13ー6 超新星現る
「見て下さい!!こんな物が配信されてたんですよ!!」
アユムはブリスターバッグに接続されたタブレットを出す。
※ ※ ※
そこに写っていたのは、ついさっき繰り広げられた、アユム機とダイダ機の戦闘。ご丁寧にリアルロボットアニメの戦闘シーン用BGMが後ろに流されている。
アユム機が消えて、ダイダ機がバラバラになり、アユム機が再び現れる動画に、大きな文字の字幕が重なる。
”Here comes a Supernova!!”
同じシーンが、アングルを変えてまた流され、また字幕が重なる。
”His courage is invisible!!”
また同じシーンの別アングル、そして字幕。
”Panthers are dead!!”
最後に左右色違いのカメラアイと、三日月の前立てが特徴的なアユム機の顔のドアップ。
”Defeat him!!"
最後に右下に字幕が、
”by Watcher.”
動画、終了。
※ ※ ※
「な…何よこれ!?」
カオリは叫んだ。
「さっきの戦闘を誰かが撮影して、動画をアップしたみたいですね…再生回数が…えらい事になってます…」
「カッコいい…」
カオリの頬が紅潮している。
「編集した人の腕がいいだけですよ。」
アユムは素っ気なく言ったが、素材となる戦闘を行ったのは彼だ。最弱だったはずのアユムは、ヒーローに祭り上げられてしまった。
「修理屋さん!!大変だよ!!」「ちょっと!これ見てくれよ!!」
工場に何人もの村人が押し寄せてきた。みんな手に手にスマートフォンを持っている。この村のインターネットの無線端末もアユムが直したので、彼らは限定的だがインターネットを使うことが出来る。そして彼らが持ってるスマートフォンには…案の定、さっきの動画が写っていた。
「皆さんもご覧になったんですか。」
「ああ。すごいね。『スーパーノヴァ』。」
「『スーパーノヴァ』がいれば、パンサーズなんか怖くないね。」
村人のその言葉に、アユムの顔が硬直した。
「………何、ですか!?『スーパーノヴァ』って…!?」
「え!?だって、あの蒼いアレッツの名前じゃないの!?『スーパーノヴァ』って…」
「ほら、この動画にも出てるよ。『スーパーノヴァ』。」
「カッコいいじゃない。『スーパーノヴァ』…」
…そう言えば、動画の字幕にも出ていた。”Here comes a Supernova!!(超新星現る)”って…投稿者のウォッチャー(Watcher)は面白おかしく書き立てただけなんだろうが、そのせいで『スーパーノヴァ』が、アユム機の名前として定着しつつある。パイロット本人が着けた『ノー・クラウド・クレセント』という名前が既にあるのに、勝手に名前をつけられても困る。
アユムはげんなりした顔で、
「スーパーノヴァって………星、死んでるじゃないですか………」
(((そこ!?)))
…アユムには妙なこだわりがある様だ。
「そう言えば、最初に出てきた時、何か名前みたいなの名乗ってたけど…」
「長かったから、忘れたわね…」
「ひどっ!!」
このままでは、『スーパーノヴァ』に元の名前が上書きされてしまう…
カオリが強ばった笑みで助け舟を出してきた。
「ま、まあ、アユム…あ、あたしはいい名前だと思うよ。あんたのつけた名前、ほら、『ノークラ…』、『ノークラ…』………何だっけ!?」
「わ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ん!!」
パートナーにすら裏切られて、アユム、泣きながら退場。動画の中の威容とは異なり、ヒーローの素顔は情けなかった…
大体アユム、『ノー・クラウド・クレセント』だって、元は辞世の句だろう…




