愛する者を追い求めて…
久しぶりの連載開始です。
初めの方は毎日投稿を心がけますが後はどうなることやら…必ず完結させますのでご安心を。
それでは、、、
お楽しみくださいませ(╹◡╹)
冷たく単発的に吹く風が私の一つくくりにまとめた髪を強く引っ張る。だが私はそのなびく髪をなるはやにまとめあげくくる。今日も私は忙しい。20代のキャリアウーマンに休みなどない。
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人は何故モノを追い続けるのだろうか。
例えば夢。人にとって夢とは人それぞれで十人十色なのだがどれも希望に溢れ、しかし儚いものだ。だが追わずにはいられない。何故ならそこには達成感、満足感、快感が待っているのだ。
【夢は追わないと逃げていくと言う】
バッタを捕食しようとするカマキリ。そのカマキリを狙うカエル。そのカエルを狙うヘビ。そのヘビを狙うタカ。そのタカを狙うヒト。そんなヒトを驚かすバッタ?とにもかくにも自然界に追う追われるの関係はすでに出来上がっているのだ。ならば人間がモノを追いかけてしまうのは自然の摂理なのだ。
つまるところ人間はモノを追うことと言うのは本能的、野性的当然の行動だと言える。
ならば私の行動は善ではないか?
私は人としてモノを追う行為を本能のまま行っているだけだ。
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街が暗くなって来た夕暮れ。街灯が照度に反応して点灯を始めた。その光はイヤホンを付けてルンルンとしている彼女に対するスポットライトのようだ。それと同時に私のサーチライトにも思える。
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私の活動は隠密を極める。誰にも知られてはいけない。誰にも悟られてはいけないのだ。
仕事?いやいや、趣味というよりは使命だ。人は生まれながらに何か役目がある。
その役目は私の場合これなのだ。これと言うのは所謂ストーカーと呼ばれているものだ。
ストーカーとは本来“獲物に忍び寄る者“言わば“獲物を狙うハンター“という意味が転じて今のストーカーと言う呼ばれ方になっている。私的にはこの呼ばれ方は気に入っている。
“獲物に忍び寄る者”と普通にカッコよく感じる。昔から忍者だのスパイだのに興味や憧れを持っていた私からすれば喜ばしい事だ。
しかしながら、ストーカーは悪とされていると言う実態がある。プライバシーの侵害だので忍やスパイ同様見つかれば即お縄。そして周りからは汚物を見るような目で扱われる。そんなストーカーに優しくない世界が出来上がっているのだ。
と、ストーカーを私は肯定し続けていたが最近はそうとも言えなくなってきた。何故なら、私をターゲットとするストーカーが現れたからだ。
始まりはいつかは分からない。
少なくとも異変に気付いた1ヶ月前からだと思うが、もしかするとそれよりももっと前からつけられていたのかも知れない。おそらく相手もなかなかのストーキングスキルの持ち主なのだろう。
通報?できるわけがない。ストーキングをしていた所をストーキングされたとでも言えばいいのだろうか。そんな事を供述してしまえばこちらにも非がある。たとえ本当のことを言わなかった場合でも私をストーカーしている人に言われてしまえば即アウトだ。私のストーカーなら私がストーカーをしている事ぐらい知っていて当然だろう。
という感じで通報するにできないというストーカーの抑止力、もしくはストーカーのジレンマと言ったところか。これを主な理由にストーカーを肯定し辛くなってきたのだ。
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〔はっ、私のプリンセスが右にっ!〕
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私が追っている者。それは姫だ。無論本当の姫ではないが間違いなく姫である。
この言い方では理解できない知能指数の低い追うという本能を忘れた猿にもなれなかった塵に分かるように念のため説明すると、彼女は姫のようにとても美しいということだ。
美しいという言葉では言い表せないほどに容姿端麗、愛らしい笑顔がまた尊い。そして低身長で成人している。
合法ロリとはまさにこの事。
その小柄な割にお酒を豪勢に嗜むギャップにも惚れた。とにかく何もかもが尊い。尊い以外に何ものでもない。ただ未熟ながら名前を把握できていない為、私は姫もといプリンセスと呼んでいるのだ。
