。


「気づいて…いらしたんですよね…!?」


「まあ、君の名前…『ハンス・シュミット』は、明らかに偽名だったからね………」


「私は『アミキソープ』の『第三勢力』…はっきり言って、最下層勢力の工作員です。地球人を『アミキソープ』の2大勢力…『南軍』と『北軍』にぶつけて同士討ちさせ、滅ぼして『第三勢力』が『アミキソープ』全土を征服する計画だったんのです…」


「君には宇宙人…『アミキソープ』への敵意を感じられたが、そういう事だったのか…でも、その話を私にしてくれたと言う事は…」


「…フランシーヌのお腹には、私の子供がいます…私には『アミキソープ』には家族も友人もいません…もっともこれは、『第三勢力』ではありふれた話なのですが…だから私は、地球人ハンス・シュミットとして、フランシーヌとお腹の子のために生きて行こうと思います。」

エイジと出会った頃の闇が、今のハンスからは失せていた。地球での、最上エイジとの、愛しいフランシーヌとの日々が、ハンスの心を癒して行った…

「それに最上さん…あなたは、『アミキソープ』への復讐の意思はありませんよね…!?」


「まあ…その通りだな…」

向こうも気づいていたか…エイジは苦笑した。

「私は『アルゴ』で仲間とともに『アミキソープ』へ行く。だがそれは、彼等を話し合いのテーブルに着かせるためだ。」


ハンスは再びエイジの手を握る。

「改めて、『アルゴ』は、その用途も含めて、最上団長、あなたに託します。そして私は、全ての件から手を引きます。」

「ああ!!」

エイジもハンスの手を握り返す。


「ハンス…3つ、聞いていいか!?」

「恐らく1つ目は、我々がSWDを起こした理由、ですよね!?」

「ああ…」

「エネルギー問題です。地球の石油を奪う目的だったんです。本当に申し訳ございません、こんな事のために…」

「何と言う事だ…我々には『バグダッド電池』という石油代替資源があると言うのに…」

「お恥ずかしい限りで…我々の技術は、そこに至れなかったんです…」

「…サンプルをいくつか手土産に差し出す事で、向こうの謝罪と賠償を引き出せるか…」

「2つ目は、『ウォッチャー』の事…」

「ああ…」

「彼も多分アミキソープ人ですよ。どっちの勢力かは知りませんが、私と同じ工作員でしょう。」

「人質…としての価値は薄そうだな。重用されていなさそうだし…まあ、連れていってみよう。」


「あと1つは、何でしょうか!?」

「私が乗っている『天使』だが、あれは一体何なんだろう!?」

ハンスは頭を振り、

「あれはアレッツの範疇を超えた存在です、私にも分かりません。SWDを起こした2大勢力のどちらかが試験的に持ち込んだ物でしょうけど…」

「なら、それも彼等に聞くとしよう。」


こうして、宇宙船『アルゴ』は、最上エイジと、久野シノブと、数百機のアレッツとそのパイロットを載せて、『アミキソープ』へと旅立って行った。


青年は行く、遥か星の海の彼方へ…

青年は征く、あの日、真っ逆さまに落ちて来た、星の欠片を携えて………


落星機兵ALLETS 完


     ※     ※     ※

     ※     ※     ※


シノブ:「…って言うのはどうでショー!?」

エイジ:「落ちてた『天使』アレッツなんて物騒な物、私が使う訳無いだろう!!」

カオリ:「ダイダが全ての元凶だけど、アユムも結構やらかしてるわね…」

アユム:「あのー…ダイダって、ガソリンをかけられて全身火だるまになっても死ななかったんですけど、中学の実験で使う薬品を浴びた程度で死にますかね…!?」


三人:「「「あ!!!」」」

シノブ:「じゃ…じゃあ…」


     ※     ※     ※


ガラガラガラガラ…ガチャーーーン!!


「い、今の音は何だ!?」「理科準備室からだぞ…」


薬品棚が倒れた音を聞き付けた2人の教師が駆けつけるが、


「う………っ!!」

2人は我が目を疑った。倒れた薬品棚の下からは、様々な薬品でグズグズに溶けた人間…ダイダの身体があった。しかもそれは、この様な姿に成り果てながらも、生きて動いていたのだ…


『グェフフフフフ…っ!!』


溶けたダイダから無数の触手が伸びる。


「う…うわあああぁぁぁっ!!」

逃げ遅れた教師の1人が触手に絡め取られ、消化されてしまう。そうこうしている内に、薬品棚の下から、無数の触手が生えた巨大スライムと化したダイダが這い出て来た。


『グェフフフフフ…』


「な…」「何だこりゃあ…うわぁぁぁ〜〜〜っ!!」


悲鳴を聞いて他の教師も駆けつけたが、ダイダの異様を見て慌てて逃げようとする。が、ダイダの伸ばした触手の餌食になった…


     ※     ※     ※


北海道上空を飛ぶ1機のヘリ。中にはグリーン迷彩服を着た最上エイジと久野シノブが向かい合わせで座る。2人とも腰には実弾を込めた銃を装備している。


『北海道の中学校に謎のバイオモンスターが出現した。』その通報を最後に、一切の連絡が途絶えてから3日…


ヘリの眼下には、静寂に包まれた中学校の校舎が見えた。


今、エイジとシノブは、謎のバイオモンスターの駆除という、命がけのミッションに挑む………


     ※     ※     ※


エイジ:「これでは作品のジャンルが違う〜〜〜!!」

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