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ライカンスロープ  作者: 葉倉千緒
2/15

Eランク私大の何気ないカレッジライフ

場所は日本にシフトする。東京都の某所。新橋や品川のような海沿いでなく、高地や高台が多く見受けられる。恐らくだが、区内ではない。中央線なりで中野より西に行ったところだろう。東京の山担当だ。既に、市に突入している。汎その場所は多摩か武蔵野か。


時刻は日中。陽がまだ高い。通りには若い男女の姿が見受けられる。時折、ネクタイを緩めた中年男性や手押し車を携えた老女の姿も。しかし、目に映るのは若人ばかり。ここまで年齢層に偏りがみられると、そこは学生街であろう。耳をそばだてると、嬌声と嘆息が入り交じった喧騒が耳朶を打つ。若者の流行の発信地というよりは、彼らの(ねぐら)と形容したほうが合点がいくだろう。学舎(まなびや)と簡素なアパートがその町を構成する主な建物だ。


町を構成する建物の一つ、それは大学のキャンパスだった。外観から察するに、戦後に建立されたように見える。風雨に曝されたコンクリートの外壁に罅が目立ち、植物の蔦が纏わりついている。ミッション系私立大学であればそういった外壁も趣きがあるものだが、その建物はチャペルでもないし、ゴシックな様相を呈してすらいない。無細工な、ただの古ぼけたビルだ。しかも、建築当時の基準で建てられたため、高さも周りの新しい建物と比べると極端に低い。三階建ての校舎は一見すると、廃業寸前の病院のようだ。


そんな学舎にはそのような人種が集まるのだろうか、その大学の学生たちにも覇気というものが感じられない。二十歳にも満たない若い男女が何をするわけでもなく、ただ漫然と時間が過ぎるのを見送っている。決して、「時を過ごす」というように能動的な様子を感じさせない。モラトリアムを貪っているといった言葉がしっくりくる。無気力が行き交う人から自ずと漂っている。


キャンパスの隅に、追いやられたようにサークル棟が佇んでいた。勉学をそっち退けでサークルに注力しているような学生は皆無。取り敢えず、「誰かと何となく繋がっていたいな」という漠然とした基礎欲求を満たしたい同士が集う場所になっていた。


サークル棟の一部屋、ドアには色褪せた画用紙が掲げられていた。日焼けした紙には水色の油性ペンで「現代娯楽研究同好会」と書かれている。しかも、黄色いアンダーラインのおまけ付きだ。何とも言えない、アンバランスなレイアウトだ。せめて、字の色は黒であってほしかった。小学生の自由研究の創作物のほうがまだ配色が考慮されている。


同好会は来る者を拒まないであろうが、来る者が躊躇うような扉である。そんな扉を開ける者がいた。心臓に毛が生えた豪の者か、はたまた、怖いもの見たさの一見さんか。答えは両者でなく至極単純、同好会の人間だった。その者は男子学生で、格好は流行りを追わずに無難さを極めたものだった。然したる特徴もないので、彼の服装についての描写は省く。


