Side A-6 星喰らいの赤色巨星
「『レッドジャイアント』って…何だかいじめっ子みたいな名前ね…」
リアシートのカオリが言うと、アユムが、
「レッドジャイアントは、赤色巨星の事ですよ。」
「ああ…あんたが言ってた、歳を取った赤い星の事!?」
話している間にも『レッドジャイアント』は『スーパーノヴァEX』の側に降り立った。
『武器を壊されたんだね、これを使うといいよ。』
そう言って『レッドジャイアント』はアレッツの全長より長い大砲を取り出して、『スーパーノヴァEX』に手渡した。愕然となるアユムとカオリ。
「これは『星落とし』…どうして君がこれを…!?」
「赤い『スーパーノヴァ』…『レッドジャイアント』…星つながりの名前…」
「赤色巨星…歳を取った星…年月を重ねたアレッツ…」
「もしかして、君は…」「もしかして、あなたは…」
すると『レッドジャイアント』のパイロットは苦笑して、
『ほら…敵を倒すよ。』
目の前の10000機の疑似ホワイトドワーフ軍団を指差す。
「う…うん…」「そうね…」
『ぼくの武器はこれだ。』
そう言って『レッドジャイアント』は、傘の様な武器を取り出す。『アンブレラ・ウェポン』の様だが、傘の部分は骨組みと縁しか無く、まるでビニール傘だ。傘を開く様にそれを展開すると、骨組みの周りの縁の部分が輪の形に広がった。
『「アクセラレーターサテライト」、展開!!』
パイロットが言うと『レッドジャイアント』の背中にあった12個の子機が前方に展開し、4個ずつ3組、傘型武器の前の射線上を取り囲む形で静止する。
『「星喰らい」、起動!!』
『レッドジャイアント』のパイロットが叫ぶ。武器の名前も星繋がりか…
『えーい!たかが1機増えた程度で、我々の数的有利に変わりは無いわ!!』
空中の宇宙船のアミキソープ人の叫び声が響く中、10000機の疑似ホワイトドワーフ軍団がザっ!ザっ!と進軍を続ける。それらに向けて、紅と蒼のアレッツがそれぞれ大砲を構える。
『守ろう!!あなた達の未来を!!ぼく達の未来を!!』
「シュートぉぉぉぉぉ〜〜〜!!」
『スーパーノヴァEX』の『星落とし』から光の柱が伸び、そして『レッドジャイアント』の『星喰らい』と呼んでいた兵器の、傘の外輪の中心から少し離れた空間には、どこかで見た黒い玉が発生する。
『何ぃっ!?地球人が何故その兵器を!?』
「君はどうしてそれを…!?」
アミキソープ人とアユムが同時に声を上げるが、黒い玉は徐々に長い棒状になって行くと、空中で4つ並んだ『アクセラレーターサテライト』の中心を通過する。黒い柱は更に伸びていき、2つ目、3つ目の『アクセラレーター』を通過。黒い柱は勢いを衰えさせる事無く伸び、やがて黒い柱の先端は、『星落とし』の光線と同時に10000機の疑似ホワイトドワーフ軍団の最前列に届き、ほぼ同時に最後尾までを貫く。
荷電粒子の奔流に焼かれるのと、一瞬で全身が消滅するのと、果たしてどちらがましだろうか。初撃で擬似ホワイトドワーフ軍団は1割が焼かれ、あるいは消えた。そのまま『スーパーノヴァEX』と『レッドジャイアント』は、光と闇の柱を、右と左に薙ぐ。2割、3割…10000機の軍団は中央から徐々に焼かれ、消え、『レッドジャイアント』の『星喰らい』が横に動くのに合わせて、12機の『アクセラレーターサテライト』も、追随して横に移動する。8割、9割…何千機もの機械の巨人が、わずか数秒で失われ、やがて、2機のアレッツの光と闇の柱が消える頃、疑似ホワイトドワーフ軍団は、跡形もなく消えていた。
『終わった…』『助かったのか、俺達!?』
地球のアレッツ乗り達は数秒の沈黙、その後、
『やったぁぁぁぁぁ〜〜〜!!』『見たか宇宙人どもぉぉぉ〜〜〜!!』
歓声が上がる。地球は救われたのだ。
『それじゃ、ぼくは帰るね。』
そう言って、『レッドジャイアント』は背を向け、再び生じた空間の歪みへと入ろうとする。
「待って!!」
アユムは『レッドジャイアント』を呼び止め、『レッドジャイアント』は歩を止める。
「魔力があまり保たないぞ!急いでくれ!!」
空間の歪みを造っている謎の装置を操作する、ライオスが叫んだ。アユムは言葉を選んだ上で、
「また、会える!?」
そう尋ねると、『レッドジャイアント』は、
『近い内にまた会えるよ。』
そう言い残して空間の歪みの中に入り、その空間の歪みも、徐々に小さくなって、やがて消えた。
そう言えば、『ブラックホール』から手に入れた黒い玉、解析中の兵器に名前をつけろと言われてたのを忘れていた。アユムは空白の入力欄に、名前を打ち込んだ。
“Star Sucker(星喰らい)”
『貴様!!地球人共!!ワタライ・アユム!!』
『どこまで私達の邪魔をすれば気が済むんだ!!』
『おのれ、おのれぇぇぇ〜〜〜!!』
空中の宇宙船から怨嗟の声がする。本当に耳障りだ…アユムは上空を睨むと、静かに言った。
「…僕は政治家でも軍人でもパイロットでも、ましてや正義のヒーローなんかでも無い。僕は僕の言葉しか言えない。だから、僕の言葉で言ってやる…
この地球はあんた達が滅茶苦茶にした物を、僕達が2年かけてゼロから…いや、マイナスからここまで造り直したんだ。それを壊し、奪おうとするのなら、あんた達にどんなどうしようもない事情があろうが、何よりも許しがたい害毒だ!」
そして叫ぶ。
「今、あんた達が味わってる理不尽は、あんた達が僕達にしでかした盛大な理不尽の報いだ!!
消えてなくなれ!この地球から!!僕達の明日から!!」
『ぐぅ…』
アミキソープ人の地球侵攻派は、ソラに連行されて、アミキソープへ帰って行った。奴等にはこれから裁判と刑罰の日々が待っているらしい。




