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螺旋のきざはし  作者: hake
第二章
109/110

15.新たな出会い



「少しくらい、助太刀下さっても良かったのではありませんか」



 春告鳥フォルタナの翼亭から戦神(ケルノス)神殿へ向かう道すがら、ぽろりと口をついて出たマリアベルの不満の言葉に、少し前を歩いていたウィリバルトは彼女の方へ目を向けて、僅かに意外そうな顔をした。



 ――あの後、マリアベルは興味本位のベンとピーター、そしてそこにシアンまでもが加わり、“貴族であるウィリバルトとどういう経緯で知り合ったのか”、“どのような関係なのか”、“これからどこへ行くのか”――などと、あれやこれやと質問攻めにあったのだ。

 元来真っ直ぐな気性で、嘘偽(うそいつわ)りとは縁遠い彼女にとって、その場しのぎの適当な言葉がすぐに出てくるはずもなく、かといって彼らを巻き込まない為にも正直に話しをするわけにも行かず、非常に対応に苦慮をした。

 その間、何度かマリアベルはウィリバルトの方へ助けを求めるように視線を送ったのだが、彼は何やらシンと話し込んでおり、彼女に気付いていたであろうに、応えてはくれなかったのだ。



 不貞腐れ顔のマリアベルの顔を見たウィリバルトは微苦笑して足を止め、彼女が追い付くのを待った。それから、隣に来たマリアベルに心なしか柔らかい声音で「それは申し訳ありません。少々手が離せなかったもので」と言った。

 その言い様が、何だか“いじけた子どもをあやす年長者”のように感じて、マリアベルは更に眉間に皺を寄せた。すると、一瞬目を丸くしたウィリバルトが、思わず、といった(てい)でくつくつと笑った。予想外の反応にマリアベルが呆気に取られていると、彼は早々に笑いを収めてから次の言葉を口にした。


「そんなにへそを曲げないで下さい」


 へそって! と反論しようマリアベルが口を開く前に、彼は言葉を続けた。


「お詫びに昼食をご馳走しますから」

「え」


 “ご馳走”の言葉に、怒っていた事も忘れてきょとんと目を丸くしたマリアベルを見て、ウィリバルトは口元を隠す様に片手をやって、首を傾げた。


「おや、食事ではご不満ですか?」

「あ、いや、不満ではない! です! 行きたいです!」


 慌ててマリアベルが(かぶり)を振って強く否定すると、彼は小さく一つ頷いて視線を動かした。


「北区に春風(ヒュッリテ)()竪琴(リューテ)亭という店があります。ご存知でしょうか」

「いえ、初耳です」

戦神(ケルノス)神殿からそう遠く離れてはいませんから、ご案内しましょう」

「! はい!」


 パッと顔を輝かせて返答するマリアベルを確認し、一つ頷くと彼は再び前を向いて歩き始めた。



 数歩遅れて歩きながら、ウィリバルトの後ろ頭を見上げつつ、マリアベルは今しがたの彼の笑い顔を思い返した。


 ――出会った当初のウィリバルトは、慇懃な態度を崩さず“笑う”といっても口角を僅かに上げる程度だった。

 しかし、先ほど時折覗かせた笑顔は、今までのものとは違った。なんというか、心から(あふ)れ出た感情がそのまま顔に現れたような、――彼の素顔を垣間見たような、そんな印象を受けた。

 そして、今回以外にも、会う度に少しずつウィリバルトの為人(ひととなり)が薄っすらと感じられることが度々(たびたび)ある。


 ――少しは、自分に心を開き始めてくれているのだろうか。


 そう考えると、嬉しいような、誇らしいような、――自分でもよく分からない感情が込み上げてきて、マリアベルは前を歩く彼に気付かれないように、こっそりと表情を(ほころ)ばせた。



