25ー14 エクシード・ザ・マイス
同時刻、福島…
エイジの言葉を受けてレオは叫んだ。
「待てよ!!『スーパーノヴァ』がアユムの手元に戻ったかもってのは分かった。でもそれがどうしたってんだ!?民間人がロボットで武装してるなんて、今の世の中じゃありふれてるだろ!?そんな目くじら立てる事じゃ…」
だがエイジは顔を強張らせたまま、
「レオ君…君のアレッツのレアリティは、今、何だ!?私のはMだ。」
レオはその言葉の意味を計りかねたが、
「…俺のも今、ミシカルだ。あんたが『北斗七星作戦』って大層な名前を付けた作戦で、何百機ものアレッツを倒したお陰で、SSRを超える事が出来たぜ。でもそれが今、どんな関係が…!?」
「アユム君の『スーパーノヴァ』も、Mだったはずだ。『天使アルゴ』との戦いに挑む頃には。」
「まあ、そうだろうな…」
「…マテリアルとは、アレッツの有限のリソースの有効活用のために、より大きな戦績を残した機体により多くの資源を供給するシステム…」
「だからそれが…」
「なら………『天使アルゴ』を単機で倒した『スーパーノヴァ』には、どれくらいのマテリアルが供給されたのだろうな!?」
天幕の外は日が傾いて段々暗くなって来ていた。『天使アルゴ』…規格外のアレッツである『天使』と、宇宙船『アルゴ』の融合した形態。『天使』撃破も宇宙船の単機撃破も、それだけで大きな功績だ。それをシステムが正当に評価して、相応しい量のマテリアルが『スーパーノヴァ』に支給された…!?
「な…何言ってんだ!?現実はゲームじゃねえ。無限に経験値を稼げば、無限にレベルアップ出来るってものでも…」
「例えば石斧と弓矢で戦う原始人が核兵器をその存在を想像する事自体不可能な様に、ミシカルまでしか知らない私達には、アレッツはミシカルを超えて更に強くなれる事を知らないだけなのかもしれんぞ。」
レオは、背筋に冷や汗を感じた。
「アユムの機体が………俺達の機体よりもずっと強くなってるって言うのか…」
エイジは続けた。
「アユム君の機体には、『インビジブル・コラージ』の他にも、強力な兵器があったな…」
「ああ、大量の『コピー天使』をなぎ倒し、『天使アルゴ』の表面に大穴を開けた大砲か!?」
「『星落とし』…アユム君はそう呼んでいた。」
「何とも大仰な名前だな…だが、名前負けしてるとも思えねえぜ…」
「『星落とし』は、大量のエネルギー消費、連結部分の強度、発生する熱の冷却に問題があるため、事前に十分な準備をした上で、短時間しか使えない…アユム君は、そう説明していた。」
「なんだ、なら…」
「…だがそれは、『スーパーノヴァ』がミシカルだった時の話だとしたら…!?」
「な………!!」
「ミシカルを超えた今の『スーパーノヴァ』なら、『星落とし』を常時使用可能なのだとしたら………!?」
ゴクリ…レオは生唾を飲み込んだ。
「…そんな物騒な物を、物騒な機体を、自警団でもない、いちエンジニアが持ってるってえのか………!?」
エイジは天を仰ぎ、呟いた。
「それこそが、私がアユム君を首脳会談に呼んだ2つ目の理由だ。今述べた事の事実確認をし、くれぐれも軽率な使用を控える様に警告するために、な…」
※ ※ ※
同時刻、仙台市南部、名取川河畔…
爆発、超絶、探検家、熟練者、そして、超越、未知…それら諸々の意味を込めて、アユムは戻ってきた愛機に名付けた。
『スーパーノヴァEX』、と…
今、『スーパーノヴァEX』の腕の中で、『雨刈り』と『雲晴らし』は連結され、更に後部にカウンターウェイトを兼ねたエネルギーコンデンサを接続した。超限外荷電粒子兵装、『星落とし』…濃紺色のアレッツは、その長大な兵器を持ったまま、ふわりと空に舞い上がる。漆黒のホワイトドワーフも、肩から翼の様な『天使アルゴ』の肩パーツを形成し、アユムを追って宙に上がる。
(それでいい、追いかけて来い、そして追い抜け………空中なら、射線の向こうの何かに当たる危険性は無い…)
『グェFUFUFU…』
アユムの想いを知らず、嘲笑う様にアユムを追い抜いて上へ上がるダイダ機。今だ!!『スーパーノヴァEX』は『星落とし』をダイダ機に向けて構え、コクピット内のアユムはトリガーを引く。
「シュート!!」
カ っ!! 銃口から長く太い光の柱が伸び、ダイダ・ホワイトドワーフの機体に浴びせられた!!




