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15ー9 ステルス機

廃墟のとある一角では、『ウォッチャー』が、左手の双眼鏡と、右手の端末を交互に覗き込んでほくそ笑んでいた。『ホワイトドワーフ』の命令(コマンド)なんて、大方『敵の撃破』に決まっている。だから『我敵軍ニ遭遇セリ』というメッセージを奴らのチャネルで流せば、のこのこ出て来やがった。さあ、『スーパーノヴァ』、派手に暴れてくれ…


     ※     ※     ※


その時、とうの『スーパーノヴァ』はと言うと…


「『ホワイトドワーフ』!?何だってこんな時に、こんな所で…!?」


黄色い機体はヌルリと見えなくなったかと思うと、瓦礫がいくつかガチャン、ガチャンと崩れ、シアンのアレッツの近くで再びヌルリと現れ、パーティクルブレードを横薙ぎにコクピットを潰した。悲鳴も上げずにアレッツの上半身は崩れ落ちる。


ギ ン! 「ひ、ひぃぃぃぃ…」


金色のカメラアイに睨まれて自警団アレッツは腰を抜かして這うように逃げようとし、


「わ、わぁぁぁぁぁぁ〜〜〜!!」


恐怖にかられた自警団員がアレッツの銃をホワイトドワーフに乱射する。が、悲しいかな模擬弾。ホワイトドワーフには傷一つ着けられない。自身の装甲でカンカンと音を立てる豆鉄砲を鬱陶しそうに振り向くと、ホワイトドワーフは再びヌルリと消える。


ガチャン!ガチャン!ガチャン!!崩れる瓦礫が模擬弾を撃ったアレッツに近いてくる。スクリーンにも、レーダーにも何も表示されない。でも、何かが間違いなく近づいてくる。次の瞬間、至近距離にホワイトドワーフが再び現れ、右手のパーティクルブレードを振りかざして…


「ひぃぃぃぃぃ〜〜〜!!」

自警団アレッツは思わず竦むが、


「危ない!!」 ド ン!! アユム機が横から体当たりしてホワイトドワーフはよろける。


「逃げて!じゃなきゃパーティクルキャノン出して戦って!!」


アユムが叫ぶとミッドナイトブルーとシアンの自警団機は各々悲鳴を上げながら離れていった。アユム機をそこそこ腕の立つ奴のみなしたホワイトドワーフは、金色のカメラアイをギン!と光らせ、再び姿を消す。


(ロストレシピの『ステルス』か…全身を光も電磁波も透過させる特殊素材で覆ったという…あの黄色のボディは非発動時の、特殊素材本来の色か…カメラアイまで金色なのは誰の趣味か…)


ガシャン、ガシャン…崩れる瓦礫がアユム機の左に回り込む。


(地上を歩くしか移動手段が無いから、崩れる瓦礫…歩いた跡で大まかな位置は分かるし、攻撃時はステルスを解除しなきゃならないらしい。あとは…)


アユム機は左手のアンブレラウェポン(スナイパー)を背中に背負うと、腰から大型のリボルバー状の武器…特殊兵装を取り出し、空へ向けて全弾発射する。装填していたのはDHMO弾…万一村に被害が出たときのための用心で持ってた、散水弾だ。


その散水弾が空中で一斉に雨のように水を撒き散らす。カオリもハジメも、自警団達もアユム機の行動の意味が一瞬分からなかった。が…


散水弾が降らせた雨が、全高7mの人型に避けている空間があった。


「そこか!!」


アユム機は右手のアンブレラウェポン(ガトリング)を、その空間へ向けて斉射!!雨が降り避けた空間に、穴だらけの黄色いホワイトドワーフが現れ、


ガシャン!!そのまま崩れ落ちた。


「うぉぉぉぉ!!」「勝ったぁぁぁぁぁ!!」「助かったんだ、俺たち!!!」


周囲の自警団アレッツから歓声があがる。アユム機はホワイトドワーフの残骸からデータを吸い出しながら、(今度ホワイトドワーフが出たら、彼らだけで対処出来るんだろうか…)と不安に思った。


「すごいや、アユムお兄ちゃん!!」

通信機の中でハジメが手を叩いて歓声を上げ、


「アユムー、早く戻ってらっしゃい。この子の事をちゃんと教えてよね。アユムお・兄・ちゃ・ん!!」

カオリさん、何で機嫌悪そうなんだろう…


その時、


『素晴らしい!!素晴らしいよ!!「スーパーノヴァ」、渡会アユム君!!』


またもや絶賛の声が上がった。『ユニヴァース村』村長、宇田川氏である。


『君は最強のアレッツ乗りだ!!お願いだ!!食料も住処も最高の物を用意しよう。だからずっとこの村に住んで、私を守ってくれ!!』


「まだ言うんですか、この人は…ん!?」アユムは宇田川村長の台詞に不自然な点があるのに気づいた。「村長、あなた今、『私を守ってくれ』とおっしゃいましたか!?『私達』や、『私の村』じゃなく、『私』と…」


『君なら、君ならあいつ(・・・)を倒せる!だから頼む!!私を守ってくれぇぇぇぇぇっ!!』


宇田川村長の渾身の願いが響く中、



「探しましたよ…」



聞き覚えのある声が、天から降ってきた。


いつの間にか北西の空に、白い物体が浮いていた。望遠のウィンドウを展開して見ると、そこにいたのは、巨大な両肩が翼の様に見え、細い両足を尻尾の様に揃え、頭のてっぺんは円形に潰れた、アレッツに似た巨大な天使…


「『六本腕の天使』…!!飛行能力を手に入れたのか!!」


『天使』の中から、『生きたおもちゃ』の声がした。


「✕✕市立✕✕中学校、3年C組担任、宇田川先生!!…我が師へのおん、晴らしに来ましたよ!!」


宇田川氏は元教師で、『生きたおもちゃ』の担任だった…!?

「そうか…全ての元クラスメートがいじめの復讐相手なら、担任教師も怨みの相手になるか…」


『六本腕の天使』…いや、腕は左右に1本ずつしか無かった。代わりに『天使』の周りに、肘から先と同じパーツ…パーティクルキャノンにもブレードにもなるものが4本飛んでいる。『天使』に従う様に、不規則な円を描いて…


「ロストレシピ、『遠隔操作攻撃端末(サテライト)』…!?そのために反重力航行装置まで…!?」


『六本腕の天使』の頭がこっちを向くと、


「へぇ…渡会アユム…こんな所にいたのかい…!?邪魔するなら殺すよ!?」


コクピットの光る空間の中で、『生きたおもちゃ』はニヤァと笑い、『天使』の周りの4本の『サテライト』が、空中でピタリと静止し、一斉にアユム機の方を向いた。


     ※     ※     ※


廃墟のとある一角で、一部始終を眺めていた『ウォッチャー』は、再びニヤリと笑った。ホワイトドワーフは期待外れだったが、面白い乱入者が現れた。これは見ものだ!!

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