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2ー1 僕はまた 一人になった

西暦2053年 8月、北海道某所…


今、僕の身に起きている事を説明する前に、ここ1ヶ月で起きた事を説明した方が良いだろう。


1年前、この地球全土に大きな被害をもたらした、「スペース()ウォーズ()・デイ()」。地球周辺に突如現れた宇宙船の船団が、これまた突然大掛かりな砲撃戦を行い、地球全土に未曾有の被害をもたらし、これまたこれまた突然に去って行った。


当時、仙台に住んでいて、お盆休みの帰省で北海道に帰っていた僕…渡会(わたらい)アユムは、SWDによって両親を失った上に仙台に帰れなくなった。


それから1年、僕は仙台に帰ろうと、入念な準備をした。


ジャンクからスクーターをレストアし、必要な物資を集め、食料を貯め、頼りなく繋がるインターネット(僕が直した)で途中の道のりの情報を集め…念の上に念を入れた準備を行い、出発したのが1ヶ月前…すぐにそれが、何もかもが不足だったと思い知らされた。


僕みたいな無力な人間は、野盗にとって格好の餌食だった。


すぐに目をつけられ、あっちへ逃げ、こっちへ逃げ…とうとう墜落した宇宙船の残骸の中に追い詰められ…そして、この危険という言葉では形容しきれない旅を何が何でも旅を遂げるために…奴らと同じ、戦う力を得る事にした。


『アレッツ』…


墜落した宇宙船の中から見つかる、異星人の人形ロボット兵器。全長約7mの…リアルロボットアニメに登場するロボット兵器と比べても、小さい方だろう。とにかく…迷い込んだ宇宙船の中で、たまたま残っていたアレッツを見つけた僕は、これに乗って、旅を続ける事にした。


幼い頃からずっといじめられ続けて来た僕にとって、暴力の道具を使う事に抵抗が無くはなかった。だが…綺麗事は言っていられなかった。


…まぁ、じいちゃんの影響で、リアルロボットアニメが大好きだったから、という理由も否定出来ない。


それから1ヶ月経った今、僕は…


廃墟の一角にある廃屋で、生のキャベツをかじっていた。


…え!?説明が足りない!?



第2話 廃墟にて、一人


     ※     ※     ※


ダイダ達からカオリを助け出し、別れた後、アユムは夜の荒野をスクーターで飛ばし、廃墟にたどり着くと、そこで野宿し、


翌朝、目が覚めると、村でもらった食料の中から、とりあえず生でも食べれそうなキャベツの葉をむいて食べていた。


「…ほろ苦…」


手に入れた食料の調理方法も考えていなかった。火起こしと皮むき、切り分けの出来るものを探したほうが良いのだろうか。ジャガイモとかニンジンとか、生で食べれそうにない物はどうしよう…


「さて…」


アユムの傍らには、一辺が30cmくらいの、上に取っ手の着いたかばん状の物があった。中にはロボットの完成品フィギュアの様な物が入っている。ただし、これはおもちゃではなく、本物の人型ロボット兵器だ。


「ブリスターバッグ」…人型ロボット兵器、「アレッツ」の非稼働時形態。形状がおもちゃを販売する際の梱包である「ブリスターパック」に似ているため、この名前が付いている。恐らくは有重力大気圏下での単独、あるいは小隊編成での使用時の輸送形態、だとアユムは推測している。

この形態はアレッツのメンテナンス、カスタマイズの際のインターフェースとしても使われ、インターネットのアレッツ運用に関するサイトには、ブリスターバッグの表示の宇宙人語から英語への変換パッチを誰かが作ってアップさせていた。更にはこのブリスターバッグにソケットを増設し、スマートフォンに接続させるパッチと、スマートフォンにインストールするアレッツの設定用アプリまで公開されていた。

アユムも自身のタブレットにこれを入れて、アレッツの運用、カスタマイズに使っている。彼はアレッツ乗りとしては後発なのだが、誰かが作ってくれた便利なサイトのお陰で、ここまで追い付く事が出来た。全くありがたい事だ。もっとも、これを見てアレッツを邪な手段に使っている者どもも多いだろうから、余計なことをと言わなきゃならないのだろうが…

ちなみに、ブリスターバッグには、アレッツを小型化収納する機能の応用で、一般の荷物も小型化・収納する事が出来た。アユムが村でもらった食料や、拾い集めたジャンク、果ては乗っていない時のスクーターすら、ここに収納していた。


(おばさん…カオリさん…今頃、どうしてるかな…)


状況から仕方がないとはいえ、挨拶もせずに出て行ってしまった。


(ん…!?)


アユムのスマートフォンにメールが着いていた。彼の場合、キャリアーとメールサーバが幸運にも稼働し続けていたため、電気が供給出来て回線に繋がりさえ出来れば、電子メールの送受信が可能なのだ。もっとも、村の人々はそうは行かないので、アユムと同じくキャリアーとサーバが生きている人のメールアドレスを共有し、アユムが直して行った電算室のノートパソコンから送信しているが…


メールは2件。1件目はおばさんから。突然、行ってしまったアユムを心配し、道中の無事を祈るという内容の物。


(おばさん…すみません…)


どうやらカオリは、約束通り彼がアレッツ乗りだという事を内緒にしてくれたらしい。そして2件目は…


”カオリです。


昨日はありがとうね。


アユム、山があって川があって、碁盤の目みたいな道があって、お城がある街を知らない!?”


(カオリさん…!?)


そう言えば村にいた時も、そういう事を聞かれた事があったな…


”山があって川があって、碁盤の目みたいな道だったら、京都とかじゃないですか!?あそこには二条城もあるそうですし…”


返信、と…

村人たちのメールはアドレスが共有のため、他人に見られると困る内容(アユムがアレッツ乗りで、助けてもらった事)が書けません。

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