第一章☆ひより
「女の子のものでなにか必要なものがあったら、何でも言ってね」
「ありがとうございます。美佐子さん」
少女は律儀にお辞儀した。
「名前がないと不便だよなぁ」
修一がコンビニから買ってきたお茶やおにぎりをテーブル上に置きながら言った。
「すみません」
「いいって。そーだなー、ひより、ってどう?」
「ひより?」
「うん。この前まであってたドラマの子役の子、ひよりちゃんっていって可愛かったから、名前もらっちゃおう」
修一、いつも犬や猫に名前つけたら情が移ると言っていたが……。美佐子は首を振ってため息ついた。ひよりちゃんは人間!犬や猫じゃないの!
「明日、ひよりちゃんのために、研究所で開発中の小型ロボット、プロトタイプを譲ってもらってくるよ」
「研究所……」
ひよりががたがた震えた。
「ん?俺の勤めてる上島開発研究所、だけど、どうかしたかい?」
「ああ……。なんでもないです」
明らかにホッとした表情でひよりがこたえた。
研究所、がNGワードかぁ、と美佐子と修一は思った。
翌日、夕方頃研究所から直接美佐子のアパートに来た修一は、精巧なロボットを肩にのせていた。
「本物みたい……」
ひよりが手を伸ばすと、鳥型ロボットは、ちょん、とひよりの指にとまった。
「ひよりちゃんがどこにいてもこのロボットが俺たちに教えてくれるから」
「ありがとう」
ひよりは微笑んだ。
「鳥のように空を飛んで助けに行くよ」
「はい」
修一はひよりの頭を撫ぜた。