「ハッセー、遅いー! 何してたー?」

入室するや否や、詰りの言葉を浴びせられる彼。


「すまんこ。4限の授業が長引いた」

手刀と即席の「わりぃ」という表情で、軽薄な詫びをする。


「4限の授業て、誰の?」

「川田の」

「ちゅーと、必修?」

「そ」

キノコ頭で、ピンク色のセルフレームのメガネを掛けた男子学生がにんまりとする。


「川田のじいさん、話が長いさけーなー。ほんで、何言うとるか分からへんし」

「滑舌が悪いよな」

「まあ、それは歳のせいちゃうか? 1年の必修が川田やったけど、だーれも何言うとったか分からへんかったっち言いよる」

「仲本も川田の必修だったのか」

「せや」

キノコ頭は仲本というらしい。便宜上、彼をキノコ頭と地の文で呼ぶところだった。ちゃんと名前があるようだ。


「で、今日は仲本だけ?」

「ちゃう。奥で姫らがマリカーしとる」

「今日はマリカーかよ」

彼は部屋の奥、窓際のソファーに視線を遣る。


「うわっ、きたねー! ここでバナナ出すなし!」

茶色い長い髪の一房を食みながら、DSを片手に大笑いする女子。


「すみませんね。バナナが余っていたもので」

黒髪でストレートヘアーの、清楚な雰囲気を持つ女子が口に手を当てて笑う。


「三枝さん、また私の勝ちですね」

「あーっ! もうっ! また友里恵に負けた!」

茶髪の方は三枝、黒髪は友里恵というらしい。


「つーか、三枝呼ぶなし! 下の名前で呼べし!」

「はいはい、詩織さん」

「さん付けじゃなくて呼び捨てで呼べし! 友里恵のほうがシオより姉ちゃんだろ!」

三枝詩織は笑いながら友里恵を小突く。


「姫らよー、ハッセー来たで」

「あ、ハッセーだ」

「長谷川さん、おはようございます」

ハッセーは名字の長谷川から来ているようだ。


「おはよう。ところで、詩織と友里恵さん。今日は俺らだけ?」

長谷川は顎で一同を指して訊く。


「いいえ、全員いますよ」

友里恵は腰元のブランケットを捲る。すると、5人目の尊顔が露になった。


「……………………」

「松崎、いた」

「ええ。詩織ちゃんと仲本さんが来る前からいらっしゃったそうです」

「ずっと寝てるし」

松崎という男の寝顔は締まりがなかった。口も半開きで、涎を垂らして熟睡している。


「松崎、また徹マンか?」

「昨日はサイゼの日やなかったか?」

「昨日がサイゼリヤですと、今晩はセブンイレブンですね」

「明後日の夕方が佐川らしいし」

「週末の午前中が本屋だろ。こいつ、いつ勉強してんだ?」

4人は松崎の顔を覗き込む。松崎、姿を見せるときは決まって寝姿である。出会って以来、4人は松崎の覚醒しているところをほとんど見たことがない。


「分からへん。わえ、文学部やし」

「シオたち医学部も当然だし、分かんない」

「学部共通の基礎科目でも会ったことないですね」

「法学部の俺も学部が違うし、授業も別だしで松崎と会わないな」

「ちゅーか、松崎。学部はどこや?」

「経済じゃなかったか?」

彼らの通う大学について。学校名は「教律大学」で、文理医学部を有した総合私立大学である。学部学科は以下の通り。



◆医学部

・医学科 偏差値62

医師免許取得に向けて頑張る学生が多い。全国の医学科では下位だが、学内では雲上人。三枝詩織は医学科所属。

・看護学科 偏差値54

看護師になるために勉強する学生が多く、学内では真面目の部類。友里恵は看護学科所属。

・保健衛生学科 偏差値47

医療関係の資格を取るために勉強するらしいが、どこか専門学校チックな雰囲気。医学部の足を引っ張っている学科。


◆文学部

・現代表現学科 偏差値48

日本語による表現を突き詰めることがモットーの学科。国文科と芸術学科を足して割ったような感じ。変わり者が多い。仲本は現代表現学科所属。

・国際文化学科 偏差値48〜39

国際と冠するが、他大学における英文科や仏文科などの外国語文学科と大して変わらない。他大学と違うのは、中国語専攻が大手を振ってキャンパスを闊歩していること。他の英米語、ドイツ語、フランス語はそうでもない。

・心理学科 偏差値52

文学部の中で最難関だからか、偉そうにする人が多い。しかし、臨床心理士になる人間はほとんどおらず、院ロンダするにも学力が足りない学生だらけ。

・歴史学科 偏差値50

文学部で最も影が薄く、他学科の学生からも忘れられることが珍しくない。しかし、学科長や教授は歴史学会では名の知れた人物が多く、学内でも隠れた看板となっている。


◆法学部

・法律学科 偏差値51

法律を学ぶ学部。出席がそこそこ厳しいせいか、学生の雰囲気は真面目。偏差値も学内で中くらいだからか、無難な印象。長谷川の所属は法律学科。

・政治学科 偏差値49

政治を学ぶ学部。法律学科とは違って、政治的思想に傾倒して学生運動を行う者もいる。血気盛んな学科で、活動家の温床になっている。政治色は左。国際文化学科の中国語専攻と仲が良い。

