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白熱大連鎖

「で、なんとなく言いたい事は分かるけれどなんで(つかさ)さんが犯人もとい涼宮くんに盗聴器をつけた人なの?」


「よくぞ聞いてくれました沙耶ちゃん!あと涼宮(あんな人)にくん呼びするのが解せませんので由美ちゃんと呼んでください!」


「それはお断り」


 ガーンというSEをセルフで入れて由美は落胆する。


「だめっこのままじゃ由美さんの推理が聞けないわっ。沙耶さんが由美さんの事をちゃん呼びしないと聞けないわっ!ね!お願い!」


「聡美ちゃんまで……由美、、ちゃん…」


 そこまでして由美の推理を聞きたいわけでは無いが聡美からのお願いとだけあって仕方なく恥を捨てて言った。

 すると途端に由美は元気100倍と言わんばかりに復活した。


「それではご説明しましょう!まずは司さんが涼宮(そこの人)のことが気になっているという事実確認から行きましょう!」


 由美はフンッスと鼻息を鳴らし活気に満ちている様子だ。それに合わせて聡美と涼宮は拍手をする。

 こんなことをショッピングモールの立体駐車場でしていたのだと後で思い返すとおかしな話だ。


「私がまず気になったのは司さんが家に越してきて椅子に座った時です。あの時あなたはもじもじしておりましたね〜。あれは隣に大好きな涼宮(あの人)が座っていたからでは無いんですか?」


「いいえ、アレは…」


「まだまだありますよ?聡美さんが出かける時ありましたよね?思い返してみてください」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「じゃあ私は買い出しに行ってきますねー」


「聡美ちゃんが行くなら私もっ!」


「沙耶ちゃんが行くなら私もっ!」


「由美さんが行くなら僕もっ!」


「陵くんが行くなら私もっ!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「このシーンはどう説明するんですか?」


「確かに出会って間もないのに名前呼び…」


「この時まだ僕自己紹介してないです…」


「…」


「何も言い返せないようですね〜」


 由美は何も言い返せない司をみて一層推理に拍車がかかる。


「そしてそして聡美さんが出て行った後、私たちは各々自分の部屋に入りました。そして私が沙耶ちゃんを盗聴していた時思わず大きな声を出してしまったんです」


「その時から盗聴していたのね…」


「そうなんです!私だけでなく涼宮(この人)は既に私を盗聴していたんです!」


「それがどーしたのよ……あーなるほどね」


「そう。その時涼宮(無様な人)は私の大きな声にびっくりして驚き大きな声を出してしまったんですね〜。盗聴をしたことのある人ならご存知な通りいきなり盗聴器は基本は小さな音を()る用なので大きな音は耳が裂けるくらい痛いのです」


「盗聴あるあるね」


 これほど共感ができる事なく需要のないあるあるを共感できる状態がとても珍しい。


「そして涼宮(この人)が叫んだ声に盗聴していた司さんが連鎖的に叫んでしまったのですね?」


「ぐっ…」


「最後にまだありますよ…」


「それって…」


「そう、この家に入居した事ですよ」


 ズザザザーン‼︎と司にかなみなりの如く突き刺さる衝撃。

 確かにストーカーしかいないこの同居人たちの中に突然ストーカーではない常識人が来る事はあり得ない。故に司はストーカーなのだ。

 そして司は膝から崩れ落ちる。


「司さんが僕のストーカーだったなんて…」


「ざまあね」


 ショックを受ける涼宮に対して由美は嘲笑ってみせる。


「私はこれからどうすれば…」


「司さん!そんなに落ち込まなくても平気ですよ!」


 聡美がフォローをすかさずいれる。


「ここの人たちは“全員“ストーカー、謂わば同類ですし隠す必要はないんですよ?なのでそんなに気を落とさないでください」


「今、全員って言ったよね…認めたって事だよね?」


「言ってたね…」


 全員がストーカーという発言に耳を疑った由美が小さな声で沙耶に尋ねた。


「何か言った?」


「いえ何もっ!」


 聡美の笑顔にはトラウマレベルの恐ろしさがある。いつかこの笑顔になれる日は来るのだろうか。


「まぁともかく私は大歓迎よっ!でも、度が過ぎるとダメだからルールはちゃんと決めましょうね?とりあえずここじゃなんだし一旦家に帰りましょう」


 そうして一旦事は収まり一行は家へと向かった。

 道中は殺伐としていてとても会話が弾みはしなかった。流石の由美もこの空気には耐えきれず疑問に思っていたことを聡美に聞いてみることにした。


「聡美さんってパーティーの準備って言って買い物に出かけたのに何も買ってないですよね?」


「えぇ、買ってないわよー」


 確かに買い物に出たはずなのに持って出た鞄一つしか持っていない。


「じゃあ何しに行ったんですか?」


「それは〜」


「それは?」


「ひ・み・つ・☆」


 聡美は最高の笑顔で由美に返してやった。だがその笑顔にトラウマを持つ由美は直ぐに秘密の内容を探る。

 聡美はこのことを全て知っていてみんなを試した?

 いやいや、こんな出来すぎた話はない。小説や漫画じゃあるまいし。と、由美は考えるのをやめた。それも身のためと察したのだろう。

 一行は由美を放って立ち止まった。


「由美ちゃん??」


「えっ、はい?」


「あそこで倒れちゃった沙耶さんを運んでもらってもいいかしら?」


「おわっ!?」


 そう聡美に言われて振り向いて見ると沙耶が倒れていた。さっきのさっきまで隣を歩いていたはず。

 そして由美はすぐに沙耶の元へと駆け寄り事情を聞いた。


「さっきの聡美ちゃんの笑顔が可愛くって…」


 聡美の魅力に沙耶は悶絶しかけ倒れているのである。

 その場は由美に任せようとまた一行は家に向かうと由美がついてくる気配がない。


「由美さん?」


「すいません…悶える沙耶ちゃんが可愛すぎて…私まで…」


 由美は沙耶を運ぶどころか同じように倒れてしまっていたのだ。


「聡美さん僕が行きます!」


「待って涼宮さん!…」


 聡美は次に何が起こるかが分かってるかのように呼び止めるが既に遅かった。

 前に習った通りに沙耶、由美にならんで川の字に倒れる。


「司s……」


 今度は忠告する前に既に司は倒れていた。


「私も…って事には流石にいかないわね」


 そう言って聡美はカバンから携帯を取り出し誰かに電話をしてその場を去った。

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