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スペースウォーズ・デイ

一人で寂しいという人間は、不幸なのだろうか幸福なのだろうか…


例えば物心ついてからずっと、他人から攻撃され続けてきた人間は、周りに誰かがいたほうが苦痛で、誰もいない方が平穏を感じるのではないだろうか。


僕は、一人がいい。


人は、本当に簡単な理由で、同族であるはずの他人を殴り、蹴り、罵声を浴びせ、あざ笑う。


僕は…一人がいい。


今日も僕は一人、夜空を見上げる。


あいつらはどうせ知らない。知ろうともしない。この星々に、名前があるという事を…


     ※     ※     ※


北海道、某所…


「さそり座のアンタレス、いて座、南斗六星、みなみのかんむり座…」


一人の少年が、夜空を見上げていた。

周囲は一面の畑。近くに小さな町があるのだが、その明かりすら、天上の星々の明かりを微塵も霞めはしない。


「へびつかい座、その頭のアルファ星、ラスアルハゲ。そのとなりがヘラクレス座のラスアルゲティ。…ハゲとケチ。ふふふ…」


北海道の澄んだ空は、天然のプラネタリウム。


「あっちがわし座のアルタイル、そして天上に、こと座のベガと、はくちょう座のデネブ…あ!」


夜空にスーっ、と、光線が走る。


「流れ星だ…」


お願いをしないと…少年は両手を合わせ、


「じゅげむじゅげむごこうのすりきれ…」


…それは違う。


「…海砂利、水魚の水行末、雲来末、風来末…」


少年の呪文詠唱は止まらない。


「食う寝る所、住む所、やぶらこうじ、ぶらこうじ…」


流れ星は一向に消える気配がない。


「パイポパイポ、パイポのシューリンガン…えええ!?」


流れ星は消えるどころか、太さを増して来た。こっちへ向かってくる!そして…


カッ!!!   ドーーーーン!!!


近くの街に、落ちた。爆風が周辺の畑の作物をなぎ倒し、少年を軽く数メートルふっ飛ばす。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜っ!!!」


よく考えるとさっき、流れ星が見えた頃から、夜空には本来この季節この時間に存在しないはずの「星」が、たくさんたくさんきらめいていた。その「星々」から、無数の「流れ星」が発せられ、その幾筋かは、地上へと降り注ぎ、轟音と共に大地に大きな穴を開けていた!


     ※     ※     ※


同じ頃、地球周辺…


銀色に輝く無数の宇宙船…そうとしか見えない物が、地球周辺に突然現れた。


彼らは何の前触れもなく、突然、互いへ向かって無数の光線を発射。


その一部は地表上の、大きな街明かりへと吸い込まれる様に消えて行った。


地上が多大な被害を受けるのもお構いなしで、彼らは艦隊戦を続行、


被弾した宇宙船が、次々と地上に落下、被害と混乱をさらに拡大させて行った。


そして…


それら無数の宇宙船の間を、光の尾を引いて飛び交う、人型の、様々な武器を持った存在…ロボット兵器と思しき物すら確認出来た。


     ※     ※     ※


同時刻、北海道、とある大都会…


街行く人々と、信号待ちの車の頭上で、幾筋もの流れ星が光ったかと思うと、


次の瞬間、


彼らは何が起こったのかも理解できないまま、蒸発した!


爆風に吹き飛ばされつつも、辛うじて生き延びた人々は、自身の頭上に降り注ぐ無数の流れ星に、恐怖の悲鳴をあげた。


向こうでビルが崩れ落ちた。あちらで歴史的建造物が燃え落ちた。彼方では列車に光線が直撃した。此方ではドライバーがパニックを起こした車が歩道で人を次々にはねて行った。


様々な悲鳴と、轟音と、あちこちで起きる火災と、様々な厄災と…

ありとあらゆる都市、ありとあらゆる国にて、同じ様な地獄が繰り広げられていた。


     ※     ※     ※


日本時間 西暦2052年 8月14日 夜


後に、『スペースウォーズ・デイ』と呼ばれる事になった日である。


その日、その夜、宇宙戦争…そうとしか見えない出来事が、地球周辺の宙域で起きたのだ。


某国の衛星が偶然撮影に成功した画像が、瞬く間にニュースで全世界に放送され、全人類は想像を絶する異常事態が起きた事を知った。


世界中のほぼ全ての国家が消滅。物的、人的被害の全容は不明。統計を取れる存在が最早存在しないのだ。


     ※     ※     ※


そして…宇宙では双方の勢力にも地上にも多大な被害が出た後…


彼らは現れたのと同様の唐突さで、消えていった。


それが西暦2052年、日本時間8月15日、朝。終わった頃には既に日付が変わっていた。


     ※     ※     ※


日は昇り…


よろよろと起き上がった少年が、朝日に照らされた中に見た物は…


クレーターだらけの一面の荒野と成り果てた地上…


     ※     ※     ※


半年後、北海道某所…


墜落した異星人の宇宙船の中を進む、3人の人影…


後ろの2人が炭化した死体に目を背け、オドオドしながら進む中、懐中電灯を持った先頭の巨漢は、そんな物に目もくれずズケズケと入って行く。


そして…


3人は広い空間にたどり着き、


4体のロボット兵器が体育座りしているのを見つけ、歓喜し、


うち3体の背面に設置されているコクピットに各々が座り、


ロボットを立ち上がらせると、宇宙船から出ていった…


     ※     ※     ※


それから更に約半年後、西暦2053年、8月頃…


荒れ果てた北海道の荒野のど真ん中に、再びあの少年はいた。


空から見れば、かつて畑だった草むらの所々に丸く地面が露出し、その中を頼りなさげに伸びるアスファルトの道路も、あちこちクレーターに削られていた。そして遠くには撃墜された宇宙船の残骸すら見える。


少年は大きな荷物を背負い、スクーターにまたがり、そして…


今、ヘルメットのゴーグルを降ろした。

大変申し訳ございません。スペースウォーズ・デイの発生年が間違っておりました。訂正しました。

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