・総合政策学科 偏差値49

出来たばかりの新しい学科。他大学の総合政策学科を真似たはいいが、肝心の学科の方針が完璧に定まっていない。やっていることは法律学科と大差ないようだ。


◆経済学部

・経済学科 偏差値41

経済学の大枠を学ぶ学科。数学を捨てて、取り敢えず大学生になりたい人が滑り止めに滑り止めを重ねて辿り着く。しかし、必修の数学に耐えかねてドロップアウトする者が後を絶たず、学内で中退・留年率が異様に高い。

・経営学科 偏差値38

経済学から派生した経営に関する学問をする学科。学生自体が経済学科との違いが分かっておらず、数学の必修もないために、何となく卒業してしまう者が少なくない。

・金融マネージメント学科 偏差値38

法学部総合政策学科と同時期に出来た学科。会計や商学に重点を置いた学科らしい。こちらも経営陣の舵取りが下手なために、何をしているのかが分からずに学生が置き去りになっている感がある。



「経済なんかぁ。2回生までは山キャンなんやろ?」

山キャンというのは、教律大学の区外キャンパスのことだ。対して、海キャンというのもある。教律大学は学生の誘致のため、キャンパスを都内の臨海部に作った。海キャンには経済学部と法学部の3年目から呼ばれる。メインは山キャンだ。


