ミステリーサークルはUFOが作ったと仮定されているが殆どが偽造で、その他は未だ解明されていない。
文字数はそんなに多くないです。楽しんでくれれば幸いです。
伊豆駅のホームに降りた俺達『聖コンヴァルテ大学』のフットサルサークルメンバーバカ4人組はそのまま駅をエスケープし、駅前周辺の状況を何気なく俯瞰していた。
さすがは観光地。静岡県と言えば伊豆でしょ! と、主張している様な街並みが歓楽街として大いに賑わっていた。駅構内からはあまり想像していなかった人の群れにやや圧倒される。
バス乗り場もタクシー乗り場も無視して観光がてらそのまま徒歩でホテルや旅館の類を探す。
基本ホテル等がある場所は、急な傾斜の山道の途中や海岸線に沿ってちょっとしたビル群の様に立ち並ぶ形でひしめき合っており、正に東京で言えばラーメン店の激戦区を連想させる具合でしのぎを削って競い合っている。四季折々に至るまであらゆる宣伝をフルに発揮して春は桜、夏は海、秋は紅葉、冬は温泉と兎にも角にも頑張っている。この不景気。どこも経営難に喘いでいるのだ。
因みに海岸線とはここでは伊豆半島の事を差す。
しばらく歩いていてもロープレの様に事は上手く運ばず何も見つからなかったので、俺達バカ一行はまた駅前へとぐるりと迂回して戻り、タクシー乗り場の前で一時停止した。
「どうする? 何か思っていたより普通だぞ」と俺、川口は冷静に言の葉を紡いだ。
「マックもあるし、その内ユニクロ辺りが伊豆の消費者である若者を標的に企業規模拡大してこの駅前にドカンと一発出来上がりそうだよね」と、こちらは浦和。
「何か都会だか田舎だかよく分からん街だな。さっき電車の窓から海を見た時のテンションと感動を返してくれ」と、鳩ケ谷。もうお前は物より思い出プライスレスよりもタイム伊豆マネーかよ。
「皆、ゲーセンに行かない?」ゲーオタは伊豆くんだりにまで来てもゲーオタだった。
「しゃーねえな。ホラ、タクシー乗るぞ。皆」と、俺。
「「「はーい」」」と、他3名様。
こんな奴等とつるんでも仕方がない。大した収穫にはなりそうもなかったので、取り敢えずタクシーへと乗り込む。
タクシーの運ちゃんはまだ、二十歳半ばのこう言っちゃなんだが好青年だった。
「どちらへ行かれますか?」
「あのー1つ聞いていいですか?」と、助手席に跨った俺は逆に問い返す。
「何でしょうか? もしかして例の事件ですかね。UFOが作るミステリーサークル」
「そうです! それです! 実はそれ目当てで伊豆に来たんですよ~ハッハッハ!」
「なので、現場に一番近い山荘やホテルに連れてって下さい……って解釈で宜しいんですか?」
「ズバリ、その通りです」
若いタクシー運転手の好青年はあいたた~と軽くもんどりうって、続けて変な発言をする。とても不可解な。
「君達はまだ学生さんだよね? あそこに行くには100年……安く見積もっても10年は早いですよ」
「はい?」何言ってやがるんだこのオッサンは――と言いたげな鳩ヶ谷の無表情がバックミラー越しに見えた。残念な事に俺もそれには同感。
「まあ、良いですけど。後で後悔しても知りませんよ」
タクシーは何事もなかったかの様に出発。駅を挟んで太平洋の広がる海岸とは逆の方向。北の山道へと走り出した。
俺達バカ一行はその言葉の真意に気付かずに何か無意識の中枢で一抹の不安を覚えた。
*
タクシー代はモチのロンで割り勘。女マネージャーの浦和様はどこかしら不服そうにしている。男軍団3名様の説得により渋々OKした。全くもって面倒臭い。この世の女達は誰もがそうなのか?
やっとこさ辿り着いたのは、丸太や木で組まれた小奇麗なコテージ。どこかしらログハウスを思わせる。
「わー。思ってたよりも洒落てるじゃない!」
さすがは俺が起ち上げたフットサルサークルメンバー唯一の女の子。目の前の山林の中、鬱蒼と佇む白いコテージに目が釘付けになっている。逆に俺は宿泊費がいくらになるのか心配。
感動もそのままにすぐさまエントランスを潜ってロビーに直行。チェックインを済ませた後、従業員に部屋へと案内された。
さすがに1人一部屋となると金銭的にメッチャヤバイので、しょうがなく4人一部屋の大部屋にする事に……。この時またギャーギャー騒いだのは浦和です。
「私、これでも女なのよ」
等と何だかよく分からない事をスポーツマンシップに則り宣言。これ以上その宣告なる愚痴を聞かされるのもアレなので、彼女のベッドの半径5メートル以内には近付かない事を俺達はスポーツマンシップに則り宣言。この誓いの儀式はその後、10分間に3回も続いた。
そんな事もあってか時刻は既に夕方のおやつの時間をとうに過ぎていた。山林の中にコテージがある為か、本来の外よりもいっそう薄暗く見えた。
本日のミッションはひとまず終了。明日以降の作戦会議に入る。
「けど、ここから一体どこへ歩けば例のミステリーサークルは見つかるんだろうね?」
ミーティングの初っ端当然の言葉を放つ深谷。
「確かにな。今の所、何事も無く平然と俺達は目的地に近付いてる訳だが……あのタクシーの運転手の発言がやったら不可解極まりない」
鳩ヶ谷の発言も無理はない。俺は先程、30分くらい前に年若きタクシーの運転手の意味深な台詞を反芻してみる。
――あそこに行くには100年……安く見積もっても10年は早いですよ――
「仕方ねーこうなりゃ調査だ!」このフットサルサークルメンバーのリーダーである俺は立ち上がる!
「調査ー?」面倒臭そうな鳩ヶ谷。
「何の?」疑問満々の深谷。
「私、お風呂入りたい」浦和です。
全く統率力の執れていない年若き愉快な仲間達を一喝して、俺は叫ぶ!
「例のUFOが現れた現場。ミステリーサークルのある場所をよく知ってるのは現地の人だろ? そこで聞き込みをするんだよ! 何か良い情報が得られるかもしれない」
――なーるへそ――
と、大して驚きもしないまま俺達の勝手気儘なやってらんねー聞き込み調査は始まる。
この時までんなもん近代兵器スマホでググればある程度分かる事にも気付かずに……!!!
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