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Side A-4 ブラックホール

コードネーム『WD-BH』…『ブラックホール』は、全身漆黒のボディに、金色のカメラアイを持ち、腹部のコクピットブロックが無かった。ホワイトドワーフの様だが、これまで遭遇した4機の多くとは異なり、人語を操り、ある程度の理性を保っている様だった。そして…両手に輪の様な物体を持っていた。あれは何だろう…その右手の輪の中心からやや離れた空間に、黒い靄の様な物が発生する。靄は段々濃くなって行ってやがて闇になり、『ブラックホール』はその右手を高く掲げ、

『ほぅらぁ!!喰らえぇぇ!!』

振り下ろそうとする…アユムは叫ぶ。


「みんな避けてぇぇぇっ!!」


ブ ン ! 『ブラックホール』の右手が振り下ろされ、闇の玉が放たれ、『ミレニアム』、山形連合軍のアレッツは蜘蛛の子を散らすように散開する。その中央に放り投げられた闇の玉が地面に穴を穿つ。轟音も爆発も起きず、深い深い斜めの穴が地面に残る。

『何だ………これ』『もし、これに当たったら…』『…佐竹みたいに、消えちまうのか………!?』

連合軍に戦慄が走る。


『なぁに逃げてんだよぉ、お前らぁ〜〜〜!!』

『ブラックホール』は左手に作った闇の玉を放り投げる。次は右!また左!!それを必死に避けるアユム達。


『何ビビってんだぁ、地球人どもぉ!!命なんて、死なんて、死んじまったらどうって事無かったぜぇぇ〜〜〜!!』

いつの間にか『ブラックホール』は一番目立つアユムの『スーパーノヴァEX』を標的に定めて来た。


『てめぇそれ、操縦桿とペダルで動かしてんのかぁ〜〜〜!?俺にとっちゃぁこの機械の体が俺の体だから、文字通り手足みてぇに動かせるぜぇ〜〜〜!!』


「アユム!!な、何なの!?あの黒い玉!!」

コクピットのリアシートのカオリが叫んだ。

「あれに触れたら何でも消えてしまうみたいですね…質量を持った物体も、パーティクルのエネルギーも…!!実際、パーティクルキャノンの光弾も相互干渉しないで一方的に消されましたし…」

「な、何それ!?あいつが名乗った通りブラックホールだとでも言うの!?」

「そんな物、地球上で使ったら大変な事になりますよ。ブリスターバッグやらアレッツジェネレータやら、元々アレッツは質量保存則やエネルギー保存則を無視してる傾向がありますから、無から有を産み出せるなら、逆に有を無に帰す事も出来るんでしょうね…」

アユムが言ってる間にも『ブラックホール』の両手から闇の玉が放たれる。

「あの兵器は非合理的な形をしてますね。例えばパーティクルキャノンも、粒子を加速するために銃身があるのに、あの兵器には無い。多分、銃身で加速しようとしたら、銃身そのものも消えてしまうんでしょうね。だからあの黒い玉は、輪の様な兵器から離れた空間に発生して、射出後も加速のしようが無いからアレッツの腕力で投擲してるんです。だからパーティクルキャノンの粒子加速器よりも弾速は遅いですよ…」

「だからって…当たっただけで問答無用で消されちゃうのは変わらないでしょう!?」

するとアユムは声を低くして、

「………僕にも一つだけ、どんな敵でも問答無用で倒せる方法があります…」

カオリも声を潜め、

「アユム………それって…」

『なぁにくっ喋ってんだぁ!?ほぉらぁ!!』

黒い玉が『スーパーノヴァEX』の肩アーマーを掠め、装甲がやや削れる。

「うわぁぁぁっ!!」「きゃぁぁぁっ!!」

悲鳴を上げる2人に『ブラックホール』は嘲笑う様に、

『死を受け入れろやぁ!!お前もホワイトドワーフになればワンチャン強くなれるかもしれねぇぞぉ!!俺だってうだつの上がらねぇいちパイロットから死神様になれたぜぇ!!』

「ごめんなさいカオリさん、こんな事に巻き込んで…もう、こうするしか無いんです。あんな奴が相手じゃ、僕のアレッツのリアシートが、地球で一番安全な場所になってしまいました…」