* * * * * * * * * * * * * * *



 戦神(ケルノス)神殿に着いた後、マリアベルとウィリバルトは各々(おのおの)で存分に鍛錬を行って午前中を過ごした。



 この神殿には、戦神(ケルノス)信徒の他に様々な者が鍛錬に訪れる。

 自警団や騎士団、他の神々の信徒で神殿を守る者、冒険者達――それらが己と実力の近い相手と手合わせをしたり、共に訓練をしたり、あるいは情報を交換、または共有をしたり――やっている事は異なるが、ある意味で言えば“貴族の社交場(サロン)”に近いもの――がある。

 実際、戦神(ケルノス)神殿お抱えの神官戦士団の団長、カルロス・ジアンと、自警団団長であるギルバート・タウンゼントが訓練場で顔を合わせる事もあり、実力者同士の(すさ)まじい手合わせをする事もあれば、肩を並べて同じ訓練を行いつつ雑談をしていることもあった。


 マリアベルはウィリバルトと、カルロスとギルバートのように、お互い剣を交えて技術を高め合う関係をこれから(きず)いていきたいと思っていた。そしてそれは、彼女の理想でもあった。であるから、身支度を整えた彼女は、特に深く考えず当然のように彼手合わせするつもりでウィリバルトに声を掛けた。


 しかし、彼はその誘いをアッサリと却下した。


 ――一口(ひとくち)に「鍛錬」と言っても、武を(たっと)ぶルーエンハイム家に生まれ、幼少期から剣を手にしていたウィリバルトと、成人を迎えてからほぼ独学で剣を握り始めたマリアベルとは、積み上げて来た修練の期間と技術の度合いが異なる。故に、素地に大きな開きがあることは歴然だ。

 だから、しばらくの間はマリアベルは基礎を、ウィリバルトは応用を、各々(おのおの)で鍛錬し、ある程度差が縮まった段階で手合わせをした方が、双方にとって利がある。


 やんわりとそのことをウィリバルトに説明をされたマリアベルは、残念に思いながらも引き下がることしか出来なかった。

 星祭の夜や、ネアを送った帰り道で賊に襲われた際に、自分と彼の力量の差は痛感していた。まずはその差を埋める為に、腕を鍛えなければならないのは、分かっている。――分かっているのだが、やはり不満はある。せっかく共に戦神(ケルノス)神殿に通うのに、行った先では別行動なんて、単純に面白くない。

 だから、心の中でだけ「絶対いつか、手合わせしてもらう!」と力強く叫び、めらめらと闘志を燃やしながら訓練用の剣で素振りを始めた。


 そんなマリアベルを、彼女に気取られぬように僅かに目を細めてしばし見守ってから、ウィリバルトも自身の鍛錬を始めたのだった。



 鍛錬を始めてどのくらい時間が経ったか――遠くから高く響く鐘の音が聞こえた。中央広場にある鐘楼の正午の鐘だ。


 それを合図に、鍛錬をしていた者の半数以上が、使っていた剣を倉庫に片付け、神殿の外へ出たり、弁当を手に休憩をし始めた。

 人がまばらになった鍛錬場で、無心に剣を振り続けていたマリアベルに、ウィリバルトが声を掛けた。


「我々もそろそろ向かいましょうか」

「……ハッ せい! とう!!」

「ベル嬢」

「てい! や!!」

春風(ヒュッリテ)()竪琴(リューテ)亭は、肉料理(ヴィアンド)に定評があるそうですよ」

「!!」


 それまでは全くウィリバルトの声が耳に届いていなかったマリアベルだが、“肉料理(ヴィアンド)”という単語に瞬時に反応して手を止めて彼の方を見た。それから、周囲の様子を見て「あ!」と声を上げると、慌ててウィリバルトへ謝罪した。


