変質
そしてアリバが老夫婦に出会い5年の月日が経過した。
「おはようございます。」
「おはよう。きょうも元気そうでなによりだよ。」
老夫婦と出会いアリバは拾われたのだ。老夫婦の名は夫が「アグレ」妻が「リンザー」二人のもとに来たアリバはアグレの手伝いをしながら日雇いの仕事をして生活している。
「今日は木の実集めの仕事があるので早めに行ってきますね。」
そんなアリバーの言葉におしとやかな声でリンザーが返答する。
「最近は天候が安定しないから気を付けるんだよ。」
「大丈夫だよ。今日は調子がいいんだ!」
そんな返答にアグレが心配そうにこたえる。
「あんまり無茶はダメだよ。元気に帰ってくれればわしらは嬉しいんだから。」
「うん!危険だと思ったらすぐに帰るよ!」
アリバは家の扉を開け出かけるのだった。
10分後…
「あとは毒消しの実と薬草が10個だな。」
早速依頼内容の仕事をこなし早めに帰宅するため作業しているアリバの姿がある。
「おなかすいたなー。」
日持ちする乾燥パンを袋から出しお手製のバターを塗りかぶりつくアリバ。
「我慢できずに食べちゃったけどまぁいっか。」
「このおばあちゃんお手製のバターはなめらかで風味もありバターの甘みが口の中に広がりかといって後味はほんのり甘さが残りくせが少なく美味なんだよな~」
一人朝からバターについて熱弁をしているアリバ。パンを食べ終えかたずけをして作業に戻る。
そのまま森の奥へ向かい始める。
「あんまり薬草ないなー。もうちょうい奥行くかー」
ここら辺の薬草は刈り尽しあまりないので普段は行かない奥に歩みを進める。
その途中大きなヒビが入っている地面があった。
「なんか怖いなー。まぁ土だし大丈夫だろ」
そんな気持ちで歩み進め森の奥につく。
「なかなか薬草もあるな。いい感じだ。」
家を出てから4時間後すべての作業が終了したアリバそのまま森を抜けようと歩き始めるが…
「なんだこの穴真っ暗でなにも見えないな」
アリバの視線の先には深淵に包まれた大きな穴があった。
「こんな穴に落ちたら死ぬ確率100だなこりゃ」
そんなことを言いながら歩みを再開するが…5分後
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!」
凄まじい形相の獣に追いかけられ叫ぶアリバの姿があった。
「食われてたまるかーーー!!」
すると先ほどアリバがのぞいていた大穴が近づいてきた。
「あの熊もどきを落として逃げよう!俺あたまいい!」
馬鹿な一人自讃をはじめたアリバは早速行動に出た。
「よいしょ!!」
大きく跳び丁度よく木にぶら下がり間一髪獣の攻撃をかわし獣はそのまま勢いをころしきることができず
そのまま大穴に吸い込まれていった。
「アブねー。危うく人生終わるところだった。」
「しかし、あの熊もどき一瞬で見えなくなったな。どれだけ深いんだ。」
目の前で起こったことを素直に口にしながら木から降りようとしたのだが
「あれ、この木思ったより細いぞ…。てか折れそうじゃない?」
自分の置かれている状況が理解でき冷や汗をかき始めるアリバ
「だが待てこのまま動けば確実に俺はあの熊もどきと同じ運命をたどる」
「なら慎重に動き考え行動することによってこの窮地を脱する手はあるはずだ。」
そんなバカな頭をフル回転させるアリバーだが何も考えが浮かぶことがなく木が折れ始めたのであった。
「ちょ!!まって!まだはやい!きれいなお姉さんに可愛い女の子に出会っていないんだ!」
「俺はこんなところで死ねないんだ!!!!!!!」
そんな夢や希望を口にしながら深淵へと吸い込まれていくアリバの姿があった。