2ー3 コンシダレーション Episode 1
それからアユムは、昨夜の戦闘について考えていた。
「ダイダは…とにかく弱かった。」
弱い者いじめの男だからな…でも、僕のを見ただけでプロトアレッツをグロウさせた『弱い者いじめの才能』は恐ろしい物がある。まぁ、もう野盗もアレッツ乗りも廃業だろうから、二度と会う事も敵として僕の前に立ちはだかる事も無いだろうけど…
だがあいつは弱い方だ。さらに言えば北海道はアレッツ後進地域だ。内地に渡ればもっと強いアレッツも乗り手も沢山いる。そして、アレッツより強い敵も…
「もっと強くならなきゃ…僕も、僕のアレッツも…」
それは分かっていた事だ。
「地味に問題なのはプロトアレッツだな…」
プロトアレッツ…宇宙船からサルベージしたままの状態のアレッツ。全高がアレッツより一回り小さく、背中にパイロットむき出しのコクピットが着いている。一般にはアレッツの強化前の形態と考えられているが、アユムは作業用機器、あるいはアレッツと連携して使用するものではないかと推測している。いずれにせよ、北海道の野盗のプロトアレッツは全部アレッツに置き換わっていると踏んでいたのに、今更プロトアレッツと戦うとは思ってもみなかった。
「プロトアレッツ対策…した方が良いのかな!?」
プロトアレッツへの対策法は、実は存在した。アレッツの手首に標準装備されているナックルマシンガン、あれは本来は対人兵器だ。これでプロトアレッツの頭越しに、背部コクピットの操縦者を撃てば、プロトアレッツは無力化出来る(昨日ダイダに「アレッツには効かない」と言ったのは、万が一にも奴に学習させないためだ)。アユムはそれを理解した上で、自身のアレッツのナックルマシンガンを非致死性のワイヤーガンに換装させていた。プロトアレッツの相手は厄介だ。ちょっと強く突けば操縦者を殺してしまう。だから昨夜は星空への恐怖心を利用するという姑息な手段さえ使った。
「何とか操縦者を傷つけずプロトアレッツだけを破壊する方法…」
上からじゃなく、下から攻撃する手段があれば…例えば下半身に武器を装備するとか…じいちゃんも、全身に武器を着けて一斉掃射出来るのが人型の利点だって言ってたっけ…脚だと動くから…股間か…
…自身のアレッツの股間から、一門の機関砲が、雄々しくそそり立っている姿を想像してみる………
「………やめとこ…」
…いや待てよ、これで攻撃された時に敵が被る心理的ダメージも考えると…
…もう一度、自身のアレッツの股間から、一門の太くて大きい機関砲が、天を突くように雄々しくそそり立っている姿を想像してみる………
「……………やっぱやめとこ…」
じゃあ尻尾に見立ててお尻…お尻にマシンガン…
「……何か僕と似た名前のロボットみたい…」
却下だな。アユムは思った。神様にケンカを売る様な真似は出来ない。
プロトアレッツ対策は棚上げとなった。再び会敵する可能性があるとは思えないからだ。




