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13ー9 氷山レオ

しばらく後、『パンサーズ』アジト近辺…いや、


アジトは既に燃えていた。


レオがソラに、足抜け希望者を託して逃がした後、郡山復興村を狙っていた近辺の野盗どもが徒党を組んで押し寄せた。


だがレオ達は既にアジトを放棄して周辺の山中に潜伏しており、無人のアジトに群がる野盗を更に包囲する形で獣型アレッツの一団が出現、戦闘が始まった。


パーティクルキャノンの流れ弾を受けて、彼らが1年を暮らした廃工場はあっさり炎上。パンサーズは相手が寄せ集めだった事もあって健闘したが多勢に無勢。敵機を撃墜する毎にこちらからも脱落者が続出し、


現在、レオ、大神、根古田をはじめとする生き残った数機の獣型アレッツはいずれも満身創痍で、それらを十数機の野盗のアレッツが取り囲んでいた。


「へっへっへ…何だよ、歯応え無えなあ…」

「眠れる獅子なんて、こんなもんか…」

「これだったらもっと早くこうすべきだったなあ…」

野盗どもは皆舌舐り。


「………くっ!!」

レオは機体も心も悲鳴を上げていた。手下達の相次ぐ戦死が、一層彼の心を萎えさせた。


もはや、ここまでか…まあいい。


母さんに、会える…


野盗機がパーティクルブレードを大きく振り上げ、レオ機の首に今しも振り下ろそうとしたその時、


タ ァ ァ ァ ァ ン!!


空の彼方から飛来した光弾がブレードをはじく!見上げると遥か遠くの空には、紫のソラ機と並んで飛ぶ、ロングバレルのアンブレラウェポンを構えた、蒼いアレッツ、


「『スーパーノヴァ』…」レオが呻くと、


「『ノー・クラウド・クレセント』だ。」アユムが言った。


タタタタタ…アユム機とソラ機はパーティクルキャノンで周囲の野盗機を一掃し、レオ機の側に着地する。


「何しに来やがった!?…邪魔すんじゃねえ!!」何の邪魔だったのだろうか。


「助けに来たに決まってるでしょう!!」アユムが叫んだ。


一方、ソラ機のコクピットでは、ソラが後ろに増設されたシートに座る氷山村長に、

「最後ニもう一度確認するワヨ。外は危険ヨ。それデモ…」

「ああ…外に出してくれ。」


紫の魚型アレッツのコクピットから人影が出る。レオはそれが父だった事に我が目を疑った。


「てめえ……参観日にも顔を出した事が無えくせに…今更何しに来やがった!!」


氷山村長は野盗機に囲まれる中、ツカツカとレオ機に近づき、



「レオ………この………馬鹿もんがぁぁぁぁぁ〜〜〜!!!!!」


レオ機の鼻っ面を、拳でガン!と、殴った。



「「「!!!」」」

村長が何をするつもりなのか知らされていなかったアユムもカオリもソラも仰天。


「親…父!?」コクピットで呆然とするレオに、村長は、


「幼馴染で、初恋で、進学で疎遠になって、地元に戻って紆余曲折の末に結ばれて、お前が産まれて…」


(何を言ってんだ、親父…!?)


「そんな最愛の女性が、自分より先に死ぬ運命になったんだぞ………!!」


村長は泣き声になっていた。


「レオ!!お前に、何が分かる!!私は皆が思ってる様なご立派な男じゃあない!!妻の入院費用とお前の養育費を稼ぐという言い訳に、死に別れる最愛の女性にも、離れていくお前の心にも、壊れていく家庭にも背を向け、逃げた、私は、最低の男だ!!」


もう何ヶ月ぶりに見るか分からない父の姿は、思っていたよりもずっと小さかった。


「だとしてもあんたは、あと1時間早く来るべきだった!!」


『パンサーズ』のメンバー達も、自分達のヘッドとその父親とのやり取りを、コクピットで呆然と見つめていた。


「…けっ!!あの時もどうせ、1時間どこぞで泣いてたんだろうよ!!」

村長の沈黙が肯定を意味していた。レオは憑き物が取れた様な表情になって、

「親父…俺はあんたを思いっきりぶん殴りたくなったぜ…」


それを聞いた村長も、


「レオ…私もお前に説教したい事が山程ある。」


「…えーっと…ここはみんなで生き残りましょう、で、いいんですよね!?」

アユムは恐る恐る訊ねた。


「蒼いの!!手前も気に入らん!後でブッ倒してやるから勝負しろ!!」


「分かった。後でね…」


「いつまで臭いメロドラマやってんだ、ああ!?」

野盗の生き残りが凄んで来た。


「てめえ等こそ邪魔すんな!!今、大事な話の最中だ!!」

大神が吼えた。思えば『パンサーズ』のメンバーの多くが、あの復興村の誰かの子だった。


「アユムクン、レオクン、こいつらやっつけるワヨ!!」

屈んでいたソラ機が立ち上がる。

「アト村長サン、コッチの機体は満員ダカラ、ソッチに乗せてもらいなサイナ。」

と、レオ機を指差すと、レオ機のライオンの頭が頷く。

村長がレオ機のコクピットに消えたのを確認すると、「ジャアこれもおまけヨ!」と、ソラ機が腰の追加ブースターを切り離すと、レオ機の背中に装着させる。


参観日、最前自分が吐いた言葉が皮肉だとレオは思った。まさか父親をコクピットの後ろに乗せて、アレッツで戦う事になろうとは…でもいいのか!?親父を乗せたアレッツで人殺しをして…


「人型アレッツは肩と太腿を破壊すれば無力化出来ます。逆に腹のコクピットを壊せばパイロットは即死ですし、ジェネレータのある膝下に当てれば大爆発を起こして敵も周囲の味方も助かりません。

だからレオさんは僕らと一緒に空から肩を狙って牽制して、地上の皆さんで太腿に食いついて下さい。」


なるほど…こいつはこうやって、誰も殺さずに戦って来たのか…


「礼を言っとくぜ、『スーパーノヴァ』!!みんな、ここから一機も欠ける事なく生き延びるぞ!!」レオから号令が飛び、周囲の獣型アレッツから「「「おう!!」」」と返事が戻る。


「へっ!!レオに加えて噂の『スーパーノヴァ』まで…」「これを殺れば俺達の名も上がる!」「みんな!やっちまえ!!」


周囲の野盗も意気がる中、蒼いアユム機と、紫のソラ機と、オレンジ色のレオ機が、空中で揃い踏み。真ん中のアユム機がアンブレラウェポンを掲げ、


「お前ら野盗はもう終わりだ!!虐げられし者の恨み、思い知れ!!」

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