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ライカンスロープ  作者: 葉倉千緒
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踊りは止めど二の足を踏む

「もう、そえでええわいしょ。ほんで、誰が何やる?」

「ちょーど、シオら5人だし」

「待ってください。ここは私も譲れません!」

ここ一番の声を張り上げる友里恵。配役にこだわりがあるようだ。


「何な、友里恵」

「ハロウィンのヴァンパイアたちは伝統があるんです!」

「こだわりがあるのか?」

「あります! まず、ヴァンパイアです。そして、長身は譲れません! 尚且つ美形であること! しかも、色白で影がある、不健康そうな雰囲気を持つ人です!」

「そえやったら、松崎やな。身長なんぼ?」

「185だよー」

「無駄にでかいな」

「えへへー」

「昼夜逆転生活で不健康ナンバーワンやしな。美形は置いといても」

「じゃあ、ヴァンパイアは松崎」

「賛成だし」

「そやな」

「え、あ、う……」

友里恵は何かを言いたげだったが、有無を言わさずにヴァンパイア役は松崎に決定した。民主主義の多数決、ときに数の暴力ともいう。


「次は何があるんだ、友里恵」

「フ、フランケンシュタインです……」

「何な、松崎がヴァンパイア役に不満なんか?」

「い、いえ、別に。フランケンシュタインですが、同人界では寡黙で大柄な男性になることが多いです」

「あがらにそんなんおるか?」

「また、その正反対で、幼女がフランケンシュタイン役になったこともありました」

「幼女ならおるやいしょ。のう、詩織」

三枝を見遣る仲本。三枝は眉間に皺を寄せていた。


「幼女じゃねーし! シオ、19だし!」

「じゃかまし。こないな19がおるかぁ。おまん、街で売春したら児ポ法も引っかかんで?」

「売春なんかしねーし! バカじゃねーの!」

「フランケンシュタインは詩織で決定な」

「はっ!? 勝手に決めんなし!」

「おれも賛成だよー」

「良いと思います」

「ふざけんなし!」

手にした麦茶のペットボトルをテーブルに叩きつける三枝。配役に納得がいかないようだ。


「まあまあ、詩織ちゃん。良いじゃないですか。フランケンシュタイン、可愛いのやってください」

「か、簡単に言うなし!」

「幼児体型のフランケン幼女やー」

「仲本! オメーはミイラ男な!」

「何でな?」

「オメー、仮性包茎の手術したっしょ! 陰茎に包帯巻いてたから、ミイラ男しかねーし!」

「おまん、そないなことバラすなよ!」

赤面し、思わず席を立つ仲本。男子の敏感な性の事情を露にされたら、脊髄反射で激昂するだろう。


「仲本くん、剥けてなかったんだー。皮、どれくらい余ってたのー?」

「じゃかましわ、松崎! 黙れ!」

「お前がうっさいし、仲本。いいから、ミイラ男やれし」

「やらんわ! ちゅーか、何でわえが手術したの知ってるんや!?」

「あそこの泌尿器科、ウチの関係だし」

「ウチって、どこな?」

「三枝病院。泌尿器クリニックはパパの弟子が開業したし」

「うわっ、マジかぁ……」

力なく椅子に着く仲本。


「教律の病院は避けて、大学からだいぶ離れた場所の病院にしたんに……こないなことってあるかいな……千葉まで受けに行ったんに……」

「三枝芳文を舐めんなし」

「誰な?」

「シオのパパ。現役医大の教授だし、千葉だけじゃなくて関東の病院でパパに教わった医者はいっぱいいるし」

「詩織、お嬢さんやってんなぁ……」

「シオも医者になるし」

「はい、ミイラ男は仲本で決定」

「顔に包帯巻いたら、術後みたいだし」

「抜糸は済んだのー?」

「じゃかましわ、おどれら!」

二人目の配役が決まった。


「……ほんで、友里恵先生。次は何があんねや?」

「ヴァンパイア、フランケンシュタイン、ミイラ男ときて、魔女があります」

「松崎ヴァンパイア、フランケンシュタイン詩織、仲本のミイラだからなぁ」

「仲本のミイラ言うなや。わえが死んだみたいやろが」

「残りの人間からして、魔女は友里恵じゃね?」

「だよな。俺、男だし」

「順当やな」

「へっ?」

「そないな顔すなよー。コスプレ好きなんやろ?」

「は、はい」

「オリジナリティ満載の魔女やったらええやいしょ。何な、衣装はもうあるんか?」

「はい」

「……恐ろしいやっちゃ」

友里恵は衣装持ちのようだ。準備が良すぎる。


「残るは俺か」

「何な、ハッセーもやるんか?」

「やるさ。みんながコスプレしてる中で普段着なんて寂しいし」

「お祭り魂炸裂やんな」

「いや、そんなんじゃないから」

「まあ、何でもええて。友里恵先生、あとは何が残ってんねや?」

「狼男です」

「お、狼男……」

「狼男て……」

「狼男かー」


一同は長谷川を凝視する。

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