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3ー5 それはイジリか あれはいじめだ

永遠と思われる長い、長い沈黙。



「な…何よぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜っ!!」



金切り声でそれを破ったのは、女教師だった。



「何よなによナニヨあんた〜〜〜〜〜っ!!」



ああそう言えばこの人はこういう人だった。普段は物腰柔らかなくせに、機嫌が悪くなるとヒステリーを起こす。


「そうだぞお前!」「いきなり戻って来て何言ってやがるんだ!」「せっかくいい気分でいたのに…」


女教師のヒスが、皆に火を着けた。


「いじめって言ったって、やってたのは主にダイダだろう!」

「みんなも少しだけどやってた!」

「あれくらい、イジリだろう!!」

「あれはイジリじゃない、イジメだ!!」

「被害妄想もいい加減にしろ!」

「私達女子は関係ないわよ。」

「同じ場所にいただけで同罪だ!」


後は、クラスメート達とアユムとの、一しきりの言い合い。

女教師も声のトーンを上げて、


「あの、あのクラスは、あなたの事以外は、全部、ぜーんぶ、うまく行ってたの。後は、後はあなた一人が、が、我慢すれば、全部丸く収まったの!!」


「何を言ってんだあなたは…それでも教師か!?」


「だからあの後、教師を辞めさせられたんじゃない!!全部、ぜんぶあんたのせいで!!!」


………何だ、このやるせなさは…


これが…この街での、僕に関する出来事の………こいつらの、認識か!?


この街は…あのクラスは…こんな奴らの…集まりだったのか…!?


いや、これはそもそも僕があんな事を…


……………話にならない…


アユムは周囲の家が無くなって、元家のあった場所から丸見えになってる、暗く陰鬱な海を見つめ………


「おい、聞いてんのか、クソ渡会!!」


「………魚…」


「はぁ!?」


海に、2匹の巨大な魚が泳いでいた。


身体の上半分を出して、こっちに近づいて来た。


いや、あんな泳ぎ方をする魚はいない。そもそもあんなに大きな魚はいない。あれは…


「アレッツ………!!」


「海賊!?」「渡会に続いてあいつらまで!!」「クソっ!今日はなんて日だ!!」


     ※     ※     ※


2体の魚型アレッツは、岸に近づくと、1体が、ジャプーーーン、と、海上高くまで跳ね、そして、


空中で、上下に広げた尾びれを、後ろから下へ下ろし、そのまま横に90度ねじり、上下の尾ひれだった部分も内側に90度ひねり、左右に薄く、前後に広い、両足になった。その上で、左右の後ろに上げていたパーツを下に下げ、鉤爪を持った人の腕になった。


人型から魚型へ変形出来る、水陸両用アレッツだ。


空中で変形した1体はそのまま浅瀬にバシャーーン、と着地し、もう1体は水中で尾びれを下ろして足にして、海底に足を着けて歩いて陸へ上がってくる。


2体の半魚人の様なアレッツは、海の側の、村の広場まで上がって来る。近くには畑があり、収穫されたばかりのささやかな作物が積まれ、魚を開いて干物を作っていたり、焚き火が炊かれて側に廃材を切った薪が積まれている。


「お前らぁ、税金を取りに来たぞぉ!!」


1体の半魚人アレッツから声が上がった。


「いつまた宇宙人が攻めて来るか分からねぇから、俺たちがお前らを守ってやってんだ。税金はちゃんと払え〜〜〜!!」


アユムの元クラスメートは奴らを「海賊」と呼んでいた。そっちの形容が奴らの実態として正しいのだろう。


「おーーい、お前らーーー」

2〜3人の元クラスメートが、そう言いながらアユムの背中をグイグイと押す。

「な、何するんだよ…」


「こいつは街に来た物乞いだ。こいつを奴隷として差し出す。まぁ、何かの役には立つだろうから、こき使ってやってくれ!」


「はぁーーーーー!?」


なんて奴らだこいつらは…


2体の半魚人アレッツがアユムの前にずい、と出る。魚型だから身体が前後に平たいので正面から見るとキモいが、カメラアイでこっちを値踏みしてるのが分かる。しかし…


「こんな奴いらん!」


ちょっとショック!


半魚人アレッツは側の野菜や干物を見て、


「ほぉーー、野菜と魚かーー。」「こいつをいただいて行こう。」


「やめろ、やめてくれーーー!!」「そいつを持ってかれたら、俺たちは…」



「………ああもう!」



アユムは荷物から30cmくらいのカバンを取り出し…



「ブリスターバッグ、オープン!!!」



半魚人アレッツの背後に現れたのは、青い宝石の様な、左右のカメラアイの色が違うアレッツ。右手にはアンブレラ・ウェポン、左手には大型長銃身のリボルバーの様な銃を持っている。重量制限のため、前回の小型盾は無しだ。


「渡会が、アレッツ乗り!?」「そう言えば昔からロボット物が好きだったけど…」


「てめぇ…やろうってのか!?あ”あ”〜〜〜!!!」


叫びながら1体の半魚人アレッツが鉤爪の着いた腕を振り回しながらゲンゲンと足音を立てて走ってくる。


(多分あいつらの武器はあの爪だけ…)「近づかせるもんか!!」


アユム機がひらりと体を躱して距離を取る。そして…


ガンモードのアンブレラ・ウェポンでその1体の左肩と右太腿を撃ち抜く。


ダダダダダっ!!「ぐぉっ!!」


片腕片足になったアレッツはドン、ドンとたたらを踏むと、広場の真ん中の焚き火に倒れ込む。積んであった焚き木が、衝撃で弾け飛び、周囲の小屋や積んであった廃材に引火し、ボっ!と、燃え上がる。


「あああ…火がぁ…」「誰かーー、バケツ持って来ーい!!」


大騒ぎになる街の広場。そこへ、倒れたアレッツから機体を乗り捨てたパイロットが出ようとする…


「ああっ!今、外に出たら…」


アレッツのコクピット内の視界は、カメラアイからの物。厳密に言えば、コクピット周辺の物では無い。そして、今、倒れたアレッツのカメラアイの周りには何も無いが、腹部、つまりコクピットの前は、


燃え盛る焚き火があった!


ボ っ! 「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜っ!!」


着衣に火が付いて、熱さと酸欠で身悶えるパイロット。向こうでは火を消そうと躍起になるクラスメート達、こっちでは火だるまの海賊。果ては一部始終を見てた女教師から、「こんな事になったのも、全部あの子が帰ってきたからだわ」などという声が上がる。


「ああゴチャゴチャする…!!」


アユム機は左手に持っていた長銃身リボルバーを空へ向けて、


「大っ嫌いだ、この街も、あんたらも!!」


引き金を、引く。



「虐げられし者の恨み、思い知れっ!!」



ターーーーーーン!!

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