昨夜、UFOが残したミステリーサークルを発見したのは良いけれど……
変な展開になってきました。
「「「「こ……これが、『ミステリーサークル』――――!!!!!!!」」」」
思わず戦慄! 俺達の楽園『聖コンヴァルテ大学』の未だ顔写真すら確認していない創設者のケセラセラ理念も恐ろしくぶっ飛ぶ規模でそれは広がっていた。
俺達日本の農耕民族がやっとこさ銅鐸やら青銅器を卒業し、古墳やらを形成し始めた時代。
同じ頃南米ペルーで発生した未だ用途目的が解明されていない『ナスカの地上絵』や、もっと遡れば紀元前2000年頃にイギリスでメンヒルと呼ばれる立石を30個配置し、天文学の祭祀場としてメッチャ頑張ってた『ストーンヘンジ』等、まあどちらも直接見た事は無いけれど世間様の謎や神秘。都市伝説を1ターンでモロに喰らったね。兎に角まあ凄い。笑劇……じゃない衝撃である。
先程列挙した代物を彷彿とさせるヘンテコな模様が草原のステップ地帯に出来ていた。
場所は静岡県伊豆市の名も知られていない山の登頂付近。かつて存在したカルデラ湖の名残か、少し窪んだ丘の中に出来ている。初めて『聖コンヴァルテ大学』のオカルト学部オカルト学科に所属している意義を見出した。
俺達が通う大学の創立者コンヴァルテ・ガルシア殿下に拍手喝采を送りたい。ケセラセラ! いや、ホント真剣に。だけども――
――そんでどうする?
見る物は見たやるべき目的も一応果たした。山頂のカルデラ。そこの草原ステップ地帯にUFOが作った幾何学模様の魔法陣確認も見事に完膚なきまでにしてやられた。
「そんでどうする?」
俺達4人組が同時に思っていた事を先駆けで制したのは深谷。さっきまで記憶喪失だった癖に生意気な。
「取り敢えず写真取ろうぜ。これも俺達の夏合宿の大事な記念としてな。何か写らなきゃ良いけど」
次に動いたのは鳩ヶ谷だ。コイツお気楽で良いな。近い将来の進路とかまるで考えていないのがこういったタイプの人間だ。俺も同じなので奴の言葉も理に適っていた。半分汗でジメッとしたハーフパンツのポケットからスマホを俺も取り出します。
パシャパシャパシャパシャ!!!!!!!
まるで羽田空港に到着したハリウッド映画の超メジャー有名人やもしくはワールドカップから帰国したサッカー日本代表の列が今目の前を通り過ぎたかのような熱写をその例の『ミステリーサークル』に送る。
不意に疑問が浮かぶ。
可笑しな事にあれだけニュース速報の報道番組で騒いでいたってのに撮影クルーやその手のアナウンサー。ましてやここの地元住民。本来いるべきはずの大衆、野次馬が全くいない。
いるのはアブラゼミやらミンミンゼミやらツクツクボウシやらヒグラシやらクマゼミやらの1週間分のオーケストラ。ついでに言わせて貰うと――
――辺りは既に夕闇に変わってきていた。
そんな折、俺の胸中にあの青年――タクシー運転手の言葉が過ぎる。
――君達があそこに行くには100年……安く見積もっても10年は早いですよ――
最早、サッカー日本代表のFIFAランクが上がったのどうこう言っている場合ではない。
「さて――と、帰ろうか? あれ? 今気付いたんだけどスマホが圏外になってるよ」
のほほんとケセラセラな気分で女マネージャーの浦和はポツリと呟いた。
俺は遂に確信する。
「なあ、俺達ってどこからここにやって来たんだっけか?」
ご理解いただけたでしょうか? そう。俺達は名も知らぬ伊豆の山中で……
見事に遭難した。
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