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16ー7 女好きの遍歴

最後にとんでもない事実が判明した…というより、アユムや周りの男たちが勝手にずっと勘違いしてただけなのだが…とにかく、1日目は暮れていった。


アユムは自警団詰め所内に設けられた宿舎の窓から星空を見つめる。


10月半ばだが、まだ日が沈んで間もないため、夏の星座が秋の星座に移り変わろうとしている。


「それにしても…」アユムは思う。星と星座の魅力の一つに、星座単体の美しさや、毎年同じ時期同じ時間に同じ星座が巡ってくる不思議とともに、意図しているのではないかと思われる妙な星座の配置がある。


自分が倒したりゅう座の頭を踏みつけているヘラクレス座、さそり座の心臓アンタレスを弓で狙っているいて座、自分を刺し殺したさそり座が登ってくると地平線に隠れるオリオン座、おおぐま座をりょうけん座を連れて追いかけているうしかい座…アンドロメダとペルセウスの神話の登場人物を1箇所に集めた秋の星座もその一つだが、今、アユムの目の前にある星座の配置には、悪意を感じる。


南天の東寄りに、夏の星座のわし座、西寄りに、秋の星座のみずがめ座。もっとも、みずがめ座は暗い星ばかりでよく分からないが…


好色な大神ゼウスが、ネクタルの給仕としてさらった美少年ガニメデが、みずがめ座のモデルとされ、その際ゼウスが化身した姿が、わし座の鷲とされている。そして…空に上げられて星座になった今でも、わし座の鷲はみずがめ座のガニメデをさらおうと狙っている姿を取らされているのだ。これ何らかの意図があるの!?


実際には古代ギリシャの様々な都市国家の王家が、『わが一族は大神ゼウスの御落胤だ』と主張した結果、ゼウスはあちこちに不義の子がいる浮気な神となってしまったらしいのだが…


おうし座…ゼウスがエウロパを誘惑するために化身した姿。

わし座…前述の通りゼウスがガニメデをさらうために化身した姿。

みずがめ座…ゼウスにさらわれた美少年。

おおぐま座…ゼウスが浮気したニンフのカリストが、ヘラの怒りを買って熊に姿を変えられたもの。

こぐま座…ゼウスとカリストの子供。子熊に姿を変えられた。

はくちょう座…ゼウスがレダを誘惑するために化身した姿。

ふたご座…ゼウスとレダの子供。

ヘラクレス座…ゼウスとアルクメネの子供。

木星…ローマ神話におけるゼウスにあたる『ジュピター』の名を持ち、ガリレオ衛星のイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストは全てゼウスの浮気相手やさらった相手。他の木星の衛星にも、ゼウスの浮気相手の名前がいくつか見られる。


「星座って…ロマンチックに見えて実は…ゼウスの浮気遍歴を未来永劫晒してる…!?」


夜空を見上げて口をあんぐり開けるアユム。やがて中がカラカラに乾いた口を閉じると、


「ま……まあ、僕には関係無いな。」


同じ男として思うところはあるけど、僕はそもそもずっといじめられてて、男女交際どころか人を好きになるという感覚自体分からないと言ってるんだ。ましてや今は世界でただ一人、僕の事を好きだと言ってくれた少女に会うために旅をしてるんだ。他の女性と浮気したり、複数の女の人の間をフラフラしたりするわけが無い。僕は大丈夫だ。


アユムはシャツの胸元から、蒼いラピスラズリの原石の入ったお守り袋を取り出し、ぎゅっと握りしめ、


「ルリさん…いつか必ず見つけ出し、会いに行きますからね…それまで待っていて下さい…」


と、呟いた。そして、


「あ、そうだ。カナコの車椅子の作業も進めないと…」


と、お守り袋を胸元にしまうと、車椅子の図面を取り出していじり始める。やがて、


「アユムー!!晩ごはんが出来たからいらっしゃーーい!!」

「アユムお兄ちゃーーーん!!」


向こうからカオリとハジメが呼ぶ声が聞こえ、


「あ、はーーい!!」


アユムは設計図をしまうと、部屋を出ていった。



………アユム、お前本当に大丈夫なのか!?


