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4. ヒロイン登場!!

 入学から1年が経ちとうとうヒロインであるサクラ・イロイダが転校してきた。

 陶磁器のように白く滑らかな肌、ピンクブロンドの巻き毛、髪と同じ桜色のぷっくりとした唇、そんな彼女を目にした男子は一様に見とれていた。


「あの子、新参者のくせに調子にのっていて気に入りませんわ」


 同じ学園の男子生徒を婚約者に持つ女子生徒たちは影で彼女の悪口をいっていたが、その内容は歯切れの悪いものだった。

 なぜなら、筆記試験、魔法の実技試験においていきなりトップに躍り出て、その実力を見せ付けてきた。

 容姿に関してもいわずもがなであり、欠点といえるものがまるでなかった。これがヒロインの力というものか、はっきりいってチートだね。


 ヒロインが来るまではトップの座に君臨し続けた公爵令嬢が、完全にかませ犬だった。

 とはいうものの、彼女はヒロインに対して明確な敵意はむけず、むしろ静観しているようにすら見えた。

 ゲーム内ではとりまきを使って、彼女に対していやがらせを繰り返すはずだったのだが、どういうことだろうか? まあいい、これで他の生徒たちの注目はヒロインにむいているはずだ。彼女を隠れ蓑にして、やっとこさ動き出すことができる!!

 

 ……と、思っていた時期もありました。



 ヒロインが入ってきたのはうちのクラスだったのまではいい。むしろ、公爵令嬢とヒロインが同じクラスになることで、より熾烈な戦いが始まると期待していた。

 しかし、あろうことか彼女の席はわたしの隣となり、彼女はニッコリと笑いかけながら「モブコさん、よろしくお願いしますね」とのたまってきた。

 教室にいたほかの男子生徒が彼女の笑顔に見とれる中、どうしてこうなったと頭を抱えたくなった。


 さらには、これまで寮では二人部屋を一人でつかっていたのだが、入ってきたのがヒロインだった。

 なんでも、同じ男爵令嬢同士だし気がねもしなくていいだろうという学園からの気配りらしい。たしかに、寮での部屋割りはいろいろなしがらみに関係して、細心の注意を払って割り振られるから、わたしと同室というのはわかる、わかるけど……。


 おかしい、ゲーム内のヒロインは同室となった平民の子と仲良くなって、その子がお助けキャラとしてゲームの進行に関するヒントを色々とくれたはずだった。


「イロイダ様、せっかく同室になりましたところ申しにくいのですが、部屋を替わったほうがよろしくってよ」


「モブコさん、そんなにかしこまらなくてもいいのですよ。サクラと、お呼びください」


 ヒロインはニコニコと邪気のない笑みを浮かべていた。いきなりファーストネームで呼んできたよ。なんだよ、このフレンドリーさは。


「……では、サクラ様。わたくし夜中に、その、少々いびきをたててしまうようでして、きっとあなたの安眠を妨げてしまうので心苦しいですわ」


 わたしが寮に入ったとき、夜中に抜け出すときなど同室の人間がいると邪魔になるので、あれこれと理由をつけて一人にさせてもらっていた。いびきというのもそのうちの一つだった。


「いびきぐらい大丈夫ですわ。うちには小さな妹がいるのですが、うちの子の夜鳴きにくらべればかわいいものです。同室になれたのもきっと何かのご縁です。仲良くしましょう」


 ヒロインはわたしの手をとってニコニコと笑いかけてきた。ここまでされては、否というわけにもいかずわたしはひきつった笑みを浮かべながら「よろしく」と口にした。



 それから、教室内でも「モブコさん、モブコさ~ん」とほわほわした声でわたしに声をかけてきた。やめろ、その名前で呼ぶな、自分がモブだって自覚しちゃうだろ。


「どうしましたか、サクラ様」


「私の分の教科書がまだ届いてないようで、できれば見せていただけないでしょうか?」


 わたしはヒロインと席をくっつけて、教科書をシェアした。その様子をクラスの生徒たちに見られていた。


 休み時間になると、いつものようにモブ勢力の女子生徒と雑談していたのだが


「オーディナリー様は最近イロイダ様と親しくなさっているようですわね」


「彼女も新しい学校にきたばかりでなれないようですから、色々と教えてあげてるだけですわ」


「まあ、お優しいことですわね」


 ヒロインのことをよく思っていない女子から険のある目つきで見られていた。まずい、入学からせっせと築き上げたモブキャラたちとのネットワークが崩壊しそうだ。

 王太子攻略や公爵令嬢の調査より先に、ヒロイン打倒を進めたほうがいいかもしれない。



 ヒロイン、それはまぎれもなくチートキャラ、わたしが5歳のころからせっせとあげてきたステータスを1年たらずで超えてしまうのだから。

 というわけで、あんなん勝てる気がしないので、いろいろと考えていた作戦の内のひとつでいきます。


 題して『さっさとヒロインをゲームクリア』させようさくせーん。わーわーぱちぱちと新しく見つけた誰もこなそうな野原で一人盛り上がっていた。


 ヒロインに決まった相手ができれば、他の女子生徒たちも落ち着くわけだし、男子たちもヒロインの相手に遠慮してこれまでのようにちやほやしなくなるだろう。


 ゲーム知識を使ってヒロインを上手くターゲットとくっつくように誘導していこうと思ったのだが、5人の攻略対象のうち王太子は除外するとして、誰にしようかと検討を始めた。

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