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25-13 弔い合戦

『………やっと起きたか、この寝ぼすけ!!』


『全く…あたしが触って欲しくないんだったら、自分で片付けなさいよね、この部屋…』


いつもの、僕の部屋の風景…


『うん知ってる、あんたが夜遅かったの。お陰であたしも寝不足。』


『お客さん、来てるのよ。だから早く支度して、アユム!その前に軽く食べれる物用意しといたから食べてって。明日は臨時休業にするってみんなに言ってあるから、今日は大勢来るわよ。』


いつもの、食卓、いつもの、僕の日常…


『いつも言ってるけど、報酬交渉になったら、あたしも呼びなさいよ。あと、車は新規の注文があるまで新しいの作っちゃダメよ。せめてあの4号車を売ってからにしなさい。』


『あ、アユム、ちょっと待って……もう…こんな物付けて、お客さんの前に出るつもり!?』


分かってた。カオリさんはいつでも、僕を気遣って、僕のために思ってくれてた…


『行ってらっしゃい、頑張って。あんたはすごい子なんだから…』


もう戻らない、日々…カオリさんとの、日々………


     ※     ※     ※


「カオリさぁぁぁぁぁん!!!」

倒れたカオリの側に駆け寄るアユム機。グェハハという不気味な笑い声を上げながら殴りつけようとするダイダ機の拳を無造作に掲げた左腕の小型盾で防ぎながら、アユムはカオリをコクピットに入れ、後部座席に座らせる。

「もう少しだけ、そこで我慢してて下さいね…」

後ろの物言わぬカオリに声をかけ、前を向き直り、

「いい加減鬱陶しいぞ、お前!!」

ダイダ機の拳を振り払う。

(カオリさんとの日常…こいつが奪った…こいつが、壊した………)

『スーパーノヴァEX』は武器を構える。左手に『戦神の敵(アンタレス)』!!右手に『美神の魚口(フォーマルハウト)』!!傘を象った、銃にも剣にもなる武器、『アンブレラ・ウェポン』だ。この武器で、カオリさんの弔い合戦だ!!


     ※     ※     ※


「うぉぉぉぉぉっ!!」 ザ シュ っ!!

『スーパーノヴァEX 』は『美神の魚口(フォーマルハウト)』でダイダ機の左腕を斬り落とす。ガー、ガー…さっきからワーニングが鳴っているのが気になるがまあいい。このままダイダ機を切り刻んでやる…

だがダイダ機は斬られて地面に転がる自身の腕をつま先で蹴り上げると、肘から先が無くなった左腕を掲げる。肘の先と、宙を舞う左腕の切り口から、ミミズの様なパイプや、枯れ枝の様なフレームが何本も何本も伸びると、それらは手をつなぐように空中でくっつき、互いに引き合い、動画の巻き戻しの様に元に戻った。


「く…くそっ!!」

ザク、ザクっ!! 『スーパーノヴァEX』はダイダ機の左腕を、右太腿を、パイプ4本で上半身を懸架している胴を斬りつける。が、やはり斬った先からパイプやフレームが伸びて元通りに繋がってしまった。左腕に至っては、肘から伸びたパイプやフレームが、見覚えのある物を象った。骨のような白い腕。手首に指は無く、先端のスリットはブレードとキャノンの射出口だ。

「その腕は………『天使アルゴ』!?」

『グェフフフFUFUFU(フフフ)…』

ダイダ・ホワイトドワーフが不気味な笑い声を上げる。これこそ『天使アルゴ』から唯一習得に成功した機能。『アルゴ』を魔改造し、『コピー天使』を大量生産するために用いられた、アレッツ由来の素材のマテリアル還元。その技術の下位互換機能、機体の自動修復機能だ。新宿を去る際に『天使アルゴ』をマテリアル還元して持って来たため、修復素材はほぼ無限にある。


さすがにアユムも相手が無限の再生能力を有する事に気づいたが、さっきから鳴っているワーニングが気にかかる。見ると、『スーパーノヴァEX』の小型盾の真ん中に大きな穴が開いていた。原因として考えられるのは、さっきダイダ機の右拳で何度も殴られた時だが、あの程度で穴が開くはずが無い。しかも穴の様子が変だ。衝撃による変型の跡も、荷電粒子兵器によって焼けた跡も無い。まるで盾を形成する物体そのものが消えた様な…

『グェFUFUFU(フフフ)…』

ダイダ機が掲げた自身の右手の指に、濃紺色の何かがまとわりついていた。不定形のそれは徐々に形が定まり、指先が鈎爪の様に長く伸びた。あれはまさか…『スーパーノヴァEX』の、盾か!?

「他の機体も吸収出来るのか!?」

ザクっ!!

ダイダ機は鈎爪でアユム機を引っ掻こうとし、アユム機は慌てて体を逸らす。避け際に『スーパーノヴァEX』は両手のアンブレラウェポンで斬りつけるが、ダイダ機の表面がスライムの様に歪むと、二振りの傘を包み込む。アユム機は咄嗟に傘型武器を手放すが、アンブレラウェポンはそのまま溶けて吸収されていった。


「まずいぞ………」

コクピットの中のアユムは思った。あの機体相手では、『インビジブル・コラージ』は使えない。小さくなって中に入ったら、逆にあっという間に取り込まれてしまう…

(近接戦闘はだめだ…とにかくあいつに触れないようにしなきゃ…銃による遠距離からの攻撃…だめだ。きっと撃った先から回復されてしまう。なら…)


「修復速度を超える大ダメージを、全身に長時間与える!!」


『スーパーノヴァEX』は二振りの武器を構えた。右手にアンブレラ・ウェポン(ガトリング)『雨刈り(レインリーパー)』!!左手にアンブレラ・ウェポン(スナイパー)『雲晴らし(クラウドクレンザー)』!!


それら二振りを横に並べる様に構える『スーパーノヴァEX』。『雨刈り(レインリーパー)』の銃口と、『雲晴らし(クラウドクレンザー)』の後部から、ジョイントの様な物が伸びてきた…

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