「申し訳ありません。もう昼時なんですね。つい、剣を振るのに没頭していました」

「そのようですね。ですが、午後も鍛錬をするおつもりでしたら、昼食はきちんととった方が宜しいかと」


 やんわりと微笑んで、ウィリバルトはマリアベルの手から練習用の剣を取り上げた。


「これは私が倉庫へ片付けておきます」

「えっ あ、いや、自分で片付けに」

「貴女は支度をどうぞ」


 “支度”って――と言いかけて、マリアベルは自分の格好に気付いた。以前よりは過ごしやすい季節になったとはいえ、まだまだ日中の気温は高い。そんな中、夢中で剣を振り回していた自分は、汗だくで髪もぼさぼさだ。

 ハッとしてから、急に羞恥を覚えてしまい、マリアベルは身を縮こまらせながら手櫛で前髪を直しつつ、小さな声で「はい」と答えた。



* * * * * * * * * * * * * * *



 港町クナートの北区にある“春風(ヒュッリテ)()竪琴(リューテ)亭”という店は、石造りの壁は美しい緑の蔦が絵画の様に彩り、入り口の扉は見るからに重厚そうな樫の木で造られていた。

 その扉の上には鋼製の細かな花の装飾が施された灯篭がある。夜、灯りがともると、この灯篭の美しい装飾が石畳の路上に影絵のように映し出され、きっと利用客の目を楽しませてくれることだろう。


 ウィリバルトにエスコートされ店内に入ると、すぐに扉脇に立っていた係の男性が気付き丁寧に歓迎の言葉を述べた。それから、流れるような動作で2人を窓際の4人座りのテーブルへと案内した。

 席についてほどなくして食前酒のキール、付出し(アミュズ・ブーシエ)、前菜、と、遅れず急がず、といった絶妙なタイミングで供される。フロアを行き来する店員の所作も無駄が無く洗練されたものだ。

 あからさまにならないように気を付けつつ店内を見回すと、やはり身なりの良い客ばかりだ。恐らくこの町や船旅でここに立ち寄った、富裕層の人々の御用達の店なのだろう。


 ウィリバルトが言っていた肉料理(ヴィアンド)は、今日は雉肉(フェザン)(もも)のポワレだった。下味をつけた肉を、皮がカリッとなるように焼き上げ、皿に乗せた後に(きじ)の骨と数種類の香草(ハーブ)を煮込んで作ったスープを掛けたものだ。

 臭みが全く無く、非常にコクがある雉肉(フェザン)で作られたこの店の肉料理(ヴィアンド)は、ティタンブルグ家の料理人と遜色がないほどの出来栄えで、見た目も味も非の打ちどころが無かった。



 食後に温かい紅茶と共に出てきたアーモンドクリームの入ったブリゼ生地の焼き菓子と、ラム酒の利いた栗の渋皮煮を食べ終わり、マリアベルは満足げに息を吐こうとしてそのまま飲み込んだ。


「とても美味しかったです。呼吸で息を吐くのが勿体ないくらいです」


 大真面目にそう言うと、ウィリバルトはクスリと笑った。


「苦しくなるでしょうから、呼吸はして下さい」

「しますけどっ 最後に食べた栗の渋皮煮。栗の香りとラム酒の香りが混然一体となって――ああ、まだ余韻が」

「お気に召して頂けたようですね」

「大満足です! 良いお店を教えて頂き、ありがとうございます」


 満面の笑顔で礼を言うと、彼は少し驚いた顔をした後、「何よりです」と柔らかく微笑んだ。



 支払いを済ませて店の外に出ると、思いがけず強い風が通り過ぎた。小柄なマリアベルが驚いて僅かにバランスを崩すと、ウィリバルトがするりと風上に立ち、彼女へ腕を差し出した。貴族社会で長らく過ごしていた彼女は、迷う事無くその腕に手を――置いてから、いや、今は令嬢でも何でもないし、と気付いてチラリとウィリバルトを見上げる。彼の方は全く気にした様子もなく、まるでこうする事が当然、とまで思っていそうなほど、自然体でゆっくりと歩き始めた。ここで、慌てて腕から手を外すのも(はばか)られて、マリアベルも彼に従って歩き始めた。

