13-10 野盗の終わり
アユム機、レオ機という2機のSR機に加え、ソラ機もいたため、生き残った『パンサーズ』のメンバーは野盗の掃討に成功、コクピットからはい出て来た野盗どもは、口々に月並みな捨て台詞を吐いて逃げて行った。親が存命なら親許へ帰るがいい。
『パンサーズ』の獣型アレッツは、アユム機、ソラ機とともに郡山復興村に入った。レオ機と大神機には成人男性くらいの大きさの袋がたくさん縛り付けられていた。汚らわしいと村に入れるのを拒否する村人もいたが、村長の『命懸けで村を守った英雄達だ』という説明に、沈黙せざるを得なかった。本当はアユムとソラも一部持とうかと言ったが、レオが『これはヘッドの役目、手下達への敬意だ』と固辞し、譲渡案として副長の大神が手伝ったのだ。
蒼とオレンジのアレッツのパイロット達は、ようやく互いの顔を見る事が出来た。
「『ノー・クラウド・クレセント』の、渡会アユムです。こちらは相川カオリさん。」
「こんな貧相なガキだったとはな…それに、時々女の声がすると思ったら、二人乗りだったか…」
ここ1年にかけて積み重ねられた野盗『パンサーズ』の問題が、たった数日で双方が歩み寄れるまでに進展した。が、西の空を真っ赤に染める太陽に照らされる中、郡山復興村の村人たちは、次なる大きな問題を突きつけられていた。すなわち、
先に投降して来た者と、野盗との戦闘を生き延びたアレッツ乗り、合わせて十数名の『パンサーズ』。彼らをどうすればいいか、という事である。
「親父…」レオがまず口火を切り、「頼む。俺の首一つで、こいつらを村に受け入れてやって欲しい。」深々と頭を下げた。
村人たちがざわめき出した。「確かにあいつはリーダーだから順当だろう。」「だが村長の息子だぞ!?」
「待て!『パンサーズ』の実質的なリーダーは、ナンバー2の俺だ!処分するなら俺1人にしろ!!」
普段寡黙な大神が叫んだ。
「待ってくれ!!『パンサーズ』のメカニックは俺だ。この村に一番迷惑をかけてたのは俺だ!!だから俺を処分してくれ!!」
今度は犬飼が言った。
「いいや、俺を」「だったら俺も」「拙者を」「身共を」「某を」
一斉にその場に並ぶ『パンサーズ』一同。
「何なんだよ、こいつら…」「野盗のくせに仲良すぎ…」
「ちょっと待てよ…何でそいつらを受け入れる前提で話、進めてんだよ!?」
村人の一人が言った。
「そいつらこれまでずっと、俺達の村から作物を奪ってた奴らだぞ!?今更野盗をやめますから村に入れてくださいって言われたって、はいそうですかって言えるか!!」
「そうだそうだ!!」「受け入れられるか、野盗なんか!!」「そう言えばこの間は、村の女をさらおうとしてたな。」「やっぱりとんでもない奴らだ!!」「自分から殺せって言ってるんだ。そいつら全員始末しろ!!」
「じゃあ、お前があいつらを殺せよ。」
おやっさんに言われて、パンサーズを殺せと叫んでいた者たちは一斉に静まり返った。
「俺達、真面目に働きます。」「アレッツも手放します。」「だから、村に入れてください。」
犬飼と一緒に最初に投降して来た者たちがそう言ったが、村人達の彼らを見つめる目は冷たかった。
「そうは言っても、もうすぐ冬だぞ…春になったら農作業をおぼえるとしても、それまでの数ヶ月、何も出来ないお前らをただ養うのは…」
「村長、どうします…!?」
副村長に促されると、それまでパンサーズの台詞を黙って聞いていた氷山村長が、スックと立ち上がると、
「みんな聞いて欲しい。私はこの村を出て行って、彼ら『パンサーズ』と共に、遠く離れたどこかに畑を作って生きていこうと思う。」
「「「なあああにいいいいい〜〜〜!?」」」
村人たちと、レオが叫んだ。
「何でだよ親父!!あんたはこの村に必要な奴だろ!?」
「黙れレオ!!子の不始末は親が着けねばならんのだ!!」
「そこのヘッドの言うとおりだ!!この村の村長はあんた以外いないだろう!!」
「あんたは父親である前に私達の村長だ!!」
「それで今まで失敗してきたんだ!!もう私をただの父親に戻してくれ!!」
「さっきも言った様にもうすぐ冬だ!今から畑を一から作って自活なんて非現実的だ!!」
「ああもうどうすれば…」「いたらいたで厄介なのに、いなくなる時も厄介なんて…」
皆が困り果てている中、
「皆さん…ちょっとよろしいでしょうか!?」
この状態を作り出したもう一人の張本人…アユムが声を上げた。
「『パンサーズ』の皆さんですけど…アレッツ乗りとして、村に置いていただけませんか!?」