「海キャン、行ったことあるか?」

「ないわ。ハッセーは3回生から海やんな」

「ああ。だけど、俺的には山キャン派」

「せやろな。わえも山キャン派。前にお台場行ってんけど、有明に他の大学が新しいキャンパス作っとったな。何な、大学っちゅー雰囲気ちゃうわ、あっこ」

「知ってるし、それ。名前からして東京の山の方なのに、無理やり海に出した感じのやつっしょ?」

「私も知ってます。看護学科の関係で、そちらの大学は名前だけ」

「てか、医学部に海キャン寄越せし。何でゴミ経済風情に海キャンとか新しいキャンパスやるんだよ?」

「すまん、法学部もそっち行く」

「ごめん。てかてか、せめて、医学部医学科の関係施設は作れし。ホエー(保健衛生)のクズが邪魔だし」

「実習がある学科には、山キャンは手狭です」

「経済持っていきよるんなら、文学のチャイ語連中も持っていきー。あいつら要らんねん」

「法学部も政治とは距離を置きたいよ」

「各学部で不満が噴出してますね」

無気力な学生でも、学舎の体勢には煩くならざるを得ないようだ。


「ほんで、松崎や。経済なんやろ?」

「多分。俺らと授業で会わないっつーことは、消去法で経済だろうな」

「授業やのうて、バイトのシフトばっかり埋めよってからに、学生やないわ」

「てか、ハッセーが来たんだから起こそうし」

「どなたが起こします?」

「わえ、試しにやっちゃるわ」

仲本が松崎の体を揺さぶる。


「ほー、起きい。起きんかい。ハッセー来はったさけ、会議すんで」

「……………………」

松崎は夢の世界に入り浸っている。現に戻る気配はない。


「あかん、起きひん」

「ところで、松崎が起きてるところって見たことがないよな」

「確かにだし。サークルもほとんど来ないし。今日が1ヶ月ぶり?」

「いらっしゃっても、今みたいに寝てらっしゃいますよね」

「ほんまに、何で大学生なったんやろ」

「で、どうやって起こす?」

「結構、強めに揺すってんで? そいでも起きひんさけ、どもならんやいしょ」

「チューで起きるんじゃないか?」

「ハッセー、滑ってんで?」

「誰が松崎とすんだし」

「メルヘンな起こし方ですね」

「自分で言って後悔した」

「王子さんの口付けで姫が目覚ますのはようあるパターンなんやけどな」

「逆ってないよな」

「あるし。女が男にってパターンの童話」

「あるんか?」

「ありますよ。確か、カエルの王子様ですね」

「カエル、王子様……そもそも、根拠が童話だしな」

「言い出しっぺがそないなこと言うなよー」

「キスで起こすって言ったの、ハッセーだし」

「しかし、松崎さんを起こさないと話が進みませんよ」

「そやったわ」

「本題、どう起こすよ?」

4人は目の前の、地層となる日まで泥のように眠りこける松崎を凝視した。


「……今日、毎度のごとく、松崎はバイトだよな?」

「そのはずや。続いとる限りは」

「だとすれば……友里恵」

「はい、私ですか?」

「頼みがある。ちょっと、芝居を打ってくれないか?」

「芝居を、ですか?」

「ああ」

そう言うと、長谷川は友里恵に耳打ちする。友里恵は長谷川の言うことにこくこくと頷く。


「……シチュエーションは理解したか? よし、友里恵。ゴー」

「は、はい」

軽く友里恵の肩を叩いて送り出す長谷川。それをスイッチに、友里恵も自らの芝居の世界を広げる。


「ふぅ……」

まず退室する友里恵。この部屋を舞台に用いる。彼女の演技で、部屋は何処かの世界になるのだろう。長谷川たちは彼女の一挙手一投足を見守った。


「さぁて、と」

再び入室した友里恵の手にはスマートフォンと、どこで手に入れたのかは不明だが、缶コーヒーが握られていた。


「……………………」

スマートフォンを弄りながら、普段より足音を意識的に立てて松崎に歩み寄る。歩き方は品性をやや欠いて、がに股で歩いていた。


「ここ、座るよー」

予め、長谷川たちは彼女の世界を壊さないように部屋の隅で存在感を消していた。彼女の世界には、彼女と松崎の二人きりだ。松崎が横たわるソファーに腰を落とす友里恵。体重で沈み込むソファー、その様子を感じてか、松崎の瞼が僅かに動く。


「はぁ」

溜め息を一つ吐き、手にした缶コーヒーを振る。そして、その缶をローテーブルに置いた。足音と同様に、態と音を目立たせて。


「松っちゃーん」

缶コーヒーをテーブルに置いたまま、プルタブを開ける友里恵。プシュッと音が出る。


「あーし、休憩入っかんねー」

「……はーい」

松崎が一気に目を開けて、むっくりと上体を起こした。まるで、二人が予め打ち合わせでもしたかのように、松崎は目を覚ましたのだ。友里恵の一人エチュードが、二人のアドリブ劇になった瞬間だ。