 その直後、不意にウィリバルトが空いている方の手を上にやり、白いヒラヒラとした何かを宙で(とら)えた。突然のことに驚いた後、すぐに気を取り直してマリアベルは彼の手にあるものをまじまじと見た。


「――それは……帽子、でしょうか?」

「そのようですね。先ほど強い風が吹きましたから、どなたかのものが飛ばされてしまったのでしょう」


 その白い帽子は、つばが広く縁に上品な刺繍、恐らく後ろ側になる部分には薄い生地のヴェールがついていた。見るからに高級な品と分かる。

 マリアベルは思わず持ち主を探して辺りをきょろきょろと見まわした。すると、中央広場方面の道から、お仕着せを着た女性が足がもつれそうになりながら走って来るのが見えた。


「ウィリバルト様、あちらの女性では」


 違う方向を向いていたウィリバルトに声を掛けて、視線で女性を示す。彼は頷くと、マリアベルをエスコートしたまま女性の方へと歩み寄った。


「失礼、もしやこちらをお探しではありませんか?」


 一瞬ぎょっとした女性は、次いでウィリバルトの手にある帽子を見て目を皿のようにした。


「あぁっ そ、そうです! それは私の(あるじ)の帽子です……!」

「左様ですか。では、どうぞ」


 すんなりと手渡すウィリバルトに、相手の女性はやや拍子抜けしたような表情で帽子を受取った。


「メアリ、見付かりましたか?」


 マリアベルとウィリバルト、そしてメアリと呼ばれた女性は、声がした方を見やった。そこには上品でシンプルなドレスを身に纏った年配の女性が立っていた。


「はい、奥様。こちらの方々が拾って下さいました」

「まぁ、そうだったの」


 お仕着せの女性から帽子を受け取ると、年配の女性はマリアベルとウィリバルトに向き直って微笑んだ。


「お手を(わずら)わせてしまってごめんなさいね。そして、ありがとうございます。この帽子は、つい先日に主人が贈ってくれた大切な帽子なので、本当に助かりました」

偶々(たまたま)手が届いたまでですから、お気になさらず」

「まぁ、謙虚な方ですね」


 口元を片手で隠し、ふふ、と品良く笑うと、彼女は「失礼しますね」と言いながら、手にしていた帽子を自身の頭に被せた。


「少し前に暑気中(しょきあた)りで寝込んでしまった事があって……外ではこの帽子を常に被る様に、と主人に言われてますの」


 はにかみながらそういう女性とその夫は、きっと仲の良い夫婦なのだろう。その夫からの贈り物の帽子が彼女の手に戻って良かった、と自分まで嬉しくなってしまい、マリアベルは表情を(ほころ)ばせた。


「あ、そうだわ。名乗るのが遅れてしまい、ごめんなさい。わたくしはグレース・レイモンドと申します。この町の東区に居を構えております。この子は我が家の使用人のメアリです」


 年配の女性――グレースが名乗り、続けてお仕着せの女性を紹介した。ウィリバルトとマリアベルもそれぞれ名乗ると、彼女は小首を傾げた。


「ウィリバルト様はルーエンハイム家の方との事ですが、こちらにはご旅行でいらっしゃったの?」


 一瞬、ウィリバルトの気配に緊張が走った。だが、それに気付いたのは隣にいたマリアベルだけだっただろう。彼はすぐに、顔に涼やかな微笑みを浮かべると何事も無かったかのように口を開いた。


「ええ、仰る通りです。レイモンド夫人は、ルーエンハイム家をご存知でしたか」

「わたくしの姪がリヴィエに嫁いでおりますの。その際、ルーエンハイム侯にもご挨拶をさせて頂きました」


 にこにこと返答するレイモンド夫人からは、悪意も他意も感じられない。マリアベルは僅かにウィリバルトの横顔へ視線を向けた。ちょうど彼もこちらを見たところだったのか、目が合う。しかし、彼はすぐに視線をレイモンド夫人に戻した。


