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Side A-5 異世界より渡来する

『下賤な地球人どもぉ!せいぜい無駄に足掻いて見せろぉ!擦り潰してくれるぅぅ!この、10000機の疑似ホワイトドワーフ軍団でなぁ!!』

勝ち誇ったかの様な、嘲る様な宇宙人の声が響き渡る。


幸い敵機の武装は通常のパーティクルキャノンやブレードのみで、『ブラックホール』が持ってた様な黒い玉を発生させる輪を持つ物はいない様だ。おまけに全部無人らしいので人殺しにもならないだろう。だが問題は数だ。


「あの敵を一掃する手段は、『星落とし(スターシューター)』しか思い当たりません。でも…」

「『ブラックホール』に、壊されちゃったのよね…」


星落とし(スターシューター)』は『雨刈り(レインリーパー)』と『雲晴らし(クラウドクレンザー)』を連結させる武器。だが、それらの武器は『ブラックホール』の苦し紛れの一撃で壊されてしまい、現在『ブリスターバッグ』の中で修理中だ。


万事、窮す………


     ※     ※     ※


フィリップ達異世界から転移して来た者達は、戦いの一部始終を、何も出来ずにただ見ている事しか出来なかった。


「スティーブ、ウィル…僕とモリガンは過去に2度、異世界転移させられた事があるんだ…」

フィリップがそう言うと、スティーブが、

「1度目の時は僕やテレサも一緒だったね。2度目は僕の時代に、父さん達が来たんだったね…」

「僕とエリナの結婚式の時だね…」

ウィルがそう続ける。彼等は全員若い姿のままだが、意識はいつの時代の物なのか、彼等自身にも分からなくなっていた。

「異世界転移は、僕達に何かをさせるために行われ、その目的が達成されれば、元いた世界に帰れるらしいんだ。1度目は角から炎を出す牛型モンスターとの戦闘だった。」

「2度目はエリナさんの誘拐阻止だ。なら…」

「…今回はアユム君を僕達が助けろって事!?」

「あの空から降ってきた方舟の中から出て来た鉄の巨人達は、この世界の外から、この世界を侵略するために来たらしいが…」

「鉄の巨人との戦闘なんて…僕達が介入する余地なんて無いじゃないか!!」


その時…


『皆さん…さん…さん………』


空の上から語尾をエコーさせて、女性の声がした。見上げるとそこには、胸元やお腹や股ぐらを際どい所まで露出させたセクシーな衣装を纏った美女が浮かんでいた。髪はオレンジのサイドポニーテールで、左目の目尻には泣きぼくろがついていた。


「ウズメさん!!」「またあのちじょか!!」


フィリップとモリガンが声を上げた。1度目の異世界転移の際に出会ってともに戦い、2度目の転移を行った張本人である、ウズメだ。1度目と2度目の転移の間に、天使の様な存在になったとか…


『これを…』


ウズメから光の玉がゆっくりと地上へ降りて来た。光が収まるとそれは最早何に使うのかすら分からない魔道具だった。


『フィリップさん、モリガンさん、これは、あなた達の子孫が作り上げた魔道具です…』


そう言われてフィリップはその魔道具に目を凝らす。

「表面に文字が書いてあるな…読めない文字もあるが…『アナザーワールドコネクター』………『異世界…連結装置』ぃ!?」


「「「!!」」」

その場にいた全員に衝撃が走る。特にモリガンとライオスは、心痛に胸を抑えた。


『その魔道具を使って、異世界から助っ人を呼び出して、アユム君達の危機を救ってあげて下さい…』


「だめぇぇぇ〜〜〜っ!!」

モリガンが大声を上げた。

「そのひとも、じぶんのせかいで、へいわにくらしてるの!むりやりつれてきちゃだめ!!」


(そうか…モリガン達エルフは、大昔に無理やり妖精界から連れて来られたから…)

フィリップは思った。するとウズメが、


『大丈夫です…その魔道具は、召喚だけでなく送還も可能です。それに、今から呼んでいただきたい相手には、アユム君達を助けたいという強い意志があります…』


「むぅ…ならいいか…」

モリガンは何とか了承してくれた様だ。


「俺からも質問いいか!?」

今度はライオスが手を上げた。

「フィリップさんの子孫は、一体何故そんな物を造ったんだ!?」


『邪な目的のためでは無い、としか言えません…』

ウズメにそう言われても、ライオスにはかつて、邪な目的で魔道具を開発した前科があり、易々と信じる事は出来なかった。


「ライオス…ウィルとエリナさんの子孫なら、お前の子孫でもあるんだぞ。信じてやれよ…」

スティーブに促されて、ライオスも10000機の疑似ホワイトドワーフ部隊を見つめ、

「…どの道、アユム君があいつらを止められなかったら、俺達も終わりか…」


「よし、じゃあやるか。みんな、魔力を僕に貸してくれ。ライオス君、君は魔道具の操作を。」

「分かりました。」

「ねぇ、痴女女神さん…何で私達を転移させた方法で、その強力な助っ人を直接呼ばなかったの!?」

テレサがそう問うたが、ウズメは、

『あなた達を呼び出した「胡蝶」は、私にも制御不能な所があるんです。その魔道具は、私はダンサーなので魔力が無いので使えません。あと、私は痴女女神ではありません…』


それでは、お願いしますね…そう言い残して、ウズメは消えてしまった。残された者達は、フィリップが両手を魔道具にかざし、モリガンと彼の子孫達が彼の両肩に手を置き、魔力を注ぎ込む。横から魔道具を操作するライオスが、


「ターゲットのマーカー、来ました!しかしこれは………うーん…この時この場所では無いという意味では、ここもある意味異世界か…」


「魔力充填完了!!ライオス君、やってくれ!!」


「…っ!!わ、分かりました!! 召喚っ!!」


魔動機が光り輝き、程なくして一筋の光が、虚空へと伸びる………


     ※     ※     ※


同時刻、『スーパーノヴァEX』のコクピット内…


「アユム…」

カオリが心細そうな声を上げると、アユムは、

「通常兵器で、やるしか無いのか…カオリさん…やっぱりあなたは、機体を降りてもらえますか!?」

「何言ってるの!?あんたを置いてなんて行けない!!」


その時…


『助けに、来たよ。』


虚空から声がした。見ると後ろの方から一筋の光が空中に伸びていた。光の出どころにはフィリップ達がよく分からない機械を操作していた。彼等が何かやったのか…!?光は空中に巨大な空間の歪みをが生じさせその歪みの中から、1機のアレッツが姿を現した。


「え………」「な、何………!?」


アユムとカオリは、いや、『ミレニアム』と山形の者達も皆、呆然とその機体を見つめた。空間の歪みから現れたアレッツは、彼等がよく知っている機体にそっくりだった。


鎧武者を思わせる装甲に、額には三日月型の前立て、そして左右のカメラアイの色が違う。左目がグリーン、右目がゴールド。そう、その機体は『スーパーノヴァ』に酷似していたのだ。だが、各部の形状は『スーパーノヴァ』から更に洗練され、何より機体色が違っていた。『スーパーノヴァ』が蒼色なのに対し、この機体の色は、真紅…


「赤い………『スーパーノヴァ』…」

アユムがそう漏らすと、赤い機体のパイロットと思しき人物は、


『「レッドジャイアント」…ぼくはそう呼んでる。』


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