13ー8 白旗
同日、夕方…
郡山復興村に、アレッツが、再び現れた。
しかも、ソラ機が1機だけ。おまけに周囲には、数名の生身の人間…パンサーズの構成員を連れて、紫の魚型アレッツは、手に白い旗を携えている。
動揺する村人たちを抑えて、アユムとカオリは自身のアレッツで迎える。
「徹底抗戦ですか、ソラさん!?」
「降伏ヨ。」
降伏、その声に村人たちがざわめき立った。
「ワタシはレオクンにこの子達ヲ村まで送る様に頼まれたノ。」
村へ来たパンサーズ構成員の中には、犬飼の顔もあった。
「俺達、パンサーズを抜けて来たんだ。」
「もう野盗からは足を洗う!!」
「何でもするから、この村に置いてくれ!!」
「「「え…!?」」」
少なくともアユムはこうなる様に今まで動いてきた。しかし、あまりにも早すぎる展開に、村人含め、我が耳を疑った。
そこへ、騒ぎを聞きつけて村長もやって来た。
「レオ…君たちの親分はどこにいるんだね!?」
「レオ君は………戦っています。」
「戦っている!?」「どういう事!?」
アユムもカオリもアレッツを降りてきた。
「立派な農園のあるこの村は、周辺の複数の野盗どもにずっと狙われてたんです。中にはイナゴみたいに質の悪い奴らもいて、俺は、強面の奴(大神)と組んで、そいつらとずっと外交をしてたんです。時になだめ、時に脅し、時には武力まで使って、なんとかこの村をパンサーズの縄張りって事にして、そいつらの侵入、干渉を防いで来てたんです。」
犬飼の言葉の先を、機体から降りてきたソラが続けた。
「それが昨日、例の動画が拡散されたせいデ、周辺の野盗どもハ誰もパンサーズを恐れなくなったノ。寄ってたかっテこの村ヲ食い潰そう、パンサーズの兵藤レオと、蒼いスーパーノヴァを倒しテ名を上げようト、ワタシ達のアジトとこの村ニ迫ってるノヨ。
パンサーズにはこの子等の様ニ、1年前の混乱に絶望シテ入った、戦いモ盗みモ好まない人たちモいるノ。レオクンは最後ニ希望者ヲ足抜けさせテ、残った者たちデ野盗どもと戦ってるノ。」
「なんてこった、それじゃあ…」
おやっさんが途中までつぶやいた。それじゃあパンサーズは、この村に盗みを働いてたが、一方でずっと、この村を守ってた!?
「あなたが氷山村長ですよね…!?レオ君から手紙を預かっています。」
犬飼が村長に手紙を手渡す。手紙にはこう書かれていた。
『親父へ
これまでして来た事の罪は俺達の命で償うから、こいつらを村に置いてやって欲しい。
母さんは最期まであんたの名を呼んで逝った。 レオ』
「実はワタシも、アユムクンにレオクンから伝言を言付かってるノ。『俺達の食い残しがそっちへ行ったら、後始末を頼む』っテ。デモ、ワタシとしてハ…」
「……分かってます。ソラさん、案内して下さい。」「あたしも行く、アユム!」
アユムとカオリが言った。
「レオクンを、助けて…くれるノネ!?」
「ええ!」
それからアユムは氷山村長を見つめる。村長は目を背け、
「や…野盗どもの縄張り争いじゃないか!!わ、私は関係無いぞ!!」
「氷山!!まだ逃げるのか!!」
おやっさんが叫ぶが、村長は無言で顔を背けたままだ。
「コ〜タ〜ロ〜ウ〜ちゃ〜ん…手をわずらわせるんじゃないよ〜〜〜…」
おかみさんが酒瓶とコップを手に持って、ゴゴゴゴゴ…とものすごいオーラを背負いながら現れた。
「よ…よせっ!!私はそんな怪しげな物、飲まんぞ!!」
しかし、何か言いたそうな村人ほぼ全員からじっと見つめられて、氷山村長は、
「ああもう分かった!!君たち、私を一緒に連れて行ってくれ!!」