「「「おおっー!」」」

観客に徹していた長谷川たちは万雷の拍手を友里恵に送った。


「……ふへ? あれ?」

寝ぼけ眼の松崎は辺りを見渡す。彼が思っていた場所と違うからか、夢と現の境にまだいるようだ。


「あれ、高木さん、じゃない?」

「浅野ですよー、松崎さん」

「あ、友里恵ちゃん……おっかしーなぁ、確かに高木さんの声だったんだけどなぁ」

「高木さんとおっしゃるのですか? 私が演じた人は」

「びっくりしたー、本当に高木さんかと思ったぁ」

「松崎、高木て誰な?」

「バイト先のセブンの店長だよ。夜勤シフトはいつも高木店長と一緒でさ、交替で休憩に入るの」

「てか、ハッセーすげえし。友里恵に何て伝えたの?」

「ああ。友里恵には、年上の女性を演じろとだけ。シチュエーションは松崎のバイト先とだけな」

「そえだけか?」

「ああ。缶コーヒーとか、歩き方とか喋り方は友里恵のオリジナルな」

「先に松崎さんが休憩に入ってて、女性の同僚が起こす筋で演じてみたんです」

「いや、びっくりだよ。友里恵ちゃん、高木さんと知り合いなの? 声も行動パターンもそっくりだったし」

「いいえ、面識もないですよ」

「友里恵は立川に住んどるさけ、松崎のバイト先とは反対方向や」

「だよねぇ、おれのバイト先は西荻だし」

「まあ、全ては偶然が生んだ産物だな」

「ハッセー、計算したのかと思ったし」

「行き当たりばったりでラッキーチャンスを掴んだりする、そないなとこあるわいな、ハッセーは」

「いや、年上の女性に起こされた方が効果はあるだろって踏んだことは踏んだんだよな。あとは友里恵の演技力だよ」

「よっ! 女優! ナベプロからスカウト来んで!」

仲本が友里恵を囃し立てる。


「ほっ、誉めすぎですよ!」

「友里恵、演劇やってるんだ。シオ、知らなかったし」

「やってないですよ」

「ほんまか?」

「ええ。芝居や舞台は好きですが、観る専門ですし」

「それにしても、素人より演技力あったし」

「そや。普段の声もよう通るし、ボイトレでもやっとるんか?」

「してないですよー。長谷川さん、何で私に芝居をさせたんですか?」

「それは配役の関係と、これ」

ソファーに置いてあった白いDSを手に取る長谷川。


「あっ、それは私の……!」

「知ってる。このDSを見て、詩織より適任かなと思ってさ」

DSの上部には、乙女ゲーのキャラクターのステッカーが貼ってある。戦国時代の武人が平成のデザインで現代化し、何とも耽美な優男になっている。


「ちょ、ちょっと! 長谷川さん!」

慌ててDSを隠そうとする友里恵。恥ずかしがるものを、なぜ人目につくようにDSに装飾したのか。


「シオもゲーム好きだけど、友里恵が好きなのはやったことないし。どんなゲームなの?」

「そっ、それは……」

「わえの学科の女子連中もそないなゲームやっとるわ。何な、戦国BASARAか?」

「違います! とうらぶです!」

「何て? ToLOVEる?」

「と・う・ら・ぶ、です! 正式名称は刀剣乱舞です!」

「何なそえ? 女向けのときメモか?」

「全然違います! 寧ろ、女性向けの艦これです!」

「艦これは知ってんで! 艦隊の擬人化やろ。わえもやっとった」

「刀剣乱舞は刀が擬人化したものです!」

「なーんな、そやったんかぁ」

仲本は理解したようだ。しかし、他の者は置いてきぼりを食らっている。


「因みに、私の推し刀は鶴丸国永です!」

「知らんわいしょ、誰な?」

「仲本、訊くなし。友里恵ってば、とうらぶになると話がエンドレスになるから」

「そうなんか。ほいだら、訊かんわ」

「ちょ、ちょっと!」

「この前、友里恵に博物館まで連れてかれたし。シオ、刀に興味ねーし」

「医学科では流行ってないんですか?」

「ぜーんぜん。ポケモン廃人ばっかりだし」

「医学科は男だらけだしな」

「ところで、とうらぶと私が演技に何の関係があるんですか?」

「ああ。とうらぶとかその手のゲーム好きって、キャラクターの声優にもハマるだろ? ゲーム中の台詞も暗記して、呟いてるはずだ。そこから演劇とかに足を踏み入れるのが少なくないしな」

「うっ……!」

長谷川の読みは図星のようだ。友里恵が俯く。


「たっ、確かに……鶴丸の台詞は丸暗記しています」

「誰もおらん場所で台詞呟いとんのとちゃう?」

「あ、当たってます……」

「だからか。友里恵、最近たまにボーイッシュな低音を出すし」

「練習してんのな」

「くっ……!」

頬を赤らめる友里恵。重症だ。


「ほっ、ほら! 松崎さんも起きたことですし、会議を始めませんか!?」

「友里恵、逃げようとしてるし」

「まあ、ええわ。松崎、ええか?」

「うん。23時まで暇だから大丈夫だよー」

「そんなには引っ張らないけどな」


一同は部屋の中央のテーブルに就いた。

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