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19-1 連環の計

第19話 めぐる日々


一週間後、旧埼玉県某所…


「大宮の方でアレッツのジェネレータを使った発電施設が出来たらしいぜぇ…」

「俺達野盗はアレッツを狩られてジェネレータをくり貫かれる運命ってか…」

「忌々しい!!野盗にナメた真似出来ねぇ様に、発電施設とやらをブッ壊しちまうか!?」

「やめとけ。最初の水車を壊した男がどんな目に合わされたか知ってるだろ!?」

「ふざけやがって…今更堅気になんかなれっかよ!!」


暗闇の中で車座でブリスターバッグを見つめる男達。彼等はアレッツ乗りの野盗だった。そして、ブリスターバッグに映っているのは、有志がアップした、アユムが再び水車を完成させたとのニュース動画。


「くそっ!俺達ゃ強ぇんだぞ!!飼い犬に成り下がったそこいらの自警団なんかよりもずっと!!これまでにいくつもの村を食い潰して、血で血を洗う内部抗争にも勝ち残って…なのに何で、こんなひもじい思いしなきゃなんねぇんだ!?」

「いくつもの村を食い潰して、内部抗争で仲間を殺しまくったからだろう!?野盗で食い詰めて更正しようにも、そんな危なっかしい奴を、自警団としても働き手としても、置いてくれる所なんて無ぇよ!!」


どうすりゃ、いいんだよ…誰かがため息を漏らした。


「…東京、行くか。俺達の望む物が手に入るらしいし…」

「でもそこには、日本中からアレッツ乗りが集まるんだろう…」

「俺達より強ぇ奴はゴロゴロいるんじゃねぇのか…」


「…『スーパーノヴァ』、やっちまおうぜ。」

他の者と少し離れた所に座って、自身のブリスターバッグの画面を見ている男が言った。

「余計な事をしてくれた『スーパーノヴァ』をブッ倒して、それを手土産に東京へ行こうぜ。そうすりゃ俺達は嘗められる事ぁねぇ。」


男のブリスターバッグの画面には、ニュース動画の静止画、完成した水車の前で満面の笑みを浮かべるアユムとカオリが映っていた。


「でもよぉ、相手は妙な技を使う奴だぜ…」

「いくら俺達でも勝てるのか…!?」


仲間の問いに、男は画面のカオリの顔の輪郭を指でなぞり、


「奴らの強みは渡会アユムと相川カオリの2人で操縦してる事だ。妙な技だって、そこら辺に秘密があるんだろう。だから…」


カオリの顔に指を当て、ドラッグする。


「…2人の仲を、引き裂けばいい。」


アユムの隣のカオリの顔があった部分に白い穴が開き、カオリの顔を隣のとある写真に貼りつける。


出来上がった写真を見て、野盗どもは一様にニタァと顔を歪ませた。


     ※     ※     ※


さて…


見事アレッツジェネレータと水車を組み合わせた発電施設を完成させたアユムだったが、この様な重要な施設はテロの標的になりやすい。野盗対策に見張りは厳重に行わなければならないが、リスク分散でもう何箇所か同じ様な施設を造ろうという事になり、ダンが住んでいた大宮の復興村に別れを告げ、やって来たのは川越…


一仕事終え、村の中を並んで歩くアユムとカオリ…


「久しぶりよね…2人きりで仕事するのって…」

「………」

「ここでもいっぱいお客さん居てくれて良かったわよね…」

「………」

「ルリさんの情報、無かったわね…まぁ、気長に行きましょう…」

「………」

「それにしてもアユム、旅を始めて2〜3ヶ月よね。3つ折りの袖と裾を全部伸ばしたって、あんたたったそれだけで10センチも身長伸びたの!?」

「………」


「…アユムっ!!」


「はいっ!!」


ここ数日、アユムの様子がおかしい。妙によそよそしいのだ。特に、カオリに対して…

折角造った水車を壊され、それでもめげずに立ち上がったと思ったら…


「アユムク〜〜〜ン!!」


村の外の方から聞き覚えのある声が呼ぶ。


「「ソラさん………」」


宇都宮(ユニバレス)にいたはずの、網木ソラだった。


     ※     ※     ※


「アユムクンの口利きで、ユニバレスの自警団から出してもらえたワ。マァ、気絶させたチャラ男は嫌そうナ顔してたケド…こんなニ早くアナタと会えたのはラッキーだったワ。」

「頼まれてた仕事の事ですよね…後で渡します。」

「アリガトウネ、アユムクン!」


あのビデオ会議の後、ソラからメールで新しい仕事の依頼があったのだ。またバグダッド電池を造って欲しいという…しかも、バグダッド電池とアレッツジェネレータを組み合わせた、それらの中間にあたる物を。本当に何に使うのやら…


「ここじゃ何ですし、僕達の宿で取引しましょう。」

アユムがそう言うと、ソラは、

「そう言えばアナタ達って、2人でずっと旅してるノヨネ…」

何か言いかけた様だったが、3人は宿にあてがわれた小屋に着き、中に入る。


「ん…!?」


部屋のテーブルの上に、何か置いてある。出た時には無かった物だ。封筒…!?


「誰か入ったのかしら!?」

「まあ、ここ鍵なんて付いてませんし…」


何だろう…アユムは封筒を開け、中に入っていた物…写真を、広げ…


「「「………!!!」」」


3人の目が、大きく見開かれる。封筒に入っていたのは、


全裸のカオリが、あられもないポーズで、目元が黒塗りされた男に抱かれている写真。


「あ、あ、あ…」

アユムは声にならない声をあげ、


「な、な、な…」

カオリの顔は羞恥で真っ赤になり…


「ち…違………」


     ※     ※     ※


アユムとカオリの宿の外で、さっき忍び込んで封筒を置いた男…野盗の1人はほくそ笑んだ。


「これであいつらはおしまいだ………ヘヘヘ…」

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