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〔今日はやたらとこの辺りを回っているような…〕
その姫は先ほどから同じ所をぐるぐると回っている。これでこの景色は3回目だ。そしてまた私もストーキングされていることに気づく。今日こそは直接とっちめてやろうかとは思うが姫を見守る方が断然良いという結論に落ち着いていつものように私のストーカーを無視する事にする。
〔あれ?さっきよりもぐるぐるしていない?〕
その姫は町のどこかにある軸に向かってどんどんと近づいて回っている。どこに収束するのだろうか。そして姫の足が速まっていく。イヤホンを手で押さえ表情が硬くなっているのが分かる。何か集中して聞いているのだろうか。
〔このままじゃ見失っちゃう。私も急がないと〕
私もストーキングに拍車をかける。このまま追えばバレてしまうリスクが跳ね上がる。だが獲物を目の前にしてみすみす帰るのはハンターとして本能が許さないのだ。
どんどんと軸に近づき収束しようとしていた。
〔ここは、、、〕
中心は一つの家だった。姫の家ではない。豪華とまでは言えないがそれなりに広い家で不自然にポツンと周りに空き地を構え晒されていた。人は住んでいなく住人募集中の看板が玄関前に煌びやかに飾られていた。何やら嫌な予感がする。そして姫は見知らぬ胸の大きい若い女性とその家の前で話をしている。私は予想外の展開に思わず身が陰から少し出ていた。
〔誰だろうあの子。私のプリンセスが人と話しているなんて珍しい。それにしてもあんなに笑顔で会話しているなんてあの女憎たらしい。いや、羨ましい〕
身長は私と同じくらいか、やや低いだろうか。髪型はショートボブ。見た感じは大学生といったところか。トータルで脂の乗ったいい女性と言えるが私の姫に比べれれば別次元レベルの差異だ。
姫を視界の中心にしつつ身を乗り出してその女を見ていた。そして少し気を抜いていた瞬間その女と目が合ってしまった気がした。いや、気がしたのではない。完全に気付かれた。
〔まずいっ!!〕
私は何かの間違いで気づかれていないことを願って慌てて物陰に隠れるが焦りと人生の終わりの音が聞こえたような絶望感で汗が止まらない。全身のあらゆる穴から汗が垂れてきているように感じるほどに。その汗が厚着の服に染み込み湿って冷たい。
恐る恐るもう一度覗いて見た。やはり女、そして姫にまで気づかれていた。
〔ここまでね…〕
と、思った私だが、どうやら向こうの様子がおかしい。姫は少し煙たそうな顔をしているが女は笑顔で私を手招きしているようなそぶりを見せる。
〔これって私?他には…〕
ふと思い出し後ろを見るが姿はなく気配だけがあり向こうからは見えていなさそうだ。
〔じゃあやっぱり私が呼ばれているのかしら。はっ、もしやあの女が警察の可能性!?だとしたらあんなラフな格好かなぁ。ていうかプリンセスとお近付きになれるチャンス!?〕
と色々なシチュエーションを考えて少しだけ身体を光に出してみる。
「そこのお姉さ〜ん!ちょっとちょっと〜」
遂には声をかけられた。
〔やっぱり私か…もうこの際ストーカーがどうだって良い。お近付きになれるのなら!〕
私は胸を張りたい気持ちを陰に置いてできるだけ小さな体制で女もとい姫の元へ重い脚を動かす。
外灯の光が刺さって痛い。開放的な道路に吹く風が染み込んだ汗と混ざり合ってとても寒い。いつも隠していた身体はこんなにもか弱いものなんだと改めて感じた。
姫との距離がどんどんと詰まって行く。それに連れて私の心臓が強く収縮する。いつもは隠れてある程度の距離を取るのに、無防備にこんなに近づくことができるなんて。そして自分の服が防寒仕様の醜いジャージであることを初めて憎む。もっとおめかしすればよかったのに。
「あ、あの。何か御用でしょうか」
私は人2人分ほど離れた場所から風ですぐにでも飛んでいきそうな尻下がりな言葉で女に尋ねた。
まだ距離は置かないとまともに口を開けない。勿論女にではなく姫とだ。これ以上近づけば死んでしまう。相手の返事を待ちながら姫の顔を崇め拝見する。私に対して何故だか敵対心の目で頬を膨らませている。
「あ、やばい…死ぬ」
鼻から尊さの余りに感情が吹き出る。出血の余りに気がぐわんと遠くなって行く。
溢れ出す感情。この感情が綺麗な景色を汚さないように鼻を押さえ発射口を塞ぎよこたわる。
あゝこれが私の待ち焦がれた光景。この景色が見られたのなら出血死でもなんでも良い。私の人生をフィニッシュとしてくれ。そして誰でもいい、1人の女性がたった1人の姫への愛情を血で表現したと語ってくれ。
この血絶える前に…
まだ何も話できていないのに意識を失い、目を覚ますと見知らぬ家の天井だった。
〔夢じゃなかったんだ…〕




