22ー4 狙撃
迎撃部隊を全滅させ、無人のお台場を進む7機のアレッツ。
行く手を遮る者は誰もいない。情報を共有されている、ハジメ機のレーダーにも、機影は見当たらない。アドミラルは宇宙人の星にたどりついて、奴等を壊滅させる事が目的である以上、戦力の大多数を『アルゴ』に乗せなければならない。もうこれ以上、アユム達の迎撃に戦力を割けないはずだ。
発進を強行する『アルゴ』の横腹に、エイジ機の超長銃身パーティクルキャノンで狙い撃ちして終わり。
そう思っていたその時、
「………!?」
エイジは自機のモニターの一角が微かに輝くのが見えた。反射的に機体を捩ると、エイジ機の迷彩塗装の右肩装甲が弾け飛んだ!!
ガ ン!「ぐわぁ!!」
サブウィンドウがガーガーとアラートを出している。右腕、エネルギー経路喪失…!?
「最上さん!?」「最上!?」「敵襲っスか!?」「どこから…!?」
狙撃されている…まずい…固まっていては………
「散れーーーーーっ!!」
エイジの号令に、レオ、ソラ、アカネ、そしてハジメの機体が散開した。
エイジ機から離れながらハジメは、
「どこ!?どこから撃たれたの…!?」
「ハジメちゃん、落ち着いて!!」
「どこだ…!?そんな…アレッツなんて…そんな大きな物どこにもいない…」
言いかけてハジメは気づく。レーダーの精度を切り替えると…非常に小さいが反応があった。
「目標、12時の方向、遥か上方!!」
ハジメが告げる方向には、件の巨大展示場があり、その象徴である逆さピラミッドの屋上には…
こちらを狙う銃口が見えた!!
ザっ!!通信機に割り込む者がいた。
『…最上隊長…俺は最初っから、あんたの事が大っ嫌いだったんだ…』
エイジにとって聞き覚えのある声だった。
『御大層な理想を振りかざして、そのくせ何一つ実現出来ず、高校生のアレッツ乗りも撃てず、米沢と寒河江も、あんたの判断ミスで死んだ。なのにあんたは、使命からも責任からも逃げて、長野の山の中に籠もって部下の女といちゃいちゃ…おまけに明らかに地球侵略の意思のある宇宙人に、報復を恐れてまたも何もしない腰抜け野郎!!』
キラッ!! 逆さピラミッドの上の銃口が煌めく。
『だが…アドミラルは違う!!あの人なら、俺達を正しく導いてくれる!!』
(酒田………!!)
※ ※ ※
その時、エイジ機から離れたレオ機は、展示場…光弾が飛んできた方向へとホバリングで移動していた。酒田機の超長銃身パーティクルキャノンのスコープもそれを捉え、照準をそちらへ向けようとして…すぐにエイジ機の方へ向き直る。
あっちには、あいつが向かったらしい…
※ ※ ※
タァーーーン!!「ぐぉ!?」突然、物陰から銃撃され、レオ機が飛び退く。そこから現れたのは、レオ機とよく似た、虎型四脚獣型アレッツ。
『根津が死んだっすよ。銃で頭を撃たれて、化け物に成り下がって、最後は俺達の手にかかって…』
通信機から聞こえてきたのは、これまたレオが聞き覚えのある声。
『いくら野盗を辞めて自警団になっても、俺達の末路は、犬猫みてえに惨たらしく死んでく運命なんだ…それもこれもみんな、あの宇宙人どものせいっすよ!!』
ガ オ オ オ オ オ!! 虎型アレッツが吠える。レオは呻いた。
「根古田………」
※ ※ ※
一方、後退したケンタウロス型アレッツのコクピットでハジメはレーダーを睨んでいた。遥か前方の、酒田機の反応を…
(何か気になるなぁ…この反応…)
タァァァァァン!!
銃声が聞こえ、ハジメ機の右後ろ脚は、へし折れた。
「き…きゃあああああ〜〜〜!!」
崩れ落ちるハジメ機に、容赦なく更にパーティクルキャノンが撃ち込まれる。左後ろ脚、馬体…ハジメ機に次々と穴が開く。物陰からパーティクルキャノンを構えたミッドナイトブルーのアレッツが出て来る。酒田機に気を取られて、接近を許してしまった!
『手前が自警団なんて認めねえからな…薄汚い廃墟暮らしのガキが!!』
パイロットは、旧ユニヴァース村の、ヒゲの元自警団長!!
※ ※ ※
「小鳥遊っ!!今、助けに行く…」
後退したハジメ機が撃たれたと知り慌てて救援に向かおうとしたアカネ機だったが、そこへ朱色のアレッツが静かに歩み寄ってくる。
『全く…どうしてあなたはいつも、私の邪魔ばっかりするんですか…』
「それはこっちの台詞だ。」
アカネは言った。朱色の機体に乗っていたのは、『ジョシュア王国』自警団の、嫌味な元中隊長。どうやらすぐには救援に行けないらしい…
※ ※ ※
ソラ機のコクピットのサブウィンドウには、4分割されてそれぞれに因縁の相手と対峙するエイジ、レオ、ハジメ、そしてアカネの機体が映されていた。そして画面の右端には、"Watcher"という忌々しい名前。
「アンタ…いるノネ!?観てるノネ…!?さぞ見物なんでしょうネ、傍観者のアンタにとってハ!!」
ソラはこのお台場の何処かから、戦闘の様子を配信している『ウォッチャー』へと叫んだ。




