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布施の戦い その二

越後に落ち延びてくる村上義清を待ち、彼の先導の元私が兵を率いて、うって出ることとなった。

今回の相手は、あの武田・・・晴信だったっけ?

どうにも信玄という名前のイメージが強すぎて、名前がうろ覚えのような状態になってしまっている。

というか、晴信って信玄でいいのよね?

こんなことなら、日本史もっとちゃんと勉強するべきだったわね。

何て言うの?

当時の私は、そんな昔の事を知ったって意味が無いとしか、思ってなかったのだから。

こんな事になるのなら、ちゃんと勉強しておけば良かったって思うのも不思議な話じゃないわよね。

いや、今の状況事態、不思議な話な訳なんだけど。


「それで村上殿?」

「いやー、申し訳無い景虎殿。オイラの力が足りないばっかりに。」

「負けてしまったものは仕方がないでしょ?」

「そうは言ってもね。せめて同数程度だったなら負けやしなかったのに。」

「へぇ。というと?」

「大群だぜ、大群。あのヤロー、後ろに憂いが無いからって、かなりの兵を動員してきやがって。」

「あー、今川家と北条家とで結んだっていう、あの同盟が効いてる訳か。」

「本当に腹立たしいぜ、チクショウが!」


武田家に敗れた事が、余程悔しいのだろう。

しかし、そんな態度をとったところで、奪われた領地が戻ってくる訳でも無し。

やられた兵達が生き返る訳も無し。

敗者に出来るのは、ただただ悔しさを噛み締めるだけ。

後は、その噛み締めた悔しさをバネに出来るかどうか。

その一点にかかってくる。

これで腐ってしまうようであるなら、そもそも戦なぞせずにさっさと降伏してしまえば良い。

どれだけの恐ろしい男だとしても、労せずに領土を獲得し広げることが出来るのなら、無下にも扱わないだろう。

それこそ、開戦する前なら喜んで麾下に加えてくれるだろう。

それも今更な感は拭えないけど。

しばらく村上殿と話をしていると、私に声がかけられる。


「景虎様、準備は万端です。」

「そう。それじゃ、行きましょうか。」

「は?行くとは?」

「決まってるじゃない。信濃の地を奪還するのよ。」

「おお、もう支度がすんでおるとは。」

「あら?嫌なの?そもそも、あなたが来ないと始まらないでしょう?だから待ってたのよ?」

「いや、むしろ喜んでおるのです。是非末席に加えてください。」

「え?初めからそのつもりだったけど?」


むしろ、あなたが来ないとか言い出したらどうしようかと思ってたわよ。

小笠原殿の事もあって、大義名分というのは得ている訳だし、彼がいなくとも、何とか攻め立てる理由くらいはある。

それでも、村上義清が先頭に立つようにしてもらわないと。

先導は大事だものね。

村上殿を引き連れて評定の間に向かうと、ズラリと鎧を着こんだ武士で、溢れるようになっていた。

私が入ると、皆が頭を垂れて迎え入れてくれる。


「皆、お待たせ。」

「ようやく動かれますか。」

「定満、小言は今はいいわよ?」

「これは失敬。そのようなつもりは無かったのですが。」

「あ、そう?それじゃ、準備はいいかしら?」

「バッハッハ!ようやくですな!久々の戦、滾りますな!」

「俺も負けないぜ!」

「貞興、少し静かにしておけ。」

「そう言う長重も、気合いが入っているようだな。」


おうおう、いつもの面々の気合いが中々凄い。

何?

関東に行けなかったのが、そんなに気になってたとか?

いや、そんな事ないか。

無いよね?


「ようやく出番か。」

「誰が勲一等か競争ですかな?」

「それなら儂でしょう。」

「フン。いくらでも言うだけなら出来るな。」

「まあ、そう言い合うのは止めませんか?この中の誰もがその可能性があるんですから。」


平常運転の揚北衆。

相変わらずの元気な事で。

こっちは完全に関東に行けなかったのが、尾を引いてるわね。

政景が反旗を翻した時も呼ばなかったし。


「留守は任せるわよ、政景、景信。」

「かしこまりました。」

「越後の事は任せておいてくだされ。それでなくても、上洛となれば越後を空けることになるのだから、良い予行演習になりますわい。」

「そういう風に考えてくれると、こっちも行って来やすいわね。」


私が越後を出るにあたり、城代として政景と景信の二人がついてもらう。

誰がなんと言おうと、二人を重用していこうと最近考えている。

仲が良くなってくれたのも一つの理由だけど、やはり自分の留守を守ってもらうのなら、親族を中心に据えるのは当然の事じゃ無いだろうか。

いや、景家とか定満とかが、駄目だという訳じゃない。

ただこの二人は、私が出るのであれば近くで使いたい。

信頼のベクトルが、少し違うとでも言えばいいんだろうか。


「それで、儂らは行かんでいいんですな。」

「ええ。実乃と景綱、それに朝秀はこのまま進めて。まだ完了じゃないでしょ?」

「わかりました。」

「ご武運を。」


さて、皆気合いは十分のようね。

これなら大丈夫かしらね。

いや、気合いの空回りなんて事にならないといいんだけど、そんな事は今気にしても仕方ないものね。

それじゃ、行きましょうか。

ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

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