24ー2 旅の終わり
西暦2053年、11月下旬、
『ユニバレス連合』、旧『ユニヴァース村』…
周囲に潰れた家屋が並ぶ中で、1軒だけ潰れずに残った家、崩れかけたブロック塀には、『池田』と表札がかかっていた。
その家から、1人の中年女性が出てきた。池田さん…アユムがかつてここを訪れた時、バグダッド電池の設置工事を行ったお宅で、池田さんは今も、『ユニバレス連合』自警団で炊事等を担当する職員をしている。
ふと、彼女の目の前に、2人の人影があった。面識のある顔だ。
「渡会君、相川さん………」
渡会アユムと相川カオリだった。東京へ行ったと聞いたが…そもそも、自警団じゃなく、どうして私の所に来たのだろう…
池田さんが怪訝そうな表情をしていると、アユムが真剣な面持ちで、
「池田さん………あなたは、佐藤さんですね………!?」
池田さんは意味を図りかねていたが、ああ、この表札の事ですか、と言った上で、
「はい…池田は私の旧姓で、ここは私の実家です。主人の姓が佐藤なので、今の私の姓も佐藤です。」
池田さん………佐藤さんは言った。
「佐藤さん…あなたはSWDの前日、大宮で東北新幹線を降りて、翌日、新幹線で宇都宮に来られましたね!?」
「はい…私の夫は埼玉の人間なので、お盆休みの初日は夫の実家で過ごし、翌日移動して、私の実家に来て、そこでSWDに遭遇しました…」
「ちなみに以前、もう1人の佐藤さんが、『お互い結婚してややこしい事になった』と仰ってたのは…」
「お互い結婚して、同じ佐藤姓になったという意味でしょう。」
「もう1人の佐藤さんが、あなたの事を『スイちゃん』と呼んでたのは…!?」
「私の名前…ヒスイ、佐藤ヒスイです…」
「あなたは、仙台から東北新幹線に乗られましたね…!?」
「はい………」
「あなたには、娘さんがいらっしゃいますね…」
「はい…あなたと丁度同じ年頃の…」
「その人の名前は………『ルリ』…」
「はい…」
「仙台八高、2年B組の、佐藤ルリさん…」
「……………はい。」
「これに………見覚えはありませんか…!?」
アユムは胸元からラピスラズリの入ったお守り袋を取り出す。その拍子に触れた自分の心臓は、うるさいくらいにバクバク言ってた。
「!…っ!! そ、それは、私がルリにあげた物です!!そ、それをどうしてあなたが………!?」
やっぱり…ヒスイとルリ、宝石つながりか…
「佐藤さん………僕はSWDの直前に、ルリさんから告白を受けました。もう一度ルリさんに会って、告白の返事をするために、僕はずっと旅をしていたんです!!」
「まあ………1年の年が明ける頃から、あの子の様子がおかしかったから、好きな人が出来たんだろうなと思ってたのよ。そう、あなただったのね…」
「ルリさん………ここにいらっしゃるんでしょう!?会わせていただけませんか!?」
「まあ本当に何て事…!?どうしましょう………!!」
※ ※ ※
街外れの丘の上に連れてこられた2人、目の前には、街を見下ろす様に建てられた、小さな十字架………
「………へ!?」




