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それが最後だと言うなら、私はあなたと  作者: 奏多


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くらげは黒き門をくぐる 4

 気づけば、暗く簡素な部屋にいた。


 ジークリードは辺りを見回す。

 むき出しの石壁には、タペストリーが一枚掛かっているだけだ。小さな暖炉があるほかは、三つ木の寝台があるだけだ。

 この造りには覚えがある。軍の人間を町に滞在させるための宿舎だ。


「そうか。彼女が読むと、自動的に一定時間外へ出るのだったか」


 本の魔術師ベルタの術を思い出し、ジークリードはひとりごとを呟く。

 本来なら、ベルタが自分の術の発動具合からジークリードを見つけ出すための仕掛けだ。が、ベルタはジークリードのように遠くまで一気に移動できない。

 リンデスティールまで来ているとは分かるだろうし、追跡はしてくるだろうが、当面問題はないだろう。


 そしてジークリードは、三つある寝台のうち窓側に眠っている少女の姿を見下ろす。

 すでに本の世界から逃れたはずのユーディットは、そのまま眠りに落ちたようだ。


 少し、眉を寄せて苦しそうな表情をしている。穏やかな夢を見ているわけではないようだ。

 どうやらリンデスティールへ移動した後も、苦労をかけたらしい上、本の試練をジークリードと一緒に受けたような状態になってしまった。


「君がいなかったら、試練が通過できなかったかもしれないな」


 ジークリードは呟く。

 よもや、闇を受け入れるというのが、ああいう意味だとは思わなかったのだ。

 ジークリード一人では、ずっと白い影にとりかこまれた状態のまま一歩も進めなかっただろう。


 いや、もし本を開いてくれたのがユーディットでなければ。答えにたどり着けるような助言を、そして努力をしてくれたかわからない。

 ジークリードは、自分の左肩にそっと手で触る。

 彼女が自分から、寄り添うように頬をふれさせた場所だ。


 その時の事を思うと、闇に浸って思い出した心の中の嵐が、緩んでほどけていくように感じられた。

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