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19ー2 人の気も知らないで

バタン!「出て行って下さいよ!!」ドン!


小屋の扉が乱暴に開かれ、背中を突き飛ばされてカオリがフラフラと出てくる。慌ててソラも中から飛び出し、


「カオリチャン!? あ、アユムクン、アナタ少し落ち着きなサイ!!」


だがアユムは興奮して、


「あ、あんな物、見せられてどう落ち着けって言うんですか!?」


騒ぎを聞き付けて村の人達も次々と集まって来た。


「あれは一体何ですか!?あなたとどういう関係なんですか!?」

アユムらしからぬ乱暴な物言い。まあ、一緒にいる女のあんな写真見せられたら、並の男なら激怒して当然だ。


「アユムクン、だから落ち着いて話をシマショウ。」


だがアユムは宥めるソラに聞く耳持たず、


「そりゃカオリさんは僕なんかよりずっと大人だし、綺麗な女性(ひと)ですから、昔は彼氏の1人もいたんだろうなとは思ってましたけど、あれは無いんじゃないですか!?」


カオリは、何も言わず、ただアユムらしからぬ罵詈雑言に俯き、押し黙るばかりだ。それがアユムの怒りに拍車をかける。


「どうして何も言ってくれないんですか!?ああそうだ、あなた仙台からこっち、ずっと嘘ついてましたもんね。そんなあなたが何か言っても、僕、信じられませんよね。」


カオリがビクッと身体を震わせる。


「僕、知ってるんですよ。カオリさんの生き別れのお母さんなんて、いないそうじゃ無いですか!?富士野先生から聞きました。全く、色々辛いこともあったのに、カオリさんをお母さんと会わせてあげるためにって、ここまで頑張って来た僕が、これじゃ馬鹿みたいじゃ無いですか!?」


カオリは何も言わず、ブルブルと震えだす。


「さあ答えてくださいよ!!嘘までついて、何で僕についてきたんですか!?でないと、僕…」


パ シ ン! 不意に立ち上がったカオリがアユムの頬を叩く。

一瞬、何をされたか分からない風のアユムに、カオリは、


「何よ…人の気も知らないで…!!」


ダッ と、その場から走り去った。

ソラは聞いたことの無いような冷めた口調で、


「…あんた最低ヨ、アユムクン。少し頭ヲ冷やしナサイ。」


そう言い残してカオリの後を追う。一人取り残されたアユムは、


「…何ですか…ったく…」


と、悪態をついたが、


「………………あ…あれ…!?」


涙が後から後から止まらなかった…


アユムはヨロヨロと宿へ戻り、村人達も数日前から村に来ていた男女について無責任な噂話をしながら、それぞれの場所へ散っていった。


一人、物陰から一部始終を見ている人影があった。村人達がいなくなった後も、しばらくアユムだけになった宿を見張り、もうあの女が帰って来ない事を確認すると、一人ほくそ笑んだ。


     ※     ※     ※


その後、アユムの宿に新たな文が投げられた。


『明日、指定の時間に、指定の場所に来い。でないと、造ってた水車をブッ壊す。』

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