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Side A-2 わたしはかおりちゃんとおはなししました

同時刻、アユムの工房…


「アユムの様子が、最近変なんですぅぅぅ〜〜〜!!」

「え〜〜〜〜〜っ!?」


カオリの叫びに、モリガンも声を上げた。カオリはアユムと婚約した、というおめでたい話だったはずが、急に雲行きが怪しくなった。


「あいつ最近、あたしに隠れてコソコソ何かやってるみたいなんです!!毎日どこかに出かけて遅くまで帰って来ないし…」

「そ、それはあゆむくんのおしごとが、おそとをまわるしごとだからでしょう…!?」

「工場に帰っても何かやってるんです。あたしが覗こうとすると隠すんです!!」

「あ、あゆむくんのおしごとは、わたしたちがみてもわからないものだからじゃないの!?」

「他の女の家から出て来た所を見た人がいるんですぅぅぅ〜〜〜!!!」

「えええええ〜〜〜〜〜っ!?」

さっきまで垂れ下がっていたモリガンのエルフ耳が、ピンと上に立った。


「ぎっどアユムもあだじみだいな暴力女よりああいう女らしい女の方が好きなんだぁぁぁ〜〜〜」

カオリは滝の涙を流して号泣し、工場内は腰まで浸水した。水に弱い機械もあるはずなのに大丈夫なのだろうか。

「か、かおりちゃんおちついて………」

モリガンが必死で宥めると、カオリも泣き止み、水も引いた様だ。


「あ、あのねかおりちゃん、あゆむくんはそういうことをするこなの!?」

「………あいつ、人付き合いが苦手だって言いながら、何だかんだで女に優しいんです…」

「う〜〜〜ん…」

モリガンは言葉に詰まった。フィリップはモリガン一筋だったから、自分の経験が役に立つのか…


「あのねぇ、かおりちゃん…」それからモリガンは、窓の外の空を眺めながら言った。「…わたしたちがのってる『つぁうべらっど』、あれ、ふぃりぽんがつくったものなの。」

「ええ〜〜〜っ!?」

カオリは大声を上げた。ファンタジー世界に魔法で動くバイクなんて変だとは思っていたが、まさかあの青年自身が作った物だったなんて…

「…ふぃりぽんは『つぁうべらっど』をつくるおかねやざいりょうがほしくてぼうけんしゃになって、そしてわたしは、いきわかれのおとうとをさがすために、えるふのおうこくから、ふぃりぽんのいるくにに、ぼうけんしゃとしてきたの。」

「………」

「……わたしがなかばおしかけるかたちで、ふぃりぽんとぱーてぃーをくんだけど、おたがいのふかいじじょうははなさないまま、なんにちもなんにちもすれちがって、わたしはおとうとのてがかりをさがそうとして、わるいひとたちにだまされて、あぶないめにあって…」

「モリガンさん…」

「………でもそんなとき、ふぃりぽんはできたばかりの『つぁうべらっど』にのって、わたしをたすけにきてくれたわ…」


それからモリガンは、ぎゅっとカオリの両手を握り、


「だからかおりちゃんも、あゆむくんをしんじてあげて。あのこもきっと、あなたのために、そのなにかをしてるはずよ…」

「…あたしも…危ない目に遭った所を、アレッツに乗ったアユムに何度も助けられました…」

「ほらごらんなさい。ちゃんとはなしあって。さいきんなにしてたのってきいて、ほんとのことをはなしてもらいなさい。」

「………はい。」

カオリの心が、少し軽くなった気がした。


「…それでねー、じつはそのころ、ふたりともあたらしいよろいをつくってたんだけど、なんとふたりとも、じぶんのじゃなく、たがいにあいてのよろいをちゅうもんしてたのー!!ろまんちっくでしょー!!」

顔を上気させて、細長い耳をピコピコ上下させるモリガン。喜んでるのか!?だがカオリは急に顔を曇らせ、


「え…!?それってもし、どちらかが自分の鎧を作ってたらどうなったんですか!?」

「あ………!!」


「あと、似た様な話はこっちの世界にもあるわよ。タイトルは、『けん』…」

「かおりちゃんそのさきいっちゃだめ〜〜〜!!!」


     ※     ※     ※


同時刻、広瀬川河畔…


アユムは河原を歩き回るフィリップに言う。

「…正直、僕も不安なんです……」

「分かるよ、そういうの…お!」

フィリップの両手の針金が左右に開き、フィリップはしゃがんで足元の石を拾ったその時、


「ん!?あれは何だ…!?」

アユムの声にフィリップは空を見上げた。空色の中に白い線が見える。飛行機雲…いや、今の地球に誰が飛行機を飛ばせると言うのだ!?段々こっちに近づいて来る。キィィィィ…怪音が段々大きくなっていく。白い線の先端も段々大きくなっていく。白い線…いや、その先端にいるのは、紫の魚だ。逆噴射で落下速度を落とそうとしている様だが、それでもかなりのスピードで、河原に落ちた。


ド ン!!「うわっ!!」「ぐわぁ!?」

だがそれでも止まる事も無く、河原の石や砂利をえぐって滑り続ける紫の魚。


ド、ド、ド、ド…ド………


ようやく止まった。


「あのアレッツは…!!」「アユム君!!もしかしてあの魚も、君が乗ってた鉄の巨人と同じ…」

紫の魚…可変飛行アレッツへと駆け寄るアユムを追いかけるフィリップ。魚の腹に着いている立方体と球が組み合わさった様な物体から、身長2m近い大男が現れる。


「ソラ…さん…!?」


かつての仲間にして、アユムの旅を何度も助けてくれた人物、その正体はアミキソープ人の網木ソラ。だが今の彼には、アユムが知っている余裕に満ちた笑みはなく、疲労困憊と言った体だった。


「どう…したんですか、ソラさん!?」

アユムは問う。自分の星に帰ったまま、二度と会えないと思っていたので、再会の喜びよりも驚きの方が強い。


「………ごめん…なサイ…」

ソラはようやくそう言った。


「何で謝るんですか、ソラさん!?」


「止めれ…なかっタ………」


「…何の事ですか!?」


「奴等が………来ル…」


「奴等って…誰ですか!?」



「『地球………侵攻派』!!!」


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