22-6 因縁の対決
ほぼ同時刻、レオは脱走した自分の手下に足止めを食らっていた。根古田機はパーティクルキャノンを乱射し、レオ機を翻弄する。
『どうっすかあ!?俺は本当は、こんなにも強いんすよぉ!!なのにあんたは、何もかも自分一人で決めて、たった一度の失敗で、俺をアレッツから下ろして、裏方に回して…!!』
レオ機はそれを躱しながら、
「へっ…アドミラルってのは、随分気前がいいんだな…」
根古田機の背中、両肩の辺りには、口にパーティクルキャノンが着いた虎型の頭部が左右2機増設されていた。恐らくあれを運用するために、ジェネレータとコンバータも高出力の物に換装したのだろう。今回の協力に際し、アドミラルからマテリアルの供与があったはずだ。
『俺だって、あんたみたいに強力なアレッツにさえ乗れば…!!』
「てめえ…んな事が言いたくて、群れを抜け出したのか!?」
『うるさぁい!!あんたの親分面にはもう、うんざりなんすよぉ!!』
根古田機はレオ機の首筋に噛みついた。
※ ※ ※
同時刻、後ろ脚を撃たれたハジメ機に、ヒゲの元自警団長機がさらに畳み掛ける様に攻撃を加える。武器は最早模擬弾なんかじゃない。グリップが上に着いた逆手持ち式のアンブレラウェポン。恐らく飛行ユニットのレシピと共に、ソラからアドミラルに流出した物を、彼の機体に実装させたのだろう。それを両腕に2丁…
『俺は正しかったはずだ!俺は利口だったはずだ!!
「スーパーノバ」が現れて、ホワイトドワーフに続いて「天使」まで襲ってきて、最後に「ジョシュア王国」が攻めて来て、思ったんだ。
「ああ、宇都宮はもうおわりだな」って…
だから俺は自警団を辞めた。これから栃木は群馬の属国になって、自警団員は見せしめに公開処刑にでもされると思ったからな…
だが実際はどうだ!?あれだけいがみ合ってた2つの村は1つの国になり、群馬の連中はあっさり引き揚げて行って、自警団員は国の守護神と崇められ、その拍手と歓声は、畑の隅で泥にまみれる俺の下へも届いていたぜ!!
その称賛は…本来、俺が受けるはずだったものだ!!』
元自警団長機の攻撃を、ハジメ機は躱そうとするが、元々鈍重で近接戦に向いていない上、脚を撃たれた馬の後ろ半身が重荷になり、次々と被弾する!!
「きゃあああぁぁぁ~~~っ!!」
※ ※ ※
同時刻、レオとハジメの前に因縁の相手が現れたのを通信機越しに聞きながら、自分の因縁の相手…元中隊長機に、アカネは忌々しそうに、
「…で、貴様も私への怨みを晴らしにやって来たのか!?」
すると元中隊長は、
『はっ?馬鹿にしないで下さいよ。私は群馬がどうの北関東がどうのなんて小さい事は、もうどうでもいいんですよ!!』
「…では何がしたいんだ!?」
『私はねえ、アドミラルと一緒に広い宇宙に行って、宇宙人どもとの戦いで武名を上げてやるんですよ!!
私には青雲の志があるんです。山の中の片田舎で燻ってるあんたとは違うんですよ!!』
(要するに、私から逃げたのか…)アカネは思った。元中隊長機はパーティクルキャノンを構える。
『アドミラルは私を正しく評価して下さいましたよ。「君には期待している。舞鶴アカネ機の首を取った後に、「アルゴ」に乗船したまえ」って…いやあ、能力のある者は辛いですよねえ…』
体のいい戦力外通知だ。元中隊長は自棄になって叫ぶ。
『本当にあなたは、なんでいつも、私の邪魔をするんですかぁぁ!!』