「左様ですか。存じ上げず失礼致しました」

「もう随分と前の事ですから、当然ですわ。お気になさらないで?」


 気を悪くした風でも無く、彼女は穏やかな笑顔のまま頷いた。――その裏表の無い表情を見て、マリアベルは単純に「この人はきっと良い人だ」と信用し、内心で安堵した。

 対するウィリバルトは、相変わらず腹の底が見えない微笑みを浮かべたままだ。マリアベルが出会った当初によく目にした本心の見えない顔で、レイモンド夫人へ自身の事を“現在は鍛錬も兼ねてこの町に冒険者として滞在している”と説明した。

 そして、マリアベルの事は“冒険者仲間”として、さも本当のことであるかのように――いや、実際は婚約者同士といった関係は無くなり、マリアベルは冒険者として生活しているのだから、その彼女と共に鍛錬をしているウィリバルトも、冒険者、と言えなくもないのかもしれないが――まるで、元から冒険者同士として出会ったかのように説明した。

 全て嘘、というわけではないが、真実ではない事を微笑みを浮かべたまま平然と話すウィリバルトに対し、何の疑いも持たずに感心したように彼の説明に相槌を打ったり、アレコレと興味津々で尋ねたり、と、話に花を咲かせているレイモンド夫人を見て、マリアベルは何だか申し訳なく感じてしまい、なかなか会話に加われずにいた。



 そうしてしばらく話し込んだ後、


「奥様、そろそろ……」


 使用人の女性――メアリが、躊躇いがちにレイモンド夫人に声を掛けた。彼女は「あら、そうだったわね」と目を丸くした後、マリアベルとウィリバルトの方へ向き直って優雅に一礼した。


「話し込んでしまってごめんなさい。まだまだお話しを伺いたいのですけど、そろそろお(いとま)しますわね」

「こちらこそ、お引止めして申し訳ない」


 慌ててマリアベルが礼を返すと、レイモンド夫人は柔らかく表情を(ほころ)ばせた。


「また今度、ゆっくりとお話しして下さる?」

「はい、喜んで」

「まぁ嬉しい」


 うふふ、と少女のように笑うレイモンド夫人は、悪人には見えない。マリアベルは、未だに外面の良い微笑みを浮かべて飄々(ひょうひょう)としているいるウィリバルトを、無性に肘で小突きたくなったが(かろ)うじて我慢して軽く睨むに留めた。――が、次のレイモンド夫人の言葉で、些細(ささい)苛立(いらだ)ちは霧散(むさん)した。


「そうだわ。フィリネア様の事はご存知?」


 何故、レイモンド夫人がネアの事を……と疑問が浮かんだが、すぐにネアも東区に住んでいる事を思い出し、納得した。


「はい、何度か鍛錬をご一緒した事があります」


 マリアベルが頷きながら答えると、レイモンド夫人はぱっと顔を輝かせた。


「わたくし、随分前にフィリネア様のご友人の方をお茶にお誘いしていましたの。それから春先の妖魔(モンスター)の騒動があったでしょう? その後、なかなかタイミングが無く時間だけが経ってしまって……ずっと心残りでおりましたのよ」

「ネア殿の――()()()、ですか」


 はて、誰だろう――と首を傾げる。だが、ネアとは戦神(ケルノス)神殿でたまに顔を合わせるだけなのだから、マリアベルの知らない友人など沢山いてもおかしくはないだろう。


「可能であれば、フィリネア様とご友人の方もご一緒にいらして下さいません?」

「かしこまりました。ネア殿にお会いした際に、お誘いしてみます」


 お任せあれ、とばかりに身を反らせて片手で胸を打つと、レイモンド夫人は感謝の言葉を、そして隣に立つウィリバルトはやや呆れた視線を、マリアベルに送ったのだった。



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