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反撃

「なんでこんな事に。」

「どうしたよ、尾藤殿?」

「あ、いえ。なんでもないです。」


ちゃかぽこ馬に揺られながら移動をする。

どうやら呟いた言葉が聞こえたらしく、村上様がこちらを伺ってくる。

が、ただの愚痴なのだから、変に突っ込まれても困る。

それにしても、尾藤殿か。

やはり、名字を得たのは正解だったように思う。


その馬の上で、なんで俺が信濃に派遣されることになったのだろうと思案する。

まだシノビーランドは起動に乗ったとは言えない。

だからこそ、まだまだ面倒を見ていたかった。

にもかかわらずだ。

まあ、乱破衆の中で誰かを出そうと考えたなら、必然的に俺にお鉢が回ってくるのは分かる。

段蔵は、京とのやり取りもそうだが、他国によく行っている。

蔵人は、景虎様の側について、危険をあらかじめ除いている。

そうなると、余るのは俺という事か。

まあ、目立った戦績を上げていた訳じゃないし、それも仕方ないわな。

それに、二人に比べてまだ俺の方が信濃の土地勘がある。

もともと活動していたのは甲州が中心ではあったが、その周辺にあたる信濃で活動をしない訳がない。

しかし、ねぇ。

他の将にでも頼めばいい気がするんだが、なんでまた俺なんだ?

他の血気盛んな連中に命じれば、喜んで参加しようものを。

まあ、言われた通りにやるだけだわな。


さて、今回の目的はというと、武田家に奪われた信濃の地の奪還にある。

が、相手はあの武田家だ。

一筋縄にはいかない。

本来ならば。


武田家の本隊は既に甲州に帰還しており、今はある意味がら空きのような状態になっている。

そこを攻め立てて、一気に奪い返そうというものだ。

にしても、もう少し頭を使った戦いというものは出来ないものだろうか?

城を見るやいなや、突貫とか村上様は何を考えているのか?

いや、速攻が悪い訳じゃない。

余りグズグズしていると、武田家の本体がやって来るかもしれない。

そうなると、勝ち目が薄くなってきてしまう。

何せ、経験の浅い連中が多い。

何度も死にそうな目に遭ってようやく強い兵が生まれる。

それを狙っての今回の出兵なんだろうというのも、理解は出来る。

適度に死線を潜らせる。

それがやがては自信に繋がるというものか。


用兵が下手なわけでは無い。

どこを攻めれば嫌なのかを、よく分かっている攻め方をしている。

さすがに何度も敵からの攻撃を跳ね返してきただけの事はある。

はてさて、最後まで上手くいけばいいが。



「おらっ!お前ら突っ込めや!」

「「おおー!」」


オイラの号令に従って、兵達が城に突っ込んでいく。

城を守備する人数が少ないんだろうか?

ここも、こんなんで終わってしまうのか。

まあ、仕方がない。

しかし、景虎殿もなかなかに食えない御仁だ。

いや、それはあのとき側にいた宇佐美殿の方か?

こんな連中じゃ、まともな用兵も何も無いではないか。

まあ、だからこその分かりやすい指示を心がける事にしたんだが、これはこれで勉強になるな。

それに、やはり精強な越後の兵ではある。

新兵といえど、その動きはなかなか見るところがある。

それこそ、景虎殿が率いれば、より化けるのだろうな。


越後の兵達の、景虎殿に対するその思いというのだろうか。

それは非常に強いものがある。

それこそ、神格化されているのではないかというほどに。

まあ、自らを毘沙門天の化身と言ってしまっているしな。

それに、戦にも負けなしなのだ。

そんな人なら、神格化したくもなるんだろう。

いや、実に面白い。

自分の手勢を率いて、一戦やってみたくなるわな。

そんな機会が巡ってくるとは思えないが、それでもだ。



さて、幾つかの城を落としたところで、俺の本来の任務に取りかかるとしますかね。

それで効果はどのくらいのものになるんだろうか?

まあ、今はそんな事はどうでもいいか。


「それじゃ、お前ら。きっちりやってこいや。」

「了解です、お頭。」

「おう。」


そうして散会していく直属の部下達。

つまりは乱破衆の面々。

直接的な戦よりも、搦め手のような仕事の方が得意な人間ばかりの集まり。

となれば、今回の策略もはまるんだろうな。

いや策略らしい策略と言っていいのかね?


景虎様から命じられたのは、武田家の評判落としに相違無い。

あること無いことを信濃に住まう者達に吹き込んで、武田家に付かないようにすることが目的となる。

高札を掲げて周知させてみたり、人伝にて伝わる口コミのような事をしてみたり、と様々な手を使う。

無論、高札一つとっても、識字率というものが低い為、文字をつらつら書いたものを掲げてもダメだろうから、イラストで何となく分かるように工夫をしてみたりと、これまではやってこなかったような工夫を加えてある。

かくいう自分もそこまで文字は得意じゃない。

お陰で、文字を覚えさせられた訳だが。


しかし、甲州の片田舎にいたときとやってることは余り変わらないよな、よくよく考えると。

なのに、待遇が雲泥の差な訳だが。

いや、他国なんかと比べても、俺ら乱破の扱いがここまで良いところなど無いだろうな。

そう考えると、景虎様々な訳だ。

しかも、武功ではないにもかかわらず、ちゃんと功としてくださっていたりもする。

ならば、その期待に何とかして応えるのが男ってもんだろ?

ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

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