表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/130

布施の戦い その一

結果から言うと、村上義清は信濃の地の奪還に成功した。

その暴れっぶりは、なかなかのものだったようだ。

諸城を奪い返していき、最終的には葛尾城奪回まで成し遂げてしまった。

実に大したものだ。

というより、強すぎない?

私の貸した兵達だけでなく、信濃の国人衆を上手くまとめて、上手いこと為したようだ。

どうやら武田本隊が、一時的に甲州に退いていたようだが、それでもよくやるものだ。

これだけやられれば、武田家もそうそう兵を出すことは無いんじゃないかな?


武田家から領土を奪い返した事で、越後の兵達は帰還させる事になるのだろう。

少々心配はあるものの、自分の領土は本来は自分で守るべきなのだ。

私は、あくまでも力を貸しただけの事。

さすがに、すぐに兵を退かすのはよろしくないだろう事から、しばらくは駐屯させる必要があるだろう。

私の第一の目標は上洛にある。

その為にも、無用の戦はなるべくなら避けたい。

これでしばらくの間、大人しくしていてくれていれば、それでいい。


「お疲れ様、熊若。」

「いやいや、何とかなって良かったですわ。」

「それで、村上殿は?」

「いやー、お強いお方でした。というか、戦闘狂に近いですか。」

「あ、そうなの?」


確かに何となくそんな気はしていた。

戦闘狂とまでは言わないけど、戦好きだとは会ったときの雰囲気で分かってはいたけど。

何せ初対面の私に向けて強そうだとか言い出してくるくらいだものね。

まあ、別に怒るような事でも無いし、誉め言葉には違いないから何か言うのもどうかと思うしね。


「それで、はじめてじゃないかしら?武士としての戦は。」

「いやー、慣れない事はするもんじゃ無いですわ。」

「あなたなら、十分やれそうなんだけどね。」

「いやいや、そりゃそう言ってもらえるのは、大変ありがたいですがね。餅は餅屋ってやつです。」

「まあ、あなたがそう言うなら、そうなのでしょうね。」

「なんで、これまで通りシノビーランドの運営を中心として、斥候や偵察などの仕事に励んでくつもりです。」

「わかったわ。私もなるべく本人がやりたいと思う仕事をさせてあげたいし。そうしましょうか。」

「ありがとうございます。」


元々は乱破なのだから、搦め手の方が得意と言われれば、確かにそうなんだろう。

いや、正面から戦っても十分に戦果は出せる事を示したのだ。

結果を出せたなら、口さがない者の言葉も封じれるだろう。

彼ら乱破衆に対して、陰でこそこそ悪口を言ってる輩がいることは知っていた。

やれ乱破のような者が自分と同列な訳がないとか、用兵の知識も無い者が偉そうに我が物顔で歩いているだとか。

そいつらの鼻を明かしてやれたと思うと、私も少し面白い。

はっきり言って、そんな事を言う連中の方こそ何様なのだ。

文句があるのなら、彼ら以上の働きを見せてから言えと言いたくなる。


「ああ、そうそう。取り合えず今回の戦での武勲もあるし、シノビーランドの準備に運営と、色々頑張ってる熊若に、以前約束した通り、山を進呈しようと思っているんだけど。」

「おお、本当ですか!」

「嘘なんて言うわけ無いじゃない。今回の戦は領地を得るような戦じゃなかった訳だし、はっきり言って参加希望者は少なかったのよね。そんな状況下で、私が指名することになったんだけど、予想以上の戦果でしょ?段蔵と蔵人の二人も、仕事に励んでいるしね。そろそろ、あなた達の希望に沿った褒美を出さないと、示しがつかないでしょ?」

「ありがとうございます。配下の者達も喜びます。」

「良いのよ。仕事をしてきたら、それなりの望みは叶えてあげないとね。さ、仲間達の元に戻りなさい。あ、後酒宴を開くのは良いけど飲み過ぎないようにね。」

「はっ、それでは失礼します。」


そうして、私の前から熊若は去っていった。

私はああ言ったが、おそらく今日は飲み明かすのだろうな。

お酒の差し入れでもさせましょうかね。


それからしばらくは信濃に平穏が訪れる。

本当にしばらくの話だったけど。

何て言うの?

やっぱり私と彼がぶつかるのは運命だったとでも言うんでしょうね。

その引金となる一報が、戦が終わって程なく、越後にもたらされる事になった。

それは、景家と調練についての話をしていたときだった。


「村上義清様、武田家に敗北!」

「はぁ?」

「何?再び破れたと?」

「はい。村上様の旧領奪還後、大人しくしていたと思われた武田家が再び信濃に進攻。その勢い留まるところをしらずとの事です。」

「あちゃー、やられちゃったわけか。」

「はい。その為、村上義清様は再び越後に落ち延びて来るもよう。」

「あ、そう。うん、ありがとう。」


伝令を伝えてくれた若者を帰す。

さすがに二度目は、ねぇ。

こうなると、村上殿に任せておく訳にもいかなくなったんじゃない?


「バッハッハ、これは動かざるおえませんかな?」

「でしょうね。はぁ、本当に迷惑。」

「しかし、ここが武功の立て所。武田めを叩きのめす良い機会では無いですか!」

「まあ、物の考えようによってはそうなるわね。」

「こうしちゃおれん。景虎様、兵を出す準備を進めておきますぞ!」

「分かったわ。村上殿が越後に落ち延びてきしだい、信濃の奪還に向かうわよ。」

「おお、それがよろしい。武田なんぞ、長尾家の兵をもってすれば、一捻りでしょうぞ!」

「そうなると良いわね。」

「では、準備がありますので!これにて御免!」


ドタドタと、足早に景家が去っていく。

はぁ、ついにぶつかるのか。

さて、いよいよですね。


ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
押してくれれば一票入るようです。どうぞよろしく。 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