気合いの人
通称“シノビーランド”の設立の準備が進む。
イメージとしてはアスレチック場と現代にもある忍者屋敷の合体といったところだろうか?
電気の利用など夢のまた夢なのだから。
また、乱破として活動が出来なくなったものが、従業員の形で仕事に従事する環境ができるのも大きいと思う。
また、人を呼び込む事により、他国からの銭が越後国内に落とされていく事も重要だ。
宿泊施設や食事処、土産物などの販売など、儲ける為の付与施設を考えるだけでも楽しい。
存外、越後という国は広く、国の中央部辺りにこれを作れば、道中での儲けも期待でき、私に従う豪族達にも結果、銭が落ちる事になる。
となれば、交通網の整備にも協力を促すことが出来る。
間接的にではあるが、中条殿や実乃の援護射撃になるのでは無いだろうか?
本来は、人を呼ぶためという理由ではあるが、本当のところは忍者屋敷を自分がこの目で見たいというのが、最も大きな理由だったりする。
まぁ、変な事を言うと、実乃や定満にキャンキャン言われるのは分かりきっているので、本心は言いはしないが。
ほんの少しずつではあるが、道も綺麗になり始めており、春日山城近辺では、交通の便がよくなってきている。
このまま越後全土にまで道を拡げたい所だ。
港に関しても、着実に進む。
各地からの産物も届きやすくなる。
という事は、売り出す商品も増えるし、私の料理の幅も広がるというものだ。
何せ戦が無いのだ。
余計な時間を取ること無く、滞りなく作業が進められるのだろう。
時間をかければかけるほど、金がかかるのだから、何事も無くいってくれればいいんだけど。
そういえば、また勧誘に出ていた段蔵が帰ってきた。
奥州でスカウトしてきたようだ。
世瀬蔵人というらしい。
熊若の時もそうだったけど、私は全くもって名前すら知らない。
もっとも、武将の名も知らないから仕方がないか。
彼も一族を率いてやって来たらしい。
生まれ故郷にも足を伸ばし、そこでも幾人かの有志を募ってきたようだ。
さらに、戸隠衆にも渡りをつけてきたというから驚きだ。
どんだけアグレッシブよ!
段蔵が、頭として乱破衆を率い、その副官に熊若と世瀬蔵人がつくようだ。
乱破の事情はよく分からないから、これらのところはお任せになってしまう。
今日も私のところに、会いに訪れた者がいた。
最近は、色々な人がよく顔を出しに来る。
おかげで、寂しさとは無縁の生活ではあるけれど、自分の時間が取れにくくなってきている。
城から抜け出そうとすると、定満が先回りをしていたり、景家が待ち構えていたり。
あ、実乃は忙しすぎて、最近は顔をちゃんと見ていない。
自分の境遇に対して、ぶちぶち文句を言いながらも、ちゃんと仕事をしているんだろうな。
さて、今日私の前に来たのは他でもない。
実乃に並ぶと評される内政の達人。
越後では結構有名人のお出ましだった。
直江実綱である。
でも、内政の達人とか言いつつも、結構筋肉質な体をしているんだよね。
戦に出ても、結構強いって話だし。
まあ、例によってというか、かなり変なところあるんだけどね。
「いらっしゃい、実綱。」
「景虎様もご壮健のご様子。まこと祝着にて。」
「そう?あなたも元気そうで何よりだわ。それで今日の用事は?」
「他でもない、紹介したい者がおります。」
「それが後ろに控えている人?」
「この者、越後では指折りの商人でして。干拓にも大分協力してもらっております。」
「へぇ。それは助かるわね。」
「つきましてはご挨拶を、と申すので連れて参った所存。名を蔵田五郎左衛門と言います。」
平伏する蔵田殿。
商人と紹介されたが、見た目そんなに豪奢な格好はしていない。
至って普通の格好だ。
倹約家だったり?
金持ちほど、ケチだったりするとか言うものね。
それと真逆で、湯水のようにお金を使う人とかも世の中にはいたりするけど。
それに結構大柄で、商人と聞いてもなんともピンと来ない。
まぁ、人は見かけによらないからね。
「蔵田殿、御協力感謝します。」
「いえいえ、実綱様には良くしてもらってますから。」
「そうなの?今後ともよろしく頼むわね。」
「はい。つきましては、港が完成のあかつきには、利用の優先をしていただけると。」
「それが目当てで干拓を、手伝っていると?」
「いやいや、人聞きが悪い。越後が富むのはうれしいことですよ。ですが、私も商人ですから。私の元で働く者達も、食べさせていかないといけませんから。」
「それもそうか。実綱の補助は頼むわよ。」
商人なのだから、それは仕方ない。
まあ、売り上げを上げて、大きな力を得たとしても、それが巡りめぐって国が栄えれば言うことはない。
勿論、やり過ぎない程度にしてもらわないと、困るけど。
「それで、実綱。干拓の様子はどうなの?」
「順調です。参加者皆、気合いで仕事をこなしております。」
「いや、そんな気合いって。そりゃ、気合いが入っているのは良いことだけど。」
「何を仰います。内政は気合い、外政は気合い、そして戦は気合い。気合いがあれば何でもやれますぞ!のう、五郎佐。」
「まっこと、その通り。商売も気合いですぞ!」
「おおう。そうなの?」
「「そうです!」」
二人揃っての返事!
相性いいわね。
それにしても、気合いって。
いや、何事も取り組んでいくのにも、気合いを入れるのは大事だけど、むしろそれ全面押しとか。
仕事や商売の為に気合いを入れるというより、気合いを入れる為に仕事や商売をしていると、言っているみたい。
類は友を呼ぶというけど、それの典型のようだ。
うん・・・上手くいっているならいいか・・・
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