カオリは苦笑して、

「ほんと…あたしもとんでも無い男を好きになったもんね………」

『いい加減に死ねよおらぁ!!俺は死んでんのに、お前らなんで生きてんだよぉ!!』

『ブラックホール』が再び右腕を上げ…


「カオリさん、あいつに触れられますか!?」「やってみる!!」

アユムはカオリに『スーパーノヴァEX』全身のコントロールを譲渡する。


『おぉぉりゃぁぁぁっ!!』

『ブラックホール』の右腕が振り下ろされる永遠と思われる数秒が流れ…

『スーパーノヴァEX』の両腕が、頭上で手を合わせる様に動き…


ガ シ っ!! 『スーパーノヴァEX』の両腕が、振り下ろされた『ブラックホール』の右腕を掴む。


「取ったぁ!!」

「行きます!!」


アユムはシート右のレバーを掴んで起こし、親指のボタンを押しながら前にスライドさせる。


「「インビジブル・コラージ!!」」


次の瞬間、『スーパーノヴァEX』は消えた。いや、肉眼にもセンサーにもレーダーにも検知出来ないくらい小さくなったのだ。


『何ぃっ!?ど、どこへ行ったぁ!?』

次の瞬間、『ブラックホール』の右腕が肘から切れる。

『ぐぉ!?』

後ずさる『ブラックホール』だが、今度は右肩が落ちる。腰のパイプ!!右足!!当たった標的を消してしまう凶悪な兵器を持っていようが、小さくなって機体内を破壊しながら動き回る敵にはかなわない。

『畜生…こ、この俺が………』

全身をバラバラにされる『ブラックホール』。最後に首に徐々に切れ目が入って行き…


『調子に…乗んなおらぁ!!』

左腕の黒い玉を、切れかかっている自身の首に叩きつける!!


その瞬間、『スーパーノヴァEX』は『インビジブル・コラージ』を解除!何も無い空間に突如、さっき消えた蒼いアレッツが現れた。内部破壊に使っていたアンブレラウェポン、『雨刈り(レインリーパー)』と『雲晴らし(クラウドクレンザー)』で黒い玉を受け止め、中程から消滅する。そして、『ブラックホール』は自身の黒い玉で頭部を消し去り、


(これで………終われ…る……)


『ブラックホール』の意識は消滅した。


『倒した………!?』『か………勝ったぁ!?』

周囲のアレッツから歓声が上がる。アユムは地面に転がっている『ブラックホール』の右腕を拾い上げる。その手には黒い玉を発生させた『輪』も持ったままだ。ピっ…アユムはコンソールを操作すると、”Weapon Analize Start(武装解析開始)”の文字と、長いバーが現れる。その下に現れた”Enter This Weapon’s Name(名前を入力して下さい)”の文字とその下の入力スペースに、名前をどうしようかと思ったその時…


ゴ ォ ォ ォ ォ …!!


天から轟音が響く。大気との摩擦で表面を焼きながら、巨大な直方体がいくつも降りて来て、ズーーーン!!着地する。続いて空の上に巨大な楕円体が現れる。あれは…アミキソープの宇宙船!?


『「WDーBH」を倒したからと言っていい気になるな、地球人ども!!』


楕円球の宇宙船から声が発せられると、先に降りた直方体の側面が下へと開き…中から何十機ものアレッツが現れる。いずれの機体も腹部のコクピットブロックは金色に輝いていた。それが、全ての直方体から現れた。あれは、アミキソープ人の惑星侵攻用の強襲揚陸艦なのか!?


『我々には戦力が無いのだ。先の「WDーBH」と、こういう物しか用意出来なかった。「WDーBH」の戦闘データをブランク体のアレッツにコピーした、疑似ホワイトドワーフが………10000機だ!!』


ザっ!ザっ!! 蟻の巣から出てくる無数の蟻の様に、後から後から出て来る疑似ホワイトドワーフ軍団を前に、さっきまで勝利に酔っていた地球のアレッツ乗り達は戦慄した。頭上の宇宙船からは勝ち誇った様な声が聞こえる。


『地球人どもに死を!!この星は今日から私達の物だぁ!!!』


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