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13ー3 インビジブル・コラージ

一晩降った雨が止んだ翌朝、郡山復興村…


「野盗が出たぞーーーーーっ!!」


アユムはその声に叩き起こされた。


「またパンサーズですか!?レオが出てきたんですか!?」

そう言いながらブリスターバッグを抱えて出てくると、


「それが…見た事もない人型なんだ…」


村人に促されて見た先に立っていたのは、両腕だけを血のような赤に染めた、真っ黒いアレッツ。


「お前るるぁ…食い物あるだけ出しやがるるぇ…」


機体から聞こえてきた、その耳障りな巻き舌には、聞き覚えがあった。


「ダイダ…」


あいつ何で、まだアレッツに乗ってるんだ!?


     ※     ※     ※


同時刻、パンサーズアジト…


偵察機が中継した画像を凝視する、レオと犬飼、その後ろにはサングラスをかけたソラ。


「俺達の縄張りを…一体どこの奴だ!?」

レオは唸る様に言ったが、犬飼は、

「ここら辺の野盗団の機体に、あんなのは無かったよ。」

レオはギリっ、と奥歯を噛み締め、

「…て事は、他所からの流れ者か…!?」このややこしい時に…

「あ!レオ君!!見て下さい!!あの蒼いのが出てきました!!」


画像の中に突如、黒い機体と対峙する様に、蒼い機体が出現した。


     ※     ※     ※


再び郡山復興村…


「げぇっ!?渡会(わたるるぁい)!?」

ダイダは呻いた。現れた蒼い機体は、最後に見た時とは細部が違っていたが、それが一番会いたくないあいつだと、一目で分かった。そして額に新たに出来た三日月の前立てを指差し、

「グェハハハハハ!!何だその変な飾りは!?左と右で長さが違いやんのぉ!!」

どうやらダイダには、アシンメトリーの美が分からないらしい。コクピットの中でアユムはフっ、と笑い、

「こういうのを、伊達者って言うんだよ!!」


アユムは操縦桿をグっ、と握り直した。全てのモジュールは完成し、接続された。これが成功すれば僕は、僕のアレッツは強い弱いとは別次元の存在に産まれ変われる。頭の中の計算は完璧、あとは実際に試すだけ。


今日この日この時が、あいつ(ダイダ)が、試運転の相手には、丁度いい。


すぅー、はぁー…アユムは深呼吸し、モニターの中でドンゲンドンゲンと近寄ってくるダイダ機を見据える。万一の事を考えると怖い。だけど…


「アレッツ…僕に勇気をくれ!」


アユム機のコクピットにはシートの右側に1本、新たに追加されたレバーがあった。アユムはたたまれていたそれを起こし、親指の位置にあるボタンを押しながら、グっ!と、前へいっぱいにスライドさせる。その瞬間、


アユム機は、消えた。


「な…っ!?」

ダイダ機が足を止め、

「どこだ!?どこへ行った!?渡会(わたるるぁい)!!」

周囲をキョロキョロと見渡す。だが、どこにもアユム機は見えない。小さい画面がピーピー鳴っててうるさい…赤く点滅までしてきやがった…どこだ渡会…


ギュォン…「な…っ!?」


不意に、コクピット内の照明が全て消え、モニターの明かりだけで薄暗く照らされる。


バキっ!!「ぐぉ!?」


ダイダ機の右腕が肩からもげる。腰のパイプの1本が、いつの間にか折れていた。


「どこだ!?どこにいる、渡会(わたるるぁい)!!」

ダイダ機が残った左腕をブンブン振り回すが、虚しく宙を切った。


ボン!!「な…!?」


頭上から嫌な音がする。コンバータが大破したのだ。


ボキっ!首がもげた。ボキっ!今度は左肩が取れた。ボキボキボキボキっ!!!!!機体のあちこちが破壊され、残っていた腰のパイプも次々と破壊され、

「グェアアアアア〜〜〜っ!!!!!」

ダイダは悲鳴を上げた。そして、


消えたと同じ唐突さで、アユム機はコクピットブロックを片手に掲げた姿勢で現れる。それを地面に叩きつけ、ガンモードのアンブレラウェポンを向ける。


「ひぇ…ひぇぇぇぇぇ〜〜〜っ!!!」


慌ててダイダがコクピットから出てくると、アユム機はコクピットを、アンブレラウェポンで撃って破壊した。


ダイダは尻に帆かけて、いずこかへと逃げていった。


一部始終を物陰から見ていたカオリは、

「そんな…こんな方法があったなんて…」



コクピット内のアユムは言った。

「『インビジブル・コラージ』…これが僕の力…僕の勇気だ!!」



それからアユム機は、パンサーズのアジトがある山の方を見つめると、


「『パンサーズ』ヘッド、兵藤レオに告ぐ。見てるんだろう!?

僕たちは、君たちと、話し合う用意がある。

明日の夜明けに、郡山復興村まで来て欲しい。」


それだけ言い残して、蒼いアレッツは消滅した。


     ※     ※     ※


同時刻…


某所に籠もる落合。彼が見つめるモニターは何分割もされており、いずれもが、今回のアユム機とダイダ機の戦闘を様々なアングルから映しており、左上には『●REC』の赤い文字が記されていた。


『「インビジブル・コラージ」…これが僕の力…僕の勇気だ!!』


アユムのその台詞の録音に成功すると、落合は闇の中、ニヤリと笑った。

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