17ー7 舞鶴アカネの真意
時は遡って、アユムの教官就任3日目の午後、『ユニバレス連合』自警団団長室…
コンコン…ドアをノックされると、福田団長が「ハーイ」と返事する。
ガチャ…ドアが開かれ、「失礼します…」と、お盆に湯呑みを2つ乗せた池田さんが入ってきた。団長室には福田団長と、何故か宮部国王が、テーブルに向かい合って座って話し込んでいる。
「…やっぱり君もそう思うかね…」
宮部国王が言った。
「どうぞ…」池田さんが2人の前に湯呑みを1つずつ置いていく。こんな世の中なので中に入っているのはお茶ではなく白湯だ。
「ええ…昨日の『サンライト村』の連中は変でした。」
福田団長はそう言った。
「『ジョシュア王国』が攻めて来てるこの時期に抗議に来たのは不自然だし、あの村長は最初っから喧嘩腰だった。まるで端っから我々と戦争する気だった様に…」
「昨日のあいつらの戦力で私達に勝てるとは思えませんねぇ。強力な援軍の当てがあったなら別ですが…
それに、『ジョシュア王国』自警団がレーザーサイトを当てたのは、『サンライト村』のアレッツだけでしたし、そうなるまであいつらは一切動きませんでした。」
「…今、そっちに来ている『サンライト村』のパイロットに事情を…」
「…何も喋らんでしょうなぁ…彼らの立場からすれば…」
「あの…それでしたら…」
不意に、何故かまだ部屋に残っていた池田さんが言った。
※ ※ ※
10分後、自警団詰め所の厨房…
『サンライト村』から来た3人のSWDチルドレンが、国王と団長の前に並べられた。池田さんが問う。
「昨日あなた達がここへ来た時、向こうの村長さんに何か言われたの!?」
「「「知らなーい。」」」
3人は揃って首を横に振った。
さらに10分後…
池田さんと佐藤さんによって、3人の子供達の前に、蒸かし芋が並べられた。子供達は芋を頬張りながら、
「「「知ってるーーー!!」」」
「何を…言われたの…!?」
すると子供達が、
「何かあっても何もするなってーー!!」
「安全な所に隠れてろってーー!!」
「特に、赤いロボットだけは絶対に撃つなってーーー!!」
4人の大人は顔を見合わせた。そこへ…
「団長、国王陛下、こちらにいらしたんですか…大変です!!」
団員の一人がやって来た。
「何かあった!?」
「『エッグプラント村』から救援要請です。野盗が現れて、近くの山に立て籠もってるそうです!!」
「分かった…第3中隊…は、もう出てるか…第2中隊に出撃させて。」
そう言いながら、福田団長は出て行った。
「そっちは頼む。こっちは任せろ。」
そう言いながら宮部国王はスマートフォンを取り出す。通話先は…『サンライト村』の村長だ。
※ ※ ※
宮部国王が疑惑をぶつけるなり、電話の向こうの村長は、
『やれやれ…知られてしまったか…』
と、言った。
『…最初に言っておくが、今更私達はあんた等に反旗を翻す気は無いからな…勝手に領有宣言された事に腹が立ったのは事実だが、ここから先の復興は、うちの村だけではどうにもならないとも思っとったし、余所者に支配されるくらいなら、あんた等の方が信頼できるのも事実だ。現に、宇都宮と協力関係が築けた事で、村内での私の株も上がったくらいだからな…』
「それじゃあ…」
『…昨日の抗議は、「ジョシュア王国」自警団との、挟撃のはずだった。舞鶴アカネ団長自身から申し出があった。一緒に「ユニバレス連合」を叩いて、奴らが宇都宮を支配する見返りに、私達の自治を認めてくれると…なのに奴らは、土壇場で裏切った!』
「あなた達は、ハメられた…私達に協力せざるを得ない状況に追い込まれた…!?」
『その通りだ…だがそれなら…』
「ああ…舞鶴アカネの目的は何だ…!?」
宮部国王は国王官邸の窓から外を見渡した。あの日廃墟となった宇都宮市街地のはるか向こう、新幹線の高架のさらに向こうにある、『ジョシュア王国』自警団駐屯地を…電話の向こうの『サンライト村』村長は言った。
『舞鶴アカネに気をつけろ…あの女は何を考えてるか分からん…』
あと…最後になったがうちの村から来ているパイロット達は、絶対に五体満足でうちに帰してくれ。それと子供たちに、ひもじい思いと寒い思いはさせないでくれ…村長のその言葉で、2人の通話は終わった。
(舞鶴アカネ…あの女、何を考えてる…!?)
あいつの真意が分からない。行動に合理性が無い。あの女が、宇都宮を征服したいのであれば…
その後、『マロニエ村』の村長からの訪問を受け、帰り道の護衛と称して第1中隊が釣り出されて壊滅し、救助に向かったアユム機がハジメ機と共闘してアカネ機に挑み、
「『インビジブル・コラージ』!!」
アカネ機の左拳を掴んだアユム機が、消えた。




