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20ー7 欲する物が手に入る

話の流れを変えたのはレオだった。

「ところで…さっきのお前等の話の中に何度か、『東京方面の偵察』って言葉が出てきたが…要はこれの事(・・・・)じゃねぇのか!?」

そう言ってブリスターバッグのメーラーを起動させる。そこに映っていたのは、


『全てのアレッツ乗り達よ、東京へ集え。

そこで、お前達の欲する物が手に入るだろう。』


「「「「「!!!」」」」」


他の者達が息を呑む。この人の所にも届いていたのか…


「…このメッセージはかなり広範囲にバラ撒かれてるらしい。さっき話した郡山を襲った野盗も、このメッセージに釣られて東京へ向かう行き掛けの駄賃に、村から食い物を奪おうとしたんだろう。ま、何度か返り討ちに会わせたら、あの村はヤベぇって事になって襲ってくるペースは治まったんだが、村を迂回するか荷物にブリスターバッグを隠すかして、多くのアレッツ乗りが南下したと見ている。」


「そのメッセージを送った人物の下には、多くのアレッツ乗りが集まっているんだろうな…」

エイジが言うと、シノブが、

「アレッツ乗りを集めて、このミスターXは何をするつもりなんショーか!?」


「日本征服…とか!?」

「…その戦力を率いて、我が国に攻め入られてはたまらん。だから私は、ここへ来たんだ。メッセージの送り主の真意を確かめに…」

ハジメとアカネが言った。


「俺が気になってるのはここだ…」

そう言ってレオは、メーラーのメッセージの2行目を指差す。


『そこで、お前達の欲する物が手に入るだろう。』


「…『我が軍に入れば報酬も栄達も望みのまま』、っていう意味では!?」

「エイジ隊が持ち出した救援物資は、あちこちで派手にばら撒いてたら、あっと言う間に無くなったっスよ。非現実的っス。」

「誇大広告でとにかく人を集めようという魂胆では!?」

「あるいは、全てのアレッツ乗りが『欲する物』として納得する何かを用意出来る、のか…」


「ちょ…ちょっと待って下さいよ!」

アユムが慌てて言った。

「こ、こんな怪しげな物に、日本中のアレッツ乗りが釣られて寄って来たって言うんですか!?お、おかしいですよ、こんなの…」


するとレオは真面目な顔になって、


「たが事実、郡山で俺が捕えた野盗の中には『あのメッセージを読んで来た』と明言した者も少なからずいた。それにアユム…実はかく言う俺も、このメッセージに一瞬心が動いたんだ…」


「そ…そんな…」

アユムは真剣な顔になっている5人のアレッツ乗りを見回した。日本を救うために戦おうとした2人、手下を食わせるために野盗に成り下がった男、宇宙人に家族を奪われた少女、国を作って侵略者になった女将軍…まさか、彼等、彼女等も、みんな…!?


「アユム…さっきの発言といい、前にも言ったがお前、やっぱり強ぇな。」

「だから僕はそんなんじゃないって…」

「だがそういうお前だって、『欲する物』…お前の力ではどうすることも出来ない望みがあるんじゃねぇのか!?」

「そんな物僕には…」


あった。


北海道からここまでの旅を成し遂げ、修理屋として各地のバグダッド電池を直して回り、最強のアレッツ乗りと称えられ、ついにはアレッツジェネレータとバグダッド電池が同根である事を突き止め、幼少の頃からのいじめすらほぼ克服し、低かった背も伸び、それでも…


『私、あなたの事が好きです。

よろしかったら…私と…お付き合いして下さい。』


世界でただ一人、彼の事を好きだと言ってくれた少女と再会し、告白の返事をするという、旅の最大の目的だけが、未だに達せられずに、冬というタイムリミットを迎えつつあった。


(東京へ行けば…ルリさんの情報が、手に入る…!?)


アユムはその考えを、即座に否定した。

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