     ※     ※     ※


同時刻、『ジョシュア王国』自警団駐屯地…


「………」


舞鶴アカネは自身のブリスター・バッグで、『ウォッチャー』が配信した昨日のアユムの三連戦の動画を見ていた。場面は2戦目、『六本腕の天使』との戦闘である。


『わぁぁぁぁぁ!!アユムお兄ちゃーーーーーん!!』

『ちょ…あ、あんた落ち着いて…!!』


シアンの機体から子供(ハジメ)の声と、カオリというあの女の声が聞こえて来た。そして、


『インビジブル・コラージ!!』


その声とともに、アユム機は消える。


「………」


しばらくして、『六本腕の天使』の周りの『サテライト』の1機が、不意にクルクルと向きを変えながら光弾を乱射し、他の『サテライト』を全て落とし、最後に『天使』本体に光弾を撃つが、それは弾かれ、逆に『天使』のパーティクルブレードで斬り落とされてしまう。そして次の瞬間、その場にアユム機が現れた。


「………あの技は、敵をバラバラに粉砕する技では無いのか…!?」


敵の機体を操る能力まであるらしい。それらが全て同じ技名なのが、訳が分からない。


「渡会、アユム…」


あの頼りなげな青年は、底知れぬ何かを秘めていると言うのか…負傷したカオリを庇うようにアカネの前に立ちはだかったあの目、会ったばかりの頃の『あの人』に似ている。そしてカオリは、若い頃の自分に似ている…


「貴様等は私達の様にならねば良いがな…ん!?」


思う所があってアカネは動画を技の発動直前まで巻き戻す。シアンの機体が傘の様な武器を乱射する。『わぁぁぁぁぁ!!アユムお兄ちゃーーーーーん!!』『ちょ…あ、あんた落ち着いて…!!』


「…相川カオリはあの時、こっちの機体に乗っていた…!?」


アカネはもう一つの動画、アユム機とダイダ機との戦闘で初めて『インビジブル・コラージ』を使った時の物を再生する。アユム機が消え、ダイダ機がパンチを空振りし、バラバラに分解され、再びアユム機が現れる動画が、アングルを変えて何度も再生される。


「………!?」


画面の端、村の建物の陰に何か動く物が映ったのが気になり、アカネはブリスターバッグの機能で動画を拡大・鮮明化させる。すると…


そこに映っていたのは、建物の陰から戦闘を見守るカオリの姿であった。


「………」


違和感があるが、まだよく分からん。


「………疲れた。風呂に入ろう…」


アカネは自分の天幕を後にした。それからしばらくして、放置されたアカネのブリスター・バッグに、”You got a Mail.”のメッセージが映る。


     ※     ※     ※


時は数刻巻き戻る。旧宇都宮市廃墟某所…


『ウォッチャー』は自身がアップした動画を見ていた。最後に真紅の女性型アレッツ…アカネ機が率いる部隊が現れ、『六本腕の天使』の『サテライト』を全て撃破する。そのシーンにニヤリと笑った『ウォッチャー』は、自身の端末を操作すると、アカネのブリスターバッグのIDを特定し、メールを送る。タイトルも本文も無し。あるのは添付された彼の未公開動画と、”Watcher”という自身の署名だけ。


送信のシングルクリック。


さあ、次は何が見られる…!?

おまけ アユムの目標(うち♡付きは女がらみ)


♡ルリを探して告白の返事をしたい

♡カオリが住んでた街を探したい(第一部終盤~第二部)

♡カオリを母親と再会させたい(第三部~)

♡カナコに車椅子を作りたい(第三部~)

♡ハジメに生きていく道を与えたい(第四部)

♡舞鶴アカネに勝ちたい(第四部)

☆『生きたおもちゃ』を止めたい(第三部~)

☆レオを父親と和解させ、『パンサーズ』を解散させたい(第三部)


カオリ「…確かにノーマルね、あんた…」

アユム「…す、すみません…」

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