20-2 重い罪を背負った男
1時間前、旧埼玉県さいたま市…
「そこの無登録機の操縦者!!今すぐ降りて来なさい!!」
「うるせぇ!!ポリ公は引っ込んでろ!!」
白と黒に塗られた2機のアレッツが、色も機体構成もバラバラな数機のアレッツと対峙していた。
「野盗がまた出たのか…」
「頼むよ、お巡りさん…」
警察の機体と野盗の機体の睨み合いを、遠巻きに見つめる村人達。そのさらに後ろにいた、ネイキッドタイプのバイクに跨がった男性が、
「やれやれ…いずこも同じか…」
そう言いながらヘルメットを脱ぐと、下からはワイルドなイケメンの顔が現れる。言わずと知れた氷山レオである。バイクを降り、村人達の間からずい、と前に出ると、小さなカバンの様な物を前に掲げ、
「ブリスターバッグ、オープン!!」
現れ出でたるはオレンジ色のグリフォン型アレッツ。
レオ機 L
「な、何だ!?新手か!?」「構わねぇ!やっちまえ!!」
野盗機はレオ機に襲いかかるが、レオ機は背中の翼を広げて宙を飛び、尻尾のパーティクルキャノンで野盗機を2機撃破!怯んだ隙に残った野盗機に急降下して、猛禽の觜を突き立てる!!
「「「ぎゃ~~~っ!!」」」
野盗機はあっさり全滅、村に平和が戻った。
「お前らも東京を目指した口か!?だがその程度じゃやって行けねぇな…」
言いながらアレッツを降り、ブリスターバッグに収納するレオ。
「君…!?」
警官アレッツがレオを引き止めるが、レオは、
「おっと礼はいらねぇ。俺はこの程度じゃ償いきれねぇ、重い罪を背負っちまってんだ…」
そして遥か北、父と仲間達が住まう山の彼方を見つめる。
(俺は、戦い続ける。その果てにいつかきっと、獣が人に戻れる日が来ると信じて…)
「き…君…!!」
警官アレッツがまだ何か言いたげだったが、じゃ、あばよ…背中で決めてニヒルに去ろうとしたレオだった。しかし…
「君…さっきの機体も未登録機だよね!?」
「…へ!?」
クールな表情がそのまま凍りつく。
「他所から来た人なのかな!?ここじゃ民間人がアレッツに乗るには許可が必要なんだよ。」
「とりあえず役所に来てもらおうか。」
晴れた昼下がり、役所への道を、自分が退治した野盗どもと共に護送されていくレオ。償いきれない重い罪を背負った男は、無許可アレッツの操縦という、新たな微罪を背負ってしまった…
※ ※ ※
時は再び現在、さいたま市の役所…
「助かったぜアユム!親父達を説き伏せて無理言ってようやく郡山を出て来たんだ。こんなに早く問題起こして戻される訳にゃいかねぇんだ…」
「は…はぁ…」
喜ぶレオに呆然となるアユムとカオリ。警察としても野盗退治に協力したレオを厳罰に処するつもりは最初から無かったらしい。身元引受人を出せば釈放すると言われて思いついたのは、この辺りにいてしかも住人達にある程度信頼されている、アユムだった。あっさり釈放された上に、アレッツの使用許可まで発行してもらえた。ただ、アユムのアレッツ使用許可証や、今回の身元引受人の書類では、アユムは18歳となってるのは大丈夫なのだろうか…!?
「郡山の方は大丈夫なの!?」
アユムが問うとレオは、
「あれから人員も増えたし、後は大神に任せてある。」
どうやら向こうも、アユムが去った後に色々あったらしい。
「それで…レオ君はどうして埼玉に来たの!?」
尋ねたその時、廊下の向こうから歩いて来た2人の女性とすれ違う。1人はまだ子供で、もう1人はその親くらいの年齢だろうか。
「役所なんて緊張するなぁ…」
「いずれ社会に出るんだ。今のうちに慣れておきなさい。」
その声に聞き覚えがあった。アユムは振り返り、
「ハジメちゃん…舞鶴さん…!?」
その声に2人の女性も振り返る。
「アユムお兄ちゃん…!?」「渡会…アユム!?」
宇都宮…『ユニバレス連合』自警団の小鳥遊ハジメと、群馬…『ジョシュア王国』自警団団長の舞鶴アカネだった。
「何で…2人が一緒にいるの…!?」
第20話 ヒアデス